中国の食糧需給
−−生産停滞と需要拡大の可能性−−

 中国の食糧需給については、ワールドウオッチ研究所のレスター・ブラウンによる「誰が中国を養うのか」(1994年)でその困難性が提示されて以来、多くの議論を呼んでいる。
 中国は、経済力を持ちつつあり、人口規模が大きく、仮に食糧不足に陥った際には、世界市場に大きな混乱をもたらすことは間違いない。この意味で、日本はもとより世界の関心事となっている。

→2004年10月の分析
→2006年8月の分析


穀物生産量の推移
 中国の穀物生産量は、近年順調に拡大してきており、概ね自給を実現している。

 ただし、2000年以降の穀物の生産については、大幅に減少しており、今後の動向が懸念される。


 この結果、かつてのような小麦の大量輸入等は見られなくなっている。


生産の動向

穀物生産性の推移
 生産の拡