国民所得勘定


 各国の国民所得は、国連の定める、国民所得勘定体系 (SNA:A Standardization System of National Accounts) に基づいて推計されている。

 国民所得の計算は、17世紀にイギリスとフランスにおいて始まった。1665年には、イギリスの William Pety が最初の所得推計を行っており、その後多くの人によって、推計がなされている。
 1843年には George Tucker によって、アメリカの所得推計が始めてなされている。19世紀末には、ヨーロッパ数多くの公的推計がなされており、'90年代にはオーストラリアで年々の公的推計統計が発表されている。
 20世紀には、戦争支出のために生産、投資、貯蓄、消費の概念が重要視されるようになり、国民所得推計のための多くの統計が収集された。アメリカでは Simon Kuznets が、イギリスでは Colin Clark が生産、市場そして国民所得に関する研究を行った。
 1929年の恐慌に続き、J. M. Keynes により、マクロ経済学に新たな方向付けがなされ、国民所得勘定の重要性が増した。
 第2次世界大戦後には総合的な研究が進められている。1944年にはアメリカ、イギリス、カナダが所得勘定の共通的定義を定めた。さらに、1949年及び1952年には、国民所得勘定体系 (SNA) が刊行されている。国連は、1968年及び1992年にこの体系を再整理しており、国際基準となっている。なお、さらに再検討がなされているところである。

(June.11.2001.)


所得勘定の枠組み

生産勘定の枠組み

生産勘定の枠組み
経済
活動
生産者
価格表
示の産
出額
中間投入生産者
価格表
示の
国内総
生産
固定資
本減耗
生産者
価格表
示の
国内純
生産
間接税

補助金





 
雇用者
所得
営業余
産業細分
 123456789
   1-2 3-4 5-6  
産業
 農業
 林業
 …
 
政府サービス
 電気ガス等
 …
民間非営利
             
小計             
輸入税             
その他             
帰属利子             
合計             

総生産額は正味の生産規模

 各種経済主体の生産活動の規模は、工業出荷額などで見られるように、その総産出額の和で捉えることが容易である。しかしこれには、中間投入の財貨・サービスの価格が含まれており、一貫生産か分業生産かといった産業組織のあり方次第で大きさが左右され、経済活動の正味の規模ではない。
 これに対し、所得統計における国内総生産は、一定期間の国内での生産活動の付加価値の総和(総産出−中間投入)であり正味の経済活動の規模が捉えられる。
 この国内総生産から固定資本の減耗を控除したものが生産者価格表示の国内純生産とされ実質的な規模を表したものとなる。さらに間接税を控除し、補助金を加算したものが要素所得表示の国内純生産であり経済制度を配慮した上での実質的な生産規模を意味している。
 現在の国民所得統計では、以上のような概念に沿って業種別にその価額が推計されている。ただし、この業種区分では、分配所得の制度部門と直接関連付けて統計が把握できないため、1993年に国連で整理された改訂SNAでは、生産活動に関しても制度部門別にも把握していくこととなっている。
 なお、国民所得勘定上では、中間投入は一括して計上されているが、投入元の産業を細分することによって産業連関表が作成され、これによって経済活動の波及効果等の分析が可能となる。


分配所得の枠組み

分配所得の枠組み
    分配
経済主体
所得源泉
一般
政府
対家計
民間
非営利
団体
家計法人
企業

企業
個人
企業
生産雇用者所得
国外からの雇用者所得
 雇用者所得 
営業余剰営業余剰 
営業余剰・財産所得
国外からの財産所得
財産
所得
受取    
支払い     
 合計     
 

マトリックスで分かる生産と所得分配

 国内純生産(要素費用表示)は、個人にとっての雇用者所得と企業(個人及び法人)にとっての営業余剰で構成される。このうち営業余剰の一部は、生産の際の資金拠出者に対して財産所得(利子・配当・賃貸料)の支払として各経済主体に再分配される。
 このため、分配所得は、所得の源泉(雇用者所得、営業余剰、財産所得の受取・支払)と経済主体(一般政府、対家計民間非営利団体、家計(一般の家計、個人企業)、法人企業)のマトリックスで整理される。
 実際の分配所得統計では、家計の雇用者所得、一般政府・対家計民間非営利団体・家計(非企業部門)の財産所得(受取・支払)及び法人企業(民間法人企業・公的企業)・個人企業の企業所得(配当後)に大区分されており、マトリクス上の範囲として捉えると理解し易い。
 この分配所得は狭義に国民所得と呼んでおり、国内純生産(雇用者所得及び営業余剰)に国外からの財産所得及び雇用者所得を加算し属人主義で計上している。

所得の再配分の構造

所得再分配の枠組み
間接税
(控)補助金
 分配所得
市場価格
表示
一般政府対家計
民間
非営利
団体
家 計法人企業
所得

分配
 支払受取支払受取支払受取支払受取
損害保険等
直接税等
社会保障等
その他の移転
        
国外からの
その他の
純移転
 可処分所得一般政府対家計
民間
非営利
団体
家 計法人企業
   要素費用表示の所得統計に間接税等を加算すると市場価格表示の所得統計となる。
 各経済主体の所得について、さらに損害保険・直接税等・社会保障・その他の移転所得に関する支払いを控除し・受取りを加算するとともに国外からのその他の純移転を加えると、各経済主体の可処分所得が求められる。
 税や社会保険料を通じての所得の再配分(移転)をどの程度のものにしていくかが社会制度として大きな課題である。この表によって、当然ではあるが、支払い側を省みず、受け取り側だけを拡大できないことは明白である。


可処分所得と支出の枠組み

可処分所得と支出の枠組み
 可処分所得 



一般
政府
対家計
民間
非営利
団体
家  計法人
企業

最終消費支出    
貯蓄     
資金調達 
資本形成   
純移出  
 各経済主体の可処分所得は、それぞれの最終消費に支出され、残余が貯蓄となる。
 貯蓄は、経済主体間で資金の調達が行われ、投資(資本形成)が行われる。
 また、所得の処分には、国外への移転も含まれる。
 なお、この資金調達の勘定が明示的でない場合があるが、経済主体毎の貯蓄と資本形成及び純移出との差が借入金に相当する。
 さらに、この最終消費支出と資本形成の和(国内総支出)は、生産者価格表示の国内総生産に等しいものとなる。

(May.03,1998.Rev.)

国民総所得(GNI)

現在、国民所得勘定の代表値としてGNI(国民総所得)が利用されるようになっている。
これは、従来のGNPと同じものであるが、国際取引を含めて実質化する際に、交易利得に差異がある。
(名目) ●名目GNP(68SNA)=名目GDP+海外からの所得の純受取=名目GNI(93SNA)
(実質) ●実質GNP(68SNA)=実質GDP+海外からの所得の純受取(実質)
     ●実質GNI(93SNA)=実質GDP+交易利得+海外からの所得の純受取(実質)

(Jul.31,2002.Add.)

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