消費食糧の生産に必要な耕地面積の試算
―極端に耕地が不足する日本・韓国―

 ここでは、FAOの統計を使い、世界各国で消費されている食糧(穀類及び肉類)の生産に必要な耕地面積を土地生産性(世界平均)を設定して試算する。

穀物の土地生産性 世界平均 2000年
ItemsProduction
百万t
HarvestArea
千km2
Yield
kg/a
Land Needs
m2/kg
Rice,Paddy6031,53939.22.55
Wheat5862,15527.23.68
Barley13454524.64.07
Maize5921,38242.82.33
Rye209720.54.89
Oats2612720.54.88
Millet283717.513.40
Sorghum5641013.77.29
others2011018.15.52
Cereals,Total2,0646,73530.63.26
 ここでの食糧消費量とは、国内供給総量から種・飼料として利用した分を除いたもので、食料以外に、加工製造、廃棄、その他の利用を含む。穀物の土地生産性については、世界全体の総生産量及び総収穫面積から算出したものを利用する。


肉類の土地生産性 Maize比を仮定
ItemsMaize比
Land Needs
m2/kg
Bovine Meat716.31
Mutton & Goat Meat49.32
Pigmeat49.32
Poultry Meat24.66
Meat, Other49.32
 肉類については、それぞれの生産に必要な穀物必要重量比を想定し、トウモロコシの土地生産性に換算した。


 次の図は、横軸に世界の人口3千万人以上の国及びその他地域の人口、縦軸にそれぞれの国・地域一人当たり穀類・肉類消費量から求めた一人当たり必要耕地面積を採り、その面積によって、耕地の総必要面積を示したものである。
 また、実際の一人当たり穀物収穫面積を重ねて示した(黄緑)。
 なお、当試算で積上げた世界全体としての一人当たり穀物栽培耕地必要面積は10.94a/人となっているが、実際の一人当たり穀物収穫面積は11.16a/人であった。

 各国の一人当たり必要面積は、ある程度それぞれの所得水準と相関があるが、食糧には、生活に必要な最低限度があり、また消費の限度も自ずとあるため、所得水準のような大きな格差はない。ただし、図中では、戦乱の中でコンゴが極端に低い水準となっている。
 必要面積と穀物収穫実面積との差異については、耕地の肥沃度、資本投下量、潅漑、気象条件、技術的条件等々による生産性の格差が背景にある。さらに、肉類については生産様式にも大きな違いがあり、耕作穀物をほとんど使用していないこともあろう。また、事後的には、当年の在庫の増減、輸出入により調整されている。

 一人当たりカロリー摂取量については、一般には、経済開発の初期段階では次第に増加するであろうが、一定の段階で重労働等の減少により必要カロリー量が減少することが考えられる。一方で、経済的に一層多くの食糧が入手できる環境となり、過剰消費の段階に入り、運動等により意図的にカロリー消費を図ることも起こりうる。
 実際には、所得水準の上昇とともカロリー摂取量は増加している。
 なお、所得水準の上昇とともに、食糧の内容を植物性から動物性、さらには鶏肉・豚肉類から牛肉類へと移行させ、結果として、必要耕地面積を拡大させることもある。


 日本では、米の消費を削減してきており、消費熱量合計としても、概ね1990年代前半をピークに、漸減させている。
 この結果、所得水準に比して、相対的に少ない食糧消費にとどまっており、必要耕地面積も世界平均を下回っている。ただし、日本は、魚介類の消費が肉類の消費の少なさを補っている面がある。
 このような実態は、世界の食糧危機が懸念される今日において、国内での過剰消費、無駄が指摘される面もあるが、総体で見る限りは、好ましい状況といえよう。

