出生率の著しい低下
―合計特殊出生率 韓国1.19、日本1.29―
東アジアの諸国の合計特殊出生率は著しい速さで低下しつつある。
現在、韓国1.19(2003年)、日本1.29(2003年)、中国1.8(2001年)まで低下している。
欧米の先進国でも再生産水準を下回っているが、国によってそれぞれ異なった事情がある。
アメリカについては、概ね再生産水準にあるが、これは移民の影響が大きいとされる。しかし、白人女性に限っても1.9と高水準にあり、家族を大切にする気風が強い結果と説明されている。
イギリスも比較的高い水準にあるが、これも家族を大切にする気風によるとされている。ちなみに公的機関の介入は控えられている。
フランスにおいては、手厚い給付で出産が奨励されており、一時の低水準から若干の回復を見せている。
北欧諸国では、女性を働きやすくする政策を打ち出し、出生率を回復させている。特に、スウェーデンでは、子育てを「社会的」なものとして位置づけ手厚い政策をとっており、一度は再生産水準に回復したが、再び低下し、現在は若干の回復を見せている。
スペイン、イタリアでは、「育児は女性の仕事」という考えが根強いため、出生率も低くなっているとされる。
ドイツでも家庭で養育することが大切とされ、出生率は低水準で推移している。
韓国の動態
韓国の合計特殊出生率については、1970年代に大きく低下したが、1980年代半ば以降停滞し、1990年前後には若干の回復を見せた。その後1990年代半ばから漸減を続けていたが、21世紀に入って著しい低下となっている。
年齢階層別の出生率では、20歳代後半で大きく落ち込んでいる。30代前半も2001年以降は若干落ち込んでいるが、包括的には、全体が落ち込む中で、高齢出産への移行が起きているといえよう。
出生率の低下を統計指標を基礎として説明することは容易でない。
経済動向について見ると、1998年の為替危機で失業率が急増した後、ある程度の低下をみているが、1990年代半ばの水準には戻っていない。特に、2000年以降、10歳代の失業率は概ね10%超で、20歳代の失業率は5%超で推移しており、2003年には再び増加の兆候を見せている。
こうした中で、都市勤労者世帯収入の分布の格差(ジニ係数)は、1998年以降高い水準となっている。
他方、婚姻率が急減するとともに、離婚率が急増を見せている。結果として、婚姻者の年々の増加分が極めて少なくなってきている。
ちなみに、離婚の原因については、家庭内の不和が太宗を占めるが、漸減しており、これに替わって経済問題が漸増している。
これは、不安定な経済情勢の中で、若い人が世帯の形成に困難を感じているといえるのではなかろうか。
また、女性が働くことについての意識調査では、子育て中の就労を否定的に考える人が大幅に減少し、こだわらないとする人が増加している。特に、20歳代以下の若年者は、半数近くがこだわらずに何時でも働くという意見になっている。
他方、主婦が高学歴であるほど、子供の数が少ない傾向があり、高学歴化が出生率の低下の要因となっていることも事実であろう。
| 2003年合計特殊出生率 |
| 香港 | 0.94 |
| 台湾 | 1.24 |
| シンガポール | 1.25 |
| 韓国 | 1.19 |
| 日本 | 1.29 |
| Web_Sites等(出所不詳) |
なお、東アジアのNIEs諸国の合計特殊出生率は一様に低くなっている。
この点については、急速な経済発展に対して、社会的文化的な対応が遅れているとの見方があろう。高齢者の扶養を社会化した際に、若年者の扶養も社会化しなければ、高齢期の扶養のみを受取るフリーライダーが出現することは、容易に予想される。
また、東洋的思考のためとの解釈もあり得るが、証明は困難であろう。
韓国、日本での出生率の著しい低下については、現下の経済情勢の中で企業による雇用が不安定化しており、若い人が家庭を形成し、子供を育てていくことに自信を持てないことがよく指摘される。
さらに、経済的課題を含め、子供を産み育てていくための社会的環境が整えられていないとも指摘される。これは、逆には、子供を育てるより、独身であるいは夫婦のみで暮らした方が、得だという判断があるともされる。
この点に関しては、子育てをしないものが高齢化した時点で後代の負担で支えられる可能性を念頭に置けば、社会的不公正を避けるためには、子育ての負担を社会全体で担っていく仕掛けが求められよう。功利的判断が凌駕し、規範的倫理観が働かないことについて、社会として自省する余地があるかもしれない。
また、ヨーロッパ諸国の状況に鑑みれば、韓国、日本では家庭を大切にする気持ちは強いだろうが、「育児は女の仕事」という考えも強く、結果として出生率が低下している可能性がある。
なお、出生率の低下は、意図せざる低下であるとしても、過剰消費社会では一つの解となっていると見ることもできる。ただし、急速な低下は人口の年齢構成に大きな歪をもたらし、多くの社会的困難が起こることも間違いない。
(統計データ)
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(Sep.28,2004.Rev./Jul.08,2003.Orig.)