中国に経済停滞はなかったのか
−−アジア金融危機の際の動向−−

高い経済成長率の持続への疑問
 中国は、改革開放政策への転換以来、概ね20年間以上にわたって高い経済成長率を維持し続けている。
 今日では、むしろ7%水準を下回ると、失業、所得格差の課題が一層表面化して困難に陥るとされ、これが成長率の目標水準とされ、実現することが当然と考えられるようにもなっている。
 このような状況については、自律的な成長メカニズムが首尾よく形成されていることの証ともなろう。
 しかし、自律的メカニズムが相当程度働いていることも事実だろうが、中国の速い成長の大きな要因は世界経済のグローバル化(特に、情報通信技術の進歩による取引費用の極小化)の中で、世界各国からの事業進出等があって実現してきていることは間違いない。
 これは、中国への国外からの投資額貿易依存度などでも説明できる。
 このため、周辺諸国の経済変動による影響を避けることはできないと考えられる。しかし、経済成長率で見る限り1990年代末のアジアの金融危機の影響を受けた痕跡がないのはなぜであろうか。
 この疑問については、「中国の統計の信頼性」及び「中国の経済開発の国際性」双方に関する判断が含まれている。


貿易、国際投資の推移
 実際に、アジア金融危機の際の貿易額については、中国の貿易統計では、1998年のみ横ばいを示している。


 しかし、例えば、日本の対中国貿易では、少なくとも1998年、'99年に停滞が見られる。


 また、国外からの直接投資については、1990年代後半に入って、停滞から減少へと推移している。


エネルギー消費の推移
 一方、中国国内のエネルギー消費量の推移では、1996年をピークとして大きく落ち込んでいる。
 これ自体は、石炭の利用の積極的な削減によるものとされているが、総生産の水準を低下させないことが可能であろうか。


穀物生産の推移
 他方、農業生産は、中国の総生産の2割程度ではあるが、穀物生産の推移では、'90年代末に停滞を見せている。


 経済各分野での以上のような推移の中で、総生産の成長率は果たして維持し続けることができたものであろうか。

Chinese GDP and Related Data,
official and Alternate Figures,
1998-2001(Percentage change)

1998199920002001 1998-2001
Official 7.87.18.07.934.5
Alternate -2.0/+2.0-2.5/+2.02.0/3.03.0/4.00.4/11.4
Thomas G. Rawski
"What's Happening to China's GDP Statistics?"
 このような統計資料への疑問に対して、ピッツバーグ大学のThomas G. Rawski教授は、自ら国民総生産の成長率を推計しており、実際には、1990年代末に著しく低い成長率を経験したものと推測している。


参考文献等

情報源
Thomas G. Rawski"What's Happening to China's GDP Statistics?"

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(Sep.17,2002.)