「東アジアの玦飾の起源と拡散」

ケ 聡

香港中文大学教授




1.はじめに

 私の発表では玦飾(玦状耳飾)の中国東北起源説及び東アジアでのロクロ系と非ロクロ系の玦飾について提言したい。

2.仮説・玦飾の起源は中国東北地方から

 東アジアの最古の玦飾は、西遼河流域に出現後、徐々に西方に拡散していった。中国東北地区から遠くなれば出現年代が遅れる。その実際について各地区を概観してみると玦飾は中国の東北地区を中心として四方に広がっている。
 近年の劉國祥氏による研究で、黒竜江省の玉器の年代や遺跡の内容が明らかとなってきた。それらの分析からも玦飾の起源は中国東北地方にあるとしてよい。

3.ロクロ及び非ロクロ系の玦飾の体系について

 ロクロ無しの玦飾の体系(A)
  @ロクロ機械は、玦飾の生産過程中に存在しなかった。
  A管錐穿孔で芯は存在しない。
  B一つの素材から、只一つの玦飾を製作する。
 ロクロ玦飾の体系(B)
  @ロクロを用いて玦飾を製作する。
  A素材を管錐で穿孔し、割り貫き芯が存在する。
  G一つの素材から複数のリング及び玦飾を生産する。
※寺村光晴先生は、「尖軸と考えられる遺物の出土から、このような仕組み(工作機械)があったと思っています」(「王作とその流通」『ものづくりの考古学』2001年)や「ロクロの存在が尖り貫き芯や尖り軸から推測され…工作機械の復元ヘ」(「日本における工作り研究の現状」[香港中文大学 1998年])などと述べている。

4.珠江流域及び東南アジアから発見されたロクロ機械の尖り軸について

 マカオ黒沙遺跡の受軸器には回転を示す微痕が観察できる。この遺跡では石英製のリングが多い。また、約6000年前の馬家浜文化に属する浙江省の南椿橋遺跡でも受軸器が出土し、リングが製作されている。受軸器とリングとの共伴関係が認められる。

5.結論(-技術の違いによる二大文化圏-)

 日本と台湾の玦飾を比較すると、その違いが大きく浮かびあがる。すなわち、日本(約7000〜5000年前)は非ロクロ系で、これまでも日本の研究者が指摘しているように北方系の特徴を示す。一方、台湾(南中国からベトナムまでの地域を含む-約3500〜2500年前)はロクロ系で、リングと受軸器とがセットとなる。
 中間地域の浙江省河姆渡遺跡第四層は、そのどちらなのであろうか?玦飾の研究において、タイプや形態ばかりでなく製作技術からの検討がより不可欠であると考えている。
  (文責‐藤田 富士夫)











→発表一覧
→分野別報告等一覧
(Dec.22,2003.)