第1章 経済開発の進展
第2節 国内システムの形成
2 組織構造(分配)
(1)家族の変化

(1-2)世帯の変化

要旨
 都市への人口移動は、同時に家族のあり方に変容をもたらす。
 一般には、大家族世帯から核家族世帯への変化を社会の近代化の方向として、肯定的に受け入れられている。
 しかし、自ら生活を支える機能は、低下しており、外部から支援するシステムの整備が一層必要となっている。
 さらに、核家族化から単身化が進む様相も見られ、個々人の生活の安定をいかに実現していくか、再考が求められているといえよう。

次ページ


ア.家族の変貌
−−急激に縮小する世帯−−

(ア)家族規模縮小の国際比較
 人口の都市へ向かっての移動は、従来からの家族のあり方に変化をもたらし、家族(世帯)の規模は、急速に縮小している。

 韓国の世帯規模の縮小は極めて速く進んでいる。しかし、韓国の1995年が日本の1970年に対応するとすれば、2000年現在、既に縮小速度が緩和している可能性もあろう。なお、家族を大切にする意識の影響がどう現れるか関心が持たれる。
 また、中国については、経済開発の段階からみれば、かなり小さい世帯規模になっていると考えられる。
 日本の世帯に関する定義が「普通世帯」から「一般世帯」に切り替わっている。

(Aug.30,2001.)



(イ)中国の世帯
 中国での家族の大きさ(世帯当たり人員数)は、3.58人(1999年)であるが、地域によって大きな格差がある。
 都市化の進んだ、上海市、北京市では、3人/世帯を若干上回る水準である。さらに、海岸線の経済開発の進んだ省で概ね3.5人/世帯以下となっている。東北3省も世帯規模が小さいが、これはかつて産業が集積していた結果であろう。このことは、重慶市や四川省についても同様に捉えられるのだろう。
 これに対して、経済開発の遅れる内陸部の省の多くは3.5人/世帯を超えている。
 一方、世帯規模には、民族の違いも現れており、特に、西藏自治区では、6.8人/世帯を超えている。また、広東省や海南省等でも4人/世帯を超え大きいのは、民族性(住民性)であろうか。


 規模別の世帯数の分布について見ると、天津、上海を始めとする経済開発が進んだ、市・省では、3人世帯が最も多い。
 これに対して、経済開発が遅れている地域では、3人、4人世帯の構成比がほぼ同等である。
 さらに、4人世帯の構成比が特に大きい地域は、民族性が現れているかと考えられる地域である。


(ウ)韓国の世帯
 韓国の世帯は、1970年代以降急速に縮小し、2000年で3.1人/世帯となっている。
 1970年代当初においては、ソウル・釜山市、京畿道の規模が相対的に小さかったが、全国的な縮小の中で地域による格差は、むしろ逆転している(折れ線が交差している)
 なお、済州道についても、かつて最も小さいかったが、現在では、かえって相対的に大きな道となっている。


 このような世帯規模の縮小の結果、現在では、地域による格差は極めて少ない。
 さらに、都市への人口移動の結果として起こった世帯規模の縮小は、人口を流出させた地域で顕著に見られる
 例えば、京畿の規模は市道の中で最も大きく3.3人/世帯となっている。これに対して、慶尚北道、全羅南道、江原道は2.9人/世帯となっている。
 これは、都市への進学や新規就業が、必ずしも個人で行われず、家族揃っての移動があるとともに、従前の居住地には、農耕、その他の就業などのため移動の困難な者を残す場合があったものと考えられる。


 規模別の世帯数の分布についは、4人世帯の比率が極めて高い。このように、中国の都市化が進んだ地域より韓国の方が、世帯規模が大きい。これには、子供の数が若干影響している可能性もあろうが、韓国の出生数は既にかなり低下している。
 また、規模別世帯の構成に地域ごとの格差があまりないことも特徴である。ただし、世帯規模の特に小さい道では、2人世帯の比率が高くなっていることが目立つ。

 なお、韓国の家族は、父系血縁による強い繋がりにより広がっている。このため、統計上で世帯を把握するため、1970年代に「가구(カグ;家口)」という概念が、特に作られている。ちなみに世帯や家庭に対応する概念に近いものとしては「(チプ)」がある。韓国では家族に関する考え方、そして世帯類型が急速に変化している。


(エ)日本の世帯
 現在、日本の世帯の規模は、2.69人/世帯と極めて小さくなっている。
 地域別には、大都市地域で特に小さいことに加えて、一般に西部地域で小さく、北海道を除く東部及び中部地域で大きい。
 これは、東部及び中部地域は日本の米作地帯であり、人口の大都市圏に向かっての移動の過程で、耕作継続のため家族規模の縮小があまりなかったものと理解できる。
 これに、対して、西部地域は、相対的に、家族規模を大きく縮小する例が多かったといえよう。ちなみに、韓国の人口流出地域は、この西部地域の型の移動と考えられよう。


 日本の規模別世帯数の分布については、世帯数で見る限り、2人世帯が最も多く、1人世帯もこれに並ぶようになっている。
 (なお、人口の所属世帯規模別構成では、4人世帯が最も大きい。)



イ.支えあう組織の再考

(ア)家族機能の再考
 東アジア各国の家族について語る際には、儒教的家族観がしばしば持ち出される。
 「都市は人を自由にする」といった言葉のとおり、家族にかかる様々規範は、急速に消滅しつつある。特に、ラディカルなフェミニズムと始めとする多様な主張が家族観の積極的な解体を促してきた。
 こうした結果、日本等では、家族のあり方を検討する共通基盤を失っている。

 しかし、核家族化から単身化へと進み、人々の生活基盤が極めて脆弱なものとなってきている。
 こうした課題を具体的制度としてどう保障していくのか。各国それぞれが選択していく課題である。


(イ)新たなコミュニティの形成
 さらに、行政による公的な解決ばかりでなく、多様なボランタリィな活動による支援も、多様な主体によって、検討され始めている。



(統計データ)

参考文献等

情報源




次ページ
章目次
トップページ

(Jul.26,2002.Orig.)