→本文に戻る

映像による解説

海底堆積物の縞模様
 これがさっきお話しした縞模様の一部です。左が日本海、右が地中海の海底堆積物のコアです。日本海と地中海は閉鎖性海域ということで非常によく似ていることの物的証拠です。黒い層と白い層が縞模様になっています。非常に黒い層には3パーセントから4パーセントぐらいの有機炭素が含まれていて、生物の遺骸が多いのです。白い層はシリカの殻を持った珪藻という生物の遺骸からなっています。火山灰が何枚か挟まっています。これらの火山灰は陸上でも見つかっていますが、陸上のものは研究しやすいものだから、年代がだいたいわかっていて、これによって堆積物の年代が分かります。
 他のデータも合わせて分析したところ、セクション1本分の1メートル50センチが大体2千年ぐらいに相当します。そうすると、縞模様がどのくらいの頻度で形成されたかが分かります。それから黒の濃いものと中間的なものと、二段階の縞がある。中間的な色の縞は海水準が中程度で終わっているものです。地中海もやはり同じで、縞模様があって、黒いところは有機炭素が多い。日本海と比べてちょっと赤いところがあります。なぜ赤くなっているかというと、鉄が酸化しているのです。基本的に日本海と地中海が違うのは、地中海では堆積物の主体が貝殻と同じ成分のカーボネイト、CaCO3で、シリカSiO2に不飽和なのです。それに対して日本海の方はカーボネイトに不飽和で、シリカが非常に多いのです。これは海だけではなくその周辺にある陸域の地層も同じなのです。





縞模様は日本海全域
 今見たコアは隠岐堆という地点で採取したもので、これ以外の2点で採取したものを図に示してあります。このように日本海を縦断して比べると明暗の縞模様は日本海全体を通して起こった、日本海の中でも共通な現象であることが分かります。隠岐堆の上で起こった1地点での例外的な事件ではなかったということが非常に大事です。



気温変動の周期性−データの一例
 図は珪藻の遺骸の数です。乾燥重量1グラムに珪藻が何個いたかを示しています。珪藻というのは、能登半島の和倉で七輪を作るのに使う珪藻土の主体です。珪藻の数は生物生産性を示しています。生産性が非常に高いところは今と同じような状態、つまり海水準が高くて海水の鉛直混合があって下の方から栄養塩があがってきて珪藻がよく光合成できるという状態にあります。
 堆積物の中に姶良-丹沢(AT)、阿蘇4(Aso-4)という火山灰があり、陸上での研究で年代が2万4千年前と8万8千年前と分かっている。もう一つは海底下8.5メートルにある珪藻が多産する酸素同位体比ステージ区分の6と5の境界に相当する12万7千年前です。その間は内挿によって年数をつけていきます。そうすると、最上部の現在の間氷期は海水準が非常に高くて珪藻も多く生物生産性が高くなっています。現在の間氷期に匹敵するような13万年前から8万年前までの最終間氷期は真中に位置します。この時期は場合によると現在よりも温暖でした。最下部にはもう一つ前の間氷期がみえます。珪藻数変動の時系列をパワースペクトル解析すると、10万年、1万3千年、4万年、といった3種類のスペクトルが検出されます。この3種類で人工的に曲線を作り元の曲線と合わせて、これをフィッティングと言いますが、どれくらい誤差が出てくるかを調べます。この誤差をまた同じ手法で解析すると、今度は規則性が何もないのです。従って今挙げたこの3つのスペクトルが元の変動を代表しているのではないかということになるのです。



気温変動の周期性−原因
 気候が周期的に変動する理由を説明します。地球が太陽の周りを公転する公転軌道が、10万年周期で円に近くなったり楕円になったりしています。それから地球が自転している軸が大体4万年ぐらいで傾いたりまっすぐに立ったりしています。また、この自転軸はコマのようにみそする運動をしています。それを歳差運動と呼びますが、その周期が2万年なのです。10万年、4万年、2万年です。さっき日本海海底の縞を解析した結果、一番大きいものは10万年、それから約2万年、4万年だと言いました。これは地球の公転軌道が変化している、あるいは地球が自転している軸の傾きが変化していることが地球への太陽放射量を左右し、日本海の海水やその中に住んでいた珪藻という生物に影響を及ぼして、堆積物の中に記録されているわけです。これがミランコビッチサイクルと呼ばれるものです。地球表層のエネルギーは、ほとんど全部太陽から来る熱でまかなわれている。地球深部のコアマントルから出る熱ももちろんありますが、それは太陽から来る熱の量に比べるとたかが知れている。そういう意味で地球の表層で起こっていることは宇宙空間で起こっていることと非常に連係している。その堆積物を分析し、様々な現象を解析しただけで終わらないで、それらの現象がどうして起こったかという理論付けをやらないといけないのです。


海底堆積物の縞模様と気象変動の関連性

 日本海学は関連性を追求するシステム科学の側面もあります。地球の表層には雲があったり水があったり雪があったり、また地形の高い低いがあったりして、気候の変動にはいろんなことが関係してきます。気候はこうした様々な要素が全部連係したシステムとして動いていますから横の連係を見落とすことができないわけです。例えば日本海ですが、数千年周期のダンスガード・オイシュガーサイクルに相当する氷期?間氷期のセットから成っている最終氷期を通じて東シナ海沿岸水が時々日本海へ入ってきています。海水準変動の一番大きいのは10万年周期の110メートルの変動ですね。中間程度の海水準変動は40メートルぐらいで昇降する4万年ぐらいの周期ではないかということです(多田、1994)。


珪藻の形成する層
 この図は水月湖の湖底堆積物が白黒ラミナの縞状模様から成っていることを示しています。白い層準は珪藻の多いところで、春の繁殖期、ブルーミングと言いますが、に形成されたのです。黒い層準は珪藻以外に陸上で浸食された砂や泥などが含まれています。これは多分湿気の多い雨がたくさん降った時期に形成されたものでしょう。二つで1つのセットです(福沢、1997)。これは地中海も同じです。


温暖化のピーク
 上の図は年代がもっと新しく8千年前以降における2000年周期を示しています。温暖化のピークが4回あります。6500年、5000年、3000年、750年、平均すると1800年ぐらいの周期で、対馬海流がパルス的に日本海を縦断して北上して行くのです。
 下の図は日本海の隠岐堆と太平洋は福島の小名浜です。太陽黒点が非常に多くなった太陽の活動期は地球上が温暖だったということが非常によくわかります。
 これらの解析結果に基づいた近未来の予測では、300年前から現在に向かってずっと寒くなって100年後まで続くのです。現在は寒い時代なのです。それにも関わらず私たちは人工的に暖かくしているわけです。これは自然に逆らっているのですから、どこかでつけを払わなければならない。そのつけというのは今年の異常気象であったりするわけです。




→本文に戻る




→2003年度日本海学夏季セミナー目次