西部地域成長のシナリオ
−−省市区別経済成長率の比較から−−

成長率の現況
 中国の経済開発については、ケ小平が改革開放の中で打ち出した「先富論」により、まず沿海省市の発展を先行させた。
 この結果、中国国内での所得格差は著しく拡大してきており、現段階は、この先富の成果を内陸部に波及させる段階に来ていることは共通認識となっている。

 各省市区の域内総生産の年々の成長率は、沿岸地域で際立って高い。
 唯一、遼寧が例外的に低いが、これは国有企業改革の課題を抱えているためである。
 内陸部であるが、四川、重慶などの成長率が特に低いのも、かつて三線建設として、企業立地を図ったことによるものであろう。
 また、西蔵の成長率が高いが、これは、中央政府による積極的支援それ自体によるものと考えられる。

 成長率に差はあるが、内陸部の省市区でもそれぞれ一定の成長を続けている。
 これは、沿海部の成長の結果として、出稼ぎ労働者の賃金の還流とともに、中央政府等を経由した公共工事や公共部門の給与などによる資金の流入があるためであろう。
 課題は、こうした受身的な経済成長を基礎として、域内に自立的に成長する産業を形成していくことであろう。この点は、日本の過疎地域の課題と同様である。


企業経営形態の構成
 各省市区の鉱工業生産を担う企業の経営形態について見ると、成長の著しい地域では国有企業の構成が特に低くなっている。
 さらにこの中でも、広東、福建については個人企業等の比率が高く、浙江、江蘇については、集体企業の比率が高い。これは、相対的に見て、前者は華僑を含めた国外資本から、後者は農業の生産性の向上による蓄積資本から経済成長を遂げている面が強いことを表している。

 また、成長がおもわしくない結果でもあるが、東北3省や四川、重慶等内陸省市区では国有企業の比率が高い。


外国からの投資
 内陸部の省市区の成長には、外国からの資本流入が望まれ、各種の優遇策等が整備されつつある。
 しかし、少なくとも2000年までの投資については、引き続き沿海省市と北京で大部分を占めている。
 日本からの投資も期待されるが、沿岸部に留まるものが多いであろう。
 近年、揚子江より北にある山東、江蘇での投資額が拡大しているが、これには日本からの投資も寄与していると見られる。

 こうしたことら、内陸部での投資拡大には、一層の条件整備が必要と考えられる。


農業の生産性
 農業の生産性の向上から、資本の蓄積を図り、郷鎮企業を起こしていくシナリオも可能であるが、内陸部が有利な位置にあるわけではない。


内需対応
 結論的には、沿海部の経済開発の波及効果を様々なルートで受け、内陸部においても所得水準の向上が見られるが、この成長による消費需要の拡大に対応する物資の生産拡大を内陸部なりに遂げていくことができるかが課題であろう。
 内需に対応する生産拡大により、経済全般の自立的成長が見え始めれば、一層の外国資本の導入も期待できることとなる。

 こうした成長の核を形成した後に、移輸出できる産業の形成が必要であるが、そのためには、輸送を始めとする基盤施設の整備が必要である。
 こうした基盤の整備に、中央政府が資金を投入することは、成長の契機を与えることでもあり、二重の意味で重要である。

 ちなみに地方の財政の収支差について見ると、上海や北京とともに、西蔵、青海、寧夏、新疆等の自治区などに特に支援を厚くしている様子が窺える。(ただし、これらの地区は人口規模が小さいため、同じ支援額であっても一人当たりではより大きく現れている。)
 この統計の持つ意味合いについては、さらに検討する必要があるが、この限りでは、重点的開発地域であるべき、重慶、四川などへの支援は特に大きくはない。

 また、内陸部の移輸出生産品としては、いわゆる軽薄短小を指向する必要がある。この際、沿岸部との所得格差による低人件費という競争上の利点が働こう。


(統計データ)
先富論
 改革開放政策の展開に際し、ケ小平が主張した考えで、毛沢東時代の平等主義から脱却し、まず豊かになれる人から豊かになり、それを徐々に全国的に波及させていくシナリオをいう。
 現段階は、豊かになった沿海部での成果を貧しい内陸部の開発に振り向けていく段階となっており、「西部大開発」はこのシナリオに沿ったものといえる。

参考文献
(株)日本総合研究所「中国の地域経済格差と地域経済開発に関する実証的研究 」1995年3月(総合研究開発機構(NIRA) : 出版物情報)

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(Jan.23,2002.)