食糧危機は起こるか
−−FAO見通し−−

 世界の食糧危機が懸念されているが、実際にはどのようなことが予想されるのか。
 食糧の生産については、地域毎にその生産の制約となる要素が大きく異なる。このため、地域毎にそれぞれの見通しを立て、その上で世界全体を集計する必要があり、包括的な展望は容易な作業ではない。

 FAO(国連食糧農業機関)の2030年への見通しによれば、世界での食糧不足への懸念は、土地・水の欠乏等からでなく、人口の増加からきているものとしている。その上で、人口の増加はまだ大きいもののその速度は低下していき、また、世界の大需要国である中国については、食糧の充足段階へ到達しているとして、今後の需要拡大速度は低下し、生産もこれに見合って推移していくことができるだろうとしている。
 これは、世界各国・地域それぞれでの需給が均衡すると言うことでない。途上国の穀物需要の増加は国内で全てを賄うことはできないが、伝統的な穀物輸出国及び新たな輸出国が供給するという見通しである。
 ただし、地域的には厳しい問題が残り、状況が悪化する恐れもあることに留意している。
 なお、地球温暖化による異常気象の影響は地域的によっては負の効果をもたらすが、総体としては、対応していくことができるとしている。


 FAOの展望をさらに具体的に見れば、耕地面積の増加には限界があるとしている。


 今後の生産増加の7割は生産性の向上によるとし、具体的には、高収穫品種の採用、複合栽培化、休耕期間の短期化などを要因として掲げている。


 FAOの以上のような展望について、逐一評価することは容易ではない。術を持たない。
 しかし、まず生産性向上に必要な技術の伝播等が円滑に進むか基本的な疑問が持たれる。
 また、水不足に直面している中国、あるいは土壌流出に悩まされているアメリカ等それぞれの生産が確実に推移していくかにも疑問が多い。
 さらに、異常気象に対しての脆弱性も評価が楽観的ではなかろうか。

 FAOの展望を受け入れて考えるとしても、世界全体での食糧の配分の問題は依然として残っている。アマルティア・センの指摘するように、この配分こそ重要課題であろう。
 特に、世界の中でも食糧輸入大国である日本や韓国にとって、仮に資金力はあるとしても、安定した輸入が十分に保証されている訳ではない。
 こうした状況の中で、危機管理としてどう対応していくかが課題となっている。この中ではWTOの体制との整合性も配慮されなければならない。少なくとも、両国とも世界の中でも優れた条件にありながら急速に減少している農地を何らかの方式で保全していくことが必要なのではなかろうか。


(統計データ)

参考文献等

情報源
FAO;
World agriculture:towards 2015/2030(Summary report) 2002

関連項目に戻る

(Nov.29,2002.)