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本講演録は、日本海学推進機構事務局の責任で取りまとめたものです。 講師のご好意により、ここに掲載させていただきます。
平成15年度 富山県立大学 「黄砂の飛来」
1.黄砂の飛来の状況 昨年、富山に来て、黄砂の多さに驚いた。 黄砂現象とは、中国大陸のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠で、春先に砂が巻き上げられ、1,000m以上の上空に上がったものが、落ちながら遠くへ運ばれているものである。 北京市内でも、ひどい黄砂に悩まされ、昼でも車のライトが必要なことがある。 中国では、沙塵暴と呼んでいる。最近は、砂でなく沙を使っているようだ。また、オリンピックを控えて、精力的に研究が進められており、大会はもっとも黄砂の可能性少ない時期に開会されるようだ。 立山の積雪の断面を見ると汚れた層が見えるが、これが飛来した黄砂による汚れである。
九州・沖縄と並んで、日本海沿岸地域で黄砂現象が見られる。黄砂の飛来の記録は、各測候所の気象官の目視でその有無を判断し、その地点数でなされる。 2000年以来、3年間、黄砂現象の観測数が飛びぬけて多くなっていたが、2003年の春先では、極めて少なく、初観測も3月25-27日で遅かった。 これは、発生源で冬に降水量が多かったこと、春に強風が少なかったことのためとされている。 2.黄砂の正体 (1)エアロゾル 「エアロゾル」とは、気体中に含まれる液体と個体微粒子である。 これには、各種のものが含まれ、黄砂はこのうちの鉱物ダストに含まれる。 黄砂の研究には、エアロゾルの大きさ・量の分析が必要である。 概ね半径1μmを挟んだ大きさである。 硫酸エアロゾル等は0.5μm強の大きさ、黄砂は5μm程度の大きさである。 北京の観測では、5μmモードの粒子が多い。 ちなみに、雨粒は2mm、霧粒は0.1mm、雲は10μm、花粉は10-50μmで、エアロゾルはこれらよりも小さい。 (2)何が重要か @放射への影響 光を吸収・散乱するともに、雲の形成とその寿命にも影響し、地球の温暖化、寒冷化をもたらす。 A健康・自然環境への影響 大気汚染・酸性雨など。 (3)放射によるエネルギーの流れ 地球外への後方散乱、地上方向への前方散乱がある。 CO2などのいわゆる温室効果ガスでは、方向性が明確で、地球温暖化に影響することがはっきりわかっている。 しかし、鉱物ダストは、非球形であり、その方向性はよくわかっていない。 3.鉱物ダストの観測 (1)観測方法 @直接観測 地上あるいは飛行機等で粒子を直接観測。 A衛星による観測 衛星写真の分析。 アジアでは西風により拡散、アフリカでは東風により拡散していることが一目でわかる。 Bライダーによる観測 レーザーレーダーであり、レーザー光の反射を観測。 (2)鉱物ダストの分析の困難性 沙漠の面積・位置が年々変化し発生源が特定されない。 地上面の状態により発生が異なる。 降水により発生し難くなる。 非球形であり、放射性能が分かり難い。 (3)パーティクルカウンターによる観測 レーザー光のエアロゾル粒子の散乱から、粒子の大きさ(5段階)毎の個数(濃度)を測定する。 実際の観測結果では、通常時には、0.3-0.5μmでは、1.00E+8#/m3(1m3中1億個)程度、5μmでは、1.00E+3#/m3(1m3中1千個)-1.00E+4#/m3(1m3中1万個)程度の値が出るが、黄砂の飛来によって、この5μmモードの値が飛び上がる。 2000-2002年の春先の飛来の急増で、2003年の飛来の観測を期待していたのだが、時期が遅れて、わずかしか観測できなかった。 2002年には、秋(11/12-13)にも大規模な飛来があり、小杉でも機器の調整運転と重なり観測できた。富山測候所でも、nssCa2+によるpHの上昇が観測されている。天気図と合わせて見ると、モンゴル付近で低気圧が砂塵を巻き上げら、日本まで移動してきたことが理解できる。 4.黄砂の降水成分に及ぼす影響 黄砂粒子にはCaCO3などのアルカリ成分が含まれる。 この成分は、非海起源カルシウムイオン(nssCa2+)と呼ばれる。 このため、酸性雨は中和される。この結果、春の降水のpHは上がる。 2001年3月には、多摩丘陵で黄砂現象を観測し、飛来が確認できた。nssCa2+の増加も観測できたが、酸性雨を中和させるまでにはならなかった。 なお、林内雨の観測では、乾性沈着による粒子も洗い流されて混入するが、このpHは相対的に上昇していた。 首都圏での酸性雨の森林生態系への影響が懸念される。 |
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(Jan.14,2004.)