 しかし、実際の収穫耕地面積と必要耕地面積の比率については、人口が一定規模以上の国の中では、日本は最も小さく0.17倍にとどまっている。ちなみに韓国が日本に次いで不足しており、0.21倍となっている。
 この結果、不足する膨大な食糧の確保を輸入に依存している。これ自体は、資本主義経済市場の中で正当な行為であり、むしろWTOの基調では、推奨さえされていると考えられる。
 しかし、世界の食糧危機が懸念される中で、非常時には、自立できない状況にあり、その資金力で確保していくという姿勢となっている。

 日本、そして韓国においては、WTOの枠組みと協調しつつ、非常時には一定程度の自立が可能な体制を形成していくことが求められている。少なくとも耕地の改廃を続けることは危険であり、耕地を維持するとともに食糧安全保障を実現する体制を早急に樹立することが求められている。

(統計データ)

補考
 炭酸ガスの排出については、世界中の人々の一人ひとりが同じ量の排出の権利を持つという考え方は比較的受け入れやすいものであろう。少なくとも、自分がどのような立場にあるか知らないという無知のベールの後ろでは、このような考えを持つであろう。ただし、大部分の人は、日常生活の中でこのような問題設定をしていないであろう。
 また、これを素直に受け入れるには、現実の行動に大きな修正が迫られるため、実際の政治の場にあっては、そののまま意思決定に反映されるわけではない。特に、国際政治の場では、このような論法を性急に押し通すことは、ほとんど不可能である。
 なお、ここには、異常気象による被害を一層多く受ける可能性の高い発展途上国が、炭酸ガスをより多く排出している先進国に対して、強く抗議することの正当性があると考えられる。

 一方、食糧消費量については、どのように考えられるだろうか。世界の耕地が限られている中で、生産と消費が潜在的に均衡している状況だとすれば、やはり、世界中の人々の一人ひとりが同じ量を消費する権利を持つということになるのであろうか。少なくとも、過剰消費を行い、カロリーを消費するためだけに積極的に運動するような行為は正義に反するという発想は、素直に受け入れられそうである。
 しかし、現実の経済社会では、このような論法は、まったく意味を持たない。まず、人々の行動を規制する最高権威は各国家であり、その領土内で生産されるものの利用は、その国の判断に任されており、国家を超えた格差是正が強く求められる論理はない。このため、一国に余分な食糧生産があれば、各人が過剰に消費しても咎められる筋合いはないこととなっている。
 また、各国の食糧の過不足については、輸出入によって調整されるが、ここでは自由貿易が国際社会での原則となっており、それを妨げる行為は咎められることとなっている。ただし、この自由貿易の原則の具体的な内容は自明ではなく、たとえば、非常時に当該国内の事業者が利益を求めて輸出を行うことを規制することは咎められないようである。つまり不足国から言えば、自由競争メカニズムに則った輸入は義務付けられても輸入する権利がともなっているわけではない。また、世界的な非常時にあった場合、持てる資金力によって、一国で高値買いをすることは、国際社会で顰蹙を買うこととなろう。
 国際社会でのこのような実態の中で、不足国は、自らの危機管理としてどのような行動が求められるのか。自由競争メカニズムの中で輸入を続けつつ、非常時には一定程度を自給する状況に転換可能な体制を構築しておく必要があるのだろう。
 これは、一定程度の備蓄を持つとともに、農地を何らかの形で維持しつつ非常時には、即座に生産を再開する体制ということになろう。
 ここまで、検討すると、現在の自由市場における貿易の原則に理不尽さを感じる面もでてくる。少なくとも、地下水位が低下し、土壌の侵食が激しいような略奪型農業と自由競争をすべきという議論には、疑問を呈することができるのではなかろうか。これでは、短期的に競争力を持つ略奪型農業が世界の農業を駆逐した後に、自らの農業生産も疲弊させ、世界全体の危機をもたらす可能性がある。ただ、日本や韓国がこのような主張を展開するには、自らの農地の改廃をあまりにも安易に進めており、真摯な主張とは捉えられ難いであろう。
 いずれにしろ、このような国際社会の現実の下で、自らの責任において自らの危機管理を果たすべきことはいうまでもない。


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(Jun.02,2003.)