乗用車の普及
−−中国での自動車の普及期はいつか−−

 自動車の普及状況について、日本では経済の停滞もあり、頭打ち状況が明確になっている。韓国では外為危機に際して一時停滞したがその後再び急拡大している。また、中国については、1990年代半ばより普及を加速し始めている。
(統計データ)

(Jan.28,2003.Add.)



 人口当たり乗用車普及台数の推移は右図のとおりである。
 韓国については、日本と比較して未だ1/2の水準であり、潜在的な拡大の余地は大きい。
 中国の普及率は、まだ極めて低く、今後量的に急拡大すると見られる。

 人口規模の差異から、中国の人口当たり普及率は、日本の1/100の段階でも、実数では1/10の段階にあることに留意が必要である。


 
中国での普及
―都市地域、次いで沿岸省から順次普及段階へ―

 中国の自動車の普及については、巨大市場出現への期待と環境悪化への懸念といった背反する2つの発想で強い関心が持たれている。
 中国政府は自動車の家庭への普及を経済発展の重要な核として捉えている(2000年党15期4中総)。また2000年末には、各自動車メーカによる10万元車の一斉発表があった。
 こうしたことから、2001年は中国の自動車普及の始動期(日本流に言えばマイカー元年)という考えもある。
 しかし、乗用車の急速な普及については、政府の政策姿勢、メーカーの対応とともに、世帯の購入体勢が整っていないと始まらない。
 10万元レベル乗用車について、勘案すると、為替レートを1$=8.277元として12,000$相当である。これに対して、中国の平均所得は、899$(2001年1人当たりGDP)であり、まだ国全体としては、普及に拍車が掛かる段階には至っていない。
 まず、普及に拍車が掛かる時点とはどんな時点と規定するか。韓国の推移で、急速な普及に転じたのは、概ね'80年代後半と言えようか。これは、人口千人当たり20台レベル('87年20.3台/千人)である。また、日本では'66年が乗用車元年とされ28台/千人の水準であったという(ただし、個人購入は約5割)。なおこの時点での平均所得と小型車購入価額の比は1:4であったという。
 そこで、仮に、普及に拍車が掛かる時点を概ね20台を超える時期としよう。また、所得水準としては、自動車の価格が一層低下することも勘案して、1人当たりGNPが2,000$台の半ばまでに上昇する時点に実現することになろうか。
 この基準では、国全体としては、年率8%成長として所得が現在の2倍強となる2010年代半ばにこの水準に至ることとなろう。この時点については、日本と50年、韓国と30年と見られる経済発展段階の時差に対応している。


 ただし、中国の国内では、経済発展の段階に大きな較差がある。北京市、天津市、上海市は、既に1人当たりGDPが、2,000$を超えており、この段階に入っている。また沿岸地域の3省では、1,500$を超えており、2010年以前にも到達し始めるであろう。
 自動車の利用は、人口密度の特に高い都市中心部では必ずしも便利ではない。近年、経済発展を核として形成されつつある数多くの小都市で、道路など利用環境の整備もある程度進めば、自動車の利用も価値の高いものとなり、こうした地域での普及が中国での自動車普及の鍵を握っているのではなかろうか。


 中国の自動車の普及については、その人口規模、経済発展の格差からいって、各省別の分析が必要であろう。中国の総人口は韓国の30倍で、市省自治区の総数は31あり、平均すればそれぞれが韓国一国に相当するともいえる。
 ちなみに、現在の人口当たり乗用車普及台数については、北京市、天津市、上海市で特に高い以外は、全ての地域で低い。しかし、その他の地域では、人口密度が極めて低く、結果として所得も低い地域の方が高い傾向がある。これは、人口密度の低い地域でこそ自動車の必要度が高いということであろう。今後、この状況は、所得格差の中で逆転していくであろう。

 以上のように、中国での自動車の普及については、既に一部の都市で普及段階に入っており、沿岸省がこれについでこの段階に入っていく時点にあると見られる。また、国全体としては、まだ十年程度を要すると表現できるかもしれない。しかし、経済開発の進んだ地域から順次、普及段階に入り始めた今日、世界の自動車メーカーは、こぞって、中国市場への参入を図っている。

 以上、不十分な情報、不十分な分析のまま、勝手に推測を述べたが、各自による検討の出発点になれば幸いである。


 なお、中国での自動車の本格的な普及が始まると、即座に、環境問題、エネルギー問題が大きな課題なって現れてくる。この際、どのような政策がとられるかが、さらに長期的な動向を決めていくこととなろう。
(統計データ)

(Nov.12,2003.Rev.)




韓国での普及
 韓国の乗用車の普及については、近年横ばいで推移している。しかし、これは景気動向にともなったもので、今後景気の再活性化とともに伸び続けることとなろう。
 現在、ソウル市、仁川市、京畿道を含む首都圏に総人口の半数近くが住み、ソウルを中心に人口密度が極めて高く、公共交通も整備されてきている。このため、多くの人にとって、自動車利用価値は、必ずしも高くない面がある。また、都市で通勤用に乗用車を保有する場合、居住地と勤務先双方に駐車場を確保する必要があり、負担も大きくなる。このため、実際にソウルの自動車の普及は全国平均より低い。
 こうした状況によつて、自動車の所有台数がある程度抑制されていくことが予想される。



日本での普及
 日本の乗用車の普及については、停滞が見え始めているが、日本においても景気動向と関連しているものであろう。
 しかし、今後の普及については、環境問題での限界が見え始めており、これに対してどのような政策がとられれるか、また国民の意識がどう変化していくかが普及の動向を左右することとなろう。
 具体的には、炭素税の導入や都市交通の再編が日程にのぼるべき時期に至っている。ちなみに、ヨーロッパ諸国では、これらの対策が既に採られ住民の意識も大きく変化してきている。



 自動車の普及と環境対策との関連については、環境への負荷の少ない、画期的な技術の開発に期待する者も多い。しかし、環境に対応する多様な施策・手段を取りつつ、環境対応車の開発実現に合わせて、それを修正していくというのが、危機管理のあり方であろう。




(統計データ)
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(Sep.07,2001.)