韓国の工業生産の動向
−−都市圏での停滞−−

 以下で、韓国の工業生産の動向について述べる。ただし、とりあえずの整理であって、短期的動向、企業組織の動向、他産業との関連性などについて別途分析を深めた後、以下の記述を再検討する必要があるだろう。また、今後、貿易の動向とも関連付けた分析も必要である。

動向
 韓国の工業生産は、1980年代、'90年代を通じて、著しい速度で成長し続けてきた。
 アジア金融危機に際しての'98年の一時的落ち込みからも急速に回復している。2000年後半から再び景気が後退していることについては、別途検討が必要である。


 '90年代後半の工業の成長について、財別の寄与度を見ると、製造業用中間財は着実に全体の伸びを支えている。また、資本財では、通信設備・事務所用設備(IT関連製品等)が、著しい伸びを見せている。
 しかしその他の財については、総じて低い伸びに留まっている。
 特に、消費財の伸びは低く、非耐久消費財については、減少を示した。これは、中国の生産の拡大なども影響しているのであろう。この意味では、耐久消費財の今後の見通しも楽観できないといえよう。
 一方、資本財についても、IT関連製品を除けば、伸びは低く、特に、製造用設備等については、減少を示している。これについては、日本との競合が厳しいものと考えられる。
 韓国経済は、日本経済と中国経済の挟撃に遭っているとしばしば表現される。飛躍しすぎではあるが、この統計もこうした現象を表している可能性があろう。

 なお、全産業の中での工業のシェアについては、'90年代前半から既に低下し始めている。


地域別状況
 工業生産の地域別状況については、まず、広域市を含む京畿道地方全体で全国の38%を占めている。ついで慶尚南道地方、慶尚北道地方がそれぞれ25%、14%で、これら3地方で全国の77%となる。
 このような著しい地域的偏りについては、地勢的結果という面もあろうが、ソウルへの一方的な集中をことさら抑制しなかったことが大きいだろう。さらには、過去の経済開発政策が偏ったものであったとの議論もある。


 地域ごとの業種構成については、一般論として、工業が特に集中している地域では多様な業種で構成され、その他の地域では特定の大工場を核とした業種の集積があり、さらに工業化のあまり進んでいない地域では農業を背景においた食品加工の比重が大きい。このため、詳細な考察は、具体的な企業の立地まで把握して語る必要がある。ここでは、取り敢えず、工業生産統計から読み取れることを整理しておく。
 まず、ソウルでの最も生産額の多い業種は、印刷出版である。これは、様々な機能が集積した首都圏として理解でき、日本の東京都と同様である。
 また、釜山及び慶尚南さらには、仁川、大田については、産業集積が積極的に図られた地域として、多様な業種が集積している。
 一方、ソウルを取巻く京畿、さらに忠清北、慶尚北、では、通信機器、コンピュータが卓越しており、ソウル釜山の発展軸に乗った集積であろう。
 さらに、他方、慰山、忠清南、全羅南については石油・化学が、全羅北、光州には、自動車、機械が集積しているが、特定の工場の立地があるものと見られ。また大邱については、繊維が多いが古くからの集積であろう。
 他方、江原、済州については、工業の集積は少なく、結果として、食料製品が主な業種となっている。





 '90年代後半の工業生産の地域別動向については、総じて広域都市地域の停滞さらには減少が目立つ。
 最も減少したのは大邱であるが繊維が主要業種であれば、中国等との競合の中で、当然の結果であろう。また、その他の都市についても、多様な消費財を生産しておれば、同様な推移を辿って当然であろう。


最近の変化
 2000年後半から、景気が後退し、生産指数が急激に低下している。これには、京畿や仁川での減少が特に大きく貢献している。

 統計をなぞる限りは、以上のような説明となろう。しかし、IMF支援を契機とした財閥解体等の構造調整について言及しないでは、韓国経済を語っていることにはならないだろう。この点については、今後加えていきたい。



統計データ

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(Oct.05,2001.)