産業構造の地域格差
−−工業化を経ない市場経済の浸透−−

 日本・韓国・中国それぞれの産業構造の変化について、就業者を第1、2、3次産業に分け、その構成比の推移を見ると、いわゆるペティー=クラークの法則に則り、3国が年代の差をおいてほとんど重なる軌跡をたどっている。
 しかし、各国の地域毎の産業構造には、大きな格差があるとともに、この軌跡に乗っているわけでもない。
 具体的には、国内で相対的に開発が遅れている地域については、ペティー=クラークの法則でいわれる工業など第二次産業の十分な拡大を経ないで、サービス業などの第三次産業が拡大している
 なお、韓国の2000年の構成比については、日本と異なるものとなっており、これは、別途検討が必要である。


中国
 中国の近年の急速な経済成長の背景には、一つには、上海等の既成都市の一層の発展があった。他方、農業での蓄積を元に数多くの郷鎮企業が農村地域に形成され、次第に都市へと発展しつつ、地域の産業構造を変えていったという要素も強かった。
 しかし、農業の生産性向上が必ずしも容易でない地域においては、地域全体の開発が著しく遅れる結果となり、国内での格差が大きく広がっている。
 ただし、急速な開発に至っていない地域においても、国全体の発展の中で、市場経済の浸透が見られ、第三次産業の比率を上げている。
 この要因としては、中央政府からの財政的支援などによる引上げ効果とともに過剰な農業就業者の押出しによる効果なども考えられる。具体的なメカニズムについては、別途、分析しておく必要があろう。
 この結果、各地域の産業構造を三角グラフに展開すると、第二次産業の構成比に大きな差を持ちながら、比較的狭い帯の中で広がっている。
 

 農業等の第一次産業就業者の構成比の低下状況を地域毎に見ると、北京、上海はほぼ10%、天津も16%で3市いずれも20%を割っている。
 これに次いで低いのは、遼寧、黒龍江と東北の2省で、戦前からの開発の結果が現れている。
 さらには、近年工業の成長が著しい、沿岸地域各省の第一次産業就業者の比率が低下している。
 逆に、開発が遅れ第一次産業就業者の比率が高いのは、西蔵、雲南、貴州などの山間部の省である。


韓国
 韓国の市道毎の産業構造については、市と道の間に大きな格差があることは当然予想されよう。
 実際に、広域都市の第一次産業就業者の比率は極めて低い。光州を除いて、いずれも5%を割っており、特にソウルは、0.2%で農業は消滅しているといえよう。
 これに対して、道では第一次産業就業者の比率が高い。


 さらに、道の中でも、産業構造に大きな差がある。
 特に、京畿は第一次産業就業者の比率が5.1%と低く、大首都圏が形成されている。また、慶尚南も15.7%で、釜山、慰山を囲んで大都市圏を形成している。
 その他の道については、山間部が多く農地の開けていない、江原、忠清北で、第一次産業就業者の比率が比較的低い。
 なお、済州については、第三次産業就業者の比率がが60%となっており、観光産業の発展等が伺われる。


日本
 日本の各都道府県の産業構造については、大都市圏の第三次産業が卓越した地域、大都市圏周辺に位置し第二次産業が卓越した地域、その他の日本の周縁に位置し第一次産業が相対的に多い地域に分かれ、その中心部に地方中枢都市等を持つ県が位置している。
 日本の周縁に位置する諸道県については、沖縄、北海道に典型的に見られるように、大規模な工業化を経ず、第三次産業の比率が高くなっている。







東アジアはモノへのこだわりが強い
−−世界各国の産業構成比較−−

 右図は、世界各国の国内総生産の産業別構成を所得水準別に区分して表示したものであり、所得水準の向上とともに農業生産の比重が減少し、工業、サービス業(広義)生産の比重が増加する様子が現れている。
 しかし、ペティ=クラークの法則でいうとおり、各国が、経済発展の段階の中で、まず工業生産の比重が相当程度増加して後に、サービス業生産の比重の一層の増加とともに工業生産の比重が低下するというシナリオをしっかりと辿っているわけではない。工業生産の比重がそれほど増加しないまま、サービス業生産の比重がどんどん増加していると見られる国も多い。
 これは、都市国家的な小規模国の場合にはありえることだろう。さらに、工業生産が伸びなくても、農村地帯から都市に向かって人口が移動し生産性の低い様々なサービス業が拡大することも多いと考えられる。
 こうした中で、日本は高い比重の工業生産を経験してきたし、韓国も現時点で高い段階にあり、中国もサービス業生産の比重は相対的に低く農業生産の比重の減少は工業生産に向かっている。さらに、東南アジアの各国についても、それぞれの所得水準と見合う世界各国の産業構造と比べた場合、工業生産の比重が高い。(ただし、フィリピンが多少例外的な国といえるが、これは歴史的経緯から、他の東南アジア諸国と異質のものを持っていることが予想できそうである。)
 こうしたことから、東アジアの3国及び東南アジア諸国は、律儀にペティ=クラークの法則に乗って推移しており、モノへのこだわりが他地域に比して強いと言えそうである。
 国連家族年(1994年)にマテリアルワールド・プロジェクトで作成された写真集「地球家族−−世界30か国のふつうの暮らし」でも、中国・日本の家族の所有するモノの多さにこの様子が伺える。

(Apr.24,2002.Rev./Mar.06,2002.Add.)



(統計データ)
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(Sep.14,2001.)