2005年度 富山県大学連携協議会公開講座
平成17年11月5日
とやま市民交流館

第3回 海の力 2限目

海洋エネルギー・資源の可能性
〜メタンハイドレートとその物性〜

講師 富山大学助教授
島田 亙氏


1.ハイドレートとは
2.Gas clathrate hydrate の構造
3.Gas clathrate hydrate の状態図
4.Gas clathrate hydrate の特徴
5.Gas clathrate hydrate の歴史
6.エネルギー資源としてのメタンハイドレート
7.Clathrate hydrate の利用


1. ハイドレートとは?

 水の温度を下げると氷になります。氷は、みなさんご存じのように六方晶系の構造です。ところが、水とガスをある条件にすると水分子がカゴ状の構造を作り、そのカゴのなかにガス分子が入ります。このような物質(結晶)をガス・クラスレート・ハイドレートと呼びます。






2. Gas clathrate hydrateの
構造

 このガス・クラスレート・ハイドレートの結晶はかなり複雑な構造です。中に入るガスの種類によって構造が異なりますが、例えば、メタンガスの場合はI型の構造に、主に窒素と酸素からなる空気の場合はII型の構造になります。それぞれの構造は水分子が作る12面体と14面体の組み合わせ、12面体と16面体の組み合わせでできています。










3. Gas clathrate hydrateの
状態図

 このようなガス・クラスレート・ハイドレートの結晶はどのような条件でできるかと言いますと「高圧・低温」の状態です。ただし、中に入るガスの種類によって条件は異なります。




4. Gas clathrate hydrateの
特徴

 このガス・クラスレート・ハイドレートの特徴は「大量のガスを含んでいる」ということです。どれくらい大量かと言いますと、ガス・ハイドレート1m3を分解させますと、0.9m3の水と170m3のガスになります。ですから、少量のガス・ハイドレートを分解させることによって大量のガスを取り出すことができるというわけです。







5. Gas clathrate hydrateの
歴史

 このようなガス・クラスレート・ハイドレートは比較的最近になって見つかりました。1810年に塩素ガスと水で反応が起きることが発見され、1823年にはそのモル比が1:10であることがわかりました。しかし当時はどんな構造なのかは全く分かりませんでした。その後、さまざまな実験によってその特性が調べられましたが、研究の歴史からはしばらく忘れられる時期が続きます。
1930年代になってアラスカなど寒冷地で石油掘削が始まり、同時に産出される天然ガスをパイプラインで運ぼうとしたとき、氷のようなもので詰まってしまう事故が多発しました。「ガスを通しているのになぜ結晶になるのか」という疑問から再びガス・ハイドレートが研究されるようになり、X線による構造解析の結果、水とガスの複雑な構造の結晶であることがわかってきたのです。




6. エネルギー資源としての
メタンハイドレート

 近年、メタンハイドレートが注目されていますが、正確には大部分がメタンで少量のエタン、プロパンなどが混合した天然ガス・クラスレート・ハイドレートが海底や永久凍土の下から見つかってきたからです。これらの天然ガス・ハイドレートは分解しますと水と天然ガスになるわけですから、みなさんのお宅でお使いのガスそのものが取り出せる、というわけです。日本の周囲でも紀伊半島沖や日本海でその存在が確認されています。ただし問題点もありまして、数100mの海底下で、しかも固体で存在していますので、どのようにして取り出すか、が難しいのです。現在、日本を初め多くの国でこの取り出す方法が研究されています。
 一方で、輸送手段としても注目されています。日本で使われている天然ガスの大部分は、中東から「液化天然ガス」として冷却しながら運ばれていますが、この冷却にかなりのエネルギーが費やされています。そこで産出された天然ガスをハイドレートにして-20℃くらいで運ぼうというものです。この方法ですと冷却エネルギーを大幅に減らすことができるメリットがあります。













7. clathrate hydrateの
利用

 クラスレート・ハイドレートは、資源以外の利用法もあります。TBABという塩があるのですが、この水溶液は0℃以上で準ハイドレート(TBABハイドレート)の構造を作ります。「準」が付くのはTBABが大きな分子であるためカゴの一部が破れているためです。室温に近い温度で結晶になるのが特徴ですが、もう一つ大きな特徴があり、結晶中の12面体が「カラ」なのです。実は、TBABハイドレートは12面体、14面体、15面体からなる結晶構造ですが、14面体と15面体はTBAB分子で塞がっています。私が以前所属していました産総研(北海道)のグループでは、このカラの12面体にもガス分子が入ることを発見しました。12面体だけですので、大きな分子径のガスは入りません。ですから分子径によるフィルターの役割があることを突き止めたのです。
 このように、クラスレート・ハイドレートはエネルギー資源としてだけでなく、その物性を調べることにより、さまざまな機能を持った物質であることが解明されつつあります。























(Feb.20,2006.)
→2005年度 富山県大学連携協議会公開講座目次
→分野別報告等一覧