中国各省市区の製造業の業種構成
−−ワンセット型立地−−

 右図は、中国の製造業種毎の生産額の省市区の構成である。配列は総生産額の大きい業種から並べ、さらに業種内では総生産額の大きい省市区から並べてある。また、なお、省市区毎の製造業生産額の業種構成は別途見たところである。
 図から確実に読み取ることは必ずしもできないが、殆どの業種で各省市区がそれなりの構成比を持っており、各地区毎でのフルセット型の立地が進んでいる様相が見られる。

 最初に全業種での省市区の生産額の構成に対して、著しく偏っている構成が見られる業種をあげると、まず煙草加工業のように生産資源の存在が限られる業種、その他生産総額が比較的小さい業種がある。
 また、紡績業も偏るが、これは途上国の発展段階において最初に取り組むことが予想されるものだが、多くの省市区がこうした段階を飛び越えて工業開発を進めている様相が見られる。
 さらに、電子通信機器や電気機器製造業については、どの地域も立地を促進すると考えられ、また技術的資源が導入されれば立地の容易な業種であるが、立地環境の良否から外資系企業等が地域を選別していると見られる。

 他方、輸送機械や鉄鋼(黒色金属)、石油等については、その特性から立地が限ぎられてよさそうだが、これは比較的各地域に満遍なく存在している。
 この立地については、かつて改革開放前の中央政府管理統制政策時代に防衛上の理由から、工業機能を積極的に内陸部に分散させる「三線政策」が採られ、各地域ごとの自給自足体制の形成が目指された結果とされる。さらに一省内においてさえ分散が図られており、この時代には著しく生産性の低い工業生産体制に陥った。
 現在の観点からは、集約が図られ分業体制を形成することによって、より効率的な生産体制が実現する可能性がある。
 しかし、人口が5千万人を超える省も多く、韓国1国を上回る規模であることを勘案すれば、省市区を超えての再編はことさら必要がないとも考えられる。
 また、各省市区は、自立的に経済活動を展開し始めており、相互間の競争環境の中で、計画的な連携の形成は必ずしも容易ではない。





 フルセット型の立地の検証として、各省市区の製造業生産額の業種別構成比と全国での構成比の比(通常「特化係数」と称される。)を表したものが右図である。ただし、生産額が1千億元未満の業種及び省区は除いてある。
 都市的特性を持つ北京や重化学工業が先行的に整備された東北3省(遼寧、吉林、黒竜江)などは特化係数の変動が大きい。また業種としては、電子通信機器で係数が1/4以下の地域が目立つ。
 これらの省市に対して、中南部沿海地帯の省市(山東、江蘇、上海、浙江、福建、広東)では殆どの業種の特化係数が1/2から2倍の範囲に収まっている。
 ただし、広東については、電気通信機器が極めて高く、逆に鉄鋼が低くくなっている。




 
中国の工業開発に関する地域政策の経緯
植民地体制建国以前
(1949年以前)
植民地企業東北・華北中心
中央政府
管理統制
政策
建国以降全民所有制中央集権的部門別縦割り管理体制
自力更生路線、重工業優先策
国営企業が理想型、
工業開発を東北・華北中心に推進
1956年十大関係論沿岸部と内陸部、
重工業と軽工業の調和的発展を目指す
1958年生産戦線上の大躍進
7大経済協作区、五小工業
ブロック別ワンセット型開発
(東北、華北、華東、華中、華南、西北、西南)
(鉄鋼、化学肥料、機械、セメント、石炭)
1960年代三線政策
(防衛政策)
内陸部への工業機能分散移転計画
(沿岸、内側、内陸)
1960年代小三線計画省内でも工業の分散立地
自給自足体制整備
(1966-1976年)(文化大革命)
改革開放
政策
開放
実験区
1978年改革開放政策への転換
(党11期3中)
地方分権化、
市場メカニズム導入
1980年経済特区初指定広東省深セン他
1981年個体企業認可郷鎮企業の拡大
重点
地域
発展
1984年14沿岸諸都市の開放大連他
1985年沿岸経済開放地帯初指定長江デルタ他
1986年工場長請負制導入自主権拡大
開放の
面的
拡大
1986年−第7次五ヵ年計画外資導入に関する法制度の整備充実
1988年北京市新技術産業開発実験区認可工業開発の高付加価値化への布石
(1989年)(天安門事件)高度成長の中でインフレ等の弊害
1990年上海浦東地区開発計画策定(地区の国有企業停滞への対処)
全面
開放
1991年−第8次五ヵ年計画改革開放路線の堅持確認、再度の大躍進
1992年全民所有制工業企業経営
メカニズム転換条例
「国有」を「国営」とし、政治と経済の分離
1992年南巡講和全方位開放への突入
1992年長江沿岸5都市の開放
主要省都開放
改革開放エネルギーの内陸地域への拡大
1993年会社法制定株式会社の増加
1993年−外資優遇策の順次撤廃自力発展経済基盤の確立
地域間
協調
発展
1996年−第9次五ヵ年計画内陸地域開発への重点投資
北村嘉行編「中国工業の地域変動」大明堂200年等により作成


統計データ
参考文献等
北村嘉行編「中国工業の地域変動」大明堂2000年
中兼和津次編「現代中国の構造変動第2巻『経済−構造変動と市場化−』」東京大学出版会2000年


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(Nov.02,2001.)