31市省区が競合して伸びる中国の工業
−−主要産品生産量地域別増減寄与度−−

 中国は31の行政区(市省自治区)に分かれている。総人口は日本の10倍で、平均でも1行政区当たり約4千万人の人口となり、世界の中規模国に匹敵するといえよう。
 また、産業振興については、国全体としての施策展開と共に、各行政区がそれぞれ独自に展開し、地域間相互で競い合っている様相も強い。実際に各行政区の業種構成にはフルセット型の様相がある。
 このため、中国の経済的離陸については、単に中国1国が経済的存在を強めているというより、30近くの国が競い合って拡大していると理解した方が、その意味合いを的確に掴むこととなるかもしれない。各産品の生産はそれぞれ著しい成長を続けているが、各行政区では相互の競争環境の中で、それぞれの変化を見せている。

インフラ用素材等の生産

 工業生産の展開のための基盤整備に必要な素材等の生産については、各行政区域それぞれで増産を図っている。

発電
 産業活動の基礎となる発電について、1990年代後半以降の推移を見ると、北京・西蔵を除き全ての行政区で大幅に拡大している。
 電気は、基本的には移送が容易な財ではあるが、それぞれの行政区が他に先んじて経済発展を遂げていこうとすれば、自らの地域内で、確保できるようにすることは当然のことであろう。


セメント
 セメンは、地域のインフラを築いていくための基礎的な素材であり、上海を除く各行政区で増産を見せている。


鉄鋼
 鉄鋼もインフラ整備のための重要な基礎素材であるとともに、また多様な工業の基礎素材でもある。このため、各行政区で生産を拡大しており、特にこれまで生産の少なかった地域で著しい増産が見られる。


消費財等の生産

 必ずしも高い技術を要しない消費財等の生産は、各行政区域で手がけられてきているが、既にその淘汰が始まっているようにも見られる。
 着実に生産を伸ばしているのは、東部沿海の諸省で、外資の進出等があったところである。


 布は、発展途上国の経済発展の段階で最初に形成を図る業種と考えられるが、中国では既に厳しい淘汰の段階に入っているように見られる。
 こうした中で、広東では2倍以上に拡大しており、すさまじい競争が展開されていることが伺われる。


電気洗濯機
 洗濯機の生産は、比較的立地条件が緩く、各行政区で生産されてきているが、地域間の競争は厳しく、華北や西部では既に淘汰も始まっている様相が見られる。


電気冷蔵庫
 冷蔵庫はその需要からいって東北部等での立地は乏しい。
 (山東での成長は、韓国資本の進出等の影響も強いのであろう。)


カラーテレビ
 カラーテレビの生産については、一定の技術的背景が求められ、外国資本の進出等とも重なって、広東さらには四川での集積が大きくなっている。
 さらに、新たな企業立地で1990年代後半以降に生産を10倍以上に拡大している行政区も5省ある。


石油化学関連素材等の生産

 膨大な原料の搬入、巨大なプラントの建設などを背景に持つ業種の拡大も始まっているが、これらは、明らかに東部海岸線の諸省が有利にある。

プラスチック
 プラスチックは、多様な工業にその素材を提供する基礎的産業である。生産規模は、海岸線を中心とした東部地域で大きいが、中西部の多くの行政区でも著しい伸びを見せている。


化学繊維
 化学繊維については、2001年までに、江蘇・浙江2省で全体の半分を超えるまでに拡大した。
 中国全体の需要から見て、2省に限定される必然性はないだろうが、前段となる石油化学工業の立地等が重要な役割を果たしているのであろう。


自動車の生産

 裾野の広い自動車産業については、かつて重工業が集積していた地域で生産が拡大し始めている。

 自動車工業は関連業種が多く、行政区への立地を期待される業種であるが、関連企業の立地自体が条件となり、中国国内での産業立地の総合的な結果として捉えられよう。
 ただし、かつて重工業が集積していた東北部や四川での生産の今後については、さらに注視していく必要があろう。


電子機器の生産

 知的集積のある特定行政区で、先端技術を背景とした業種が伸び始めている。

電子機器
 電子機器の生産については、基本的には立地の束縛が極めて少ないと考えられるが、それなりの技術水準を必要とし、外国資本の進出によって支えられている行政区、知的集積が図られている行政区において生産が急拡大し始めている。


 上述のように中国の工業生産については、各行政区ともその発展を期して、インフラ整備のために必要な電力、セメント、鉄鋼などの素材の生産を着実に展開している。
 また、布の生産や各種家電製品の生産については、各行政区で着手されているが、激しい競争の中で、淘汰が進んでいるようにも見られる。こうした生産は、膨大な人口を背景にそれぞれの行政区で成立することはできないのか、それとも一時的後退なのか。また、現在の生産自体が、単に行政施策の支援によって成立しているものであるのか、外資等の背景を持ったものなのか、あるいは行政区内で自立的に成長してきたものなのか、いずれにしても、一層の精査が必要である。
 さらに、幅広い産業の原材料となるプラスチックや化学繊維等の素材の生産も急速に拡大し始めているが、立地条件の差異から自ずと格差が生じているようである。
 他方、北京、さらには上海等では、家電製品などの従来の生産を終息させ、電子製品など新たな生産への展開を図っている様相も見られる。

 以上のような中国の生産の拡大は、世界各国の企業も入り込んで行われている。これに対して、周辺各国内の生産については、どのような存在の場を確保していくのか。極めて困難な課題であることに間違いはなく、それぞれ独自の新たな位置を形成していかない限りは、衰退を余儀なくされるであろう。少なくとも所得水準の急速な平準化は免れない。

(統計データ)


関連項目に戻る

(Oct.31,2002.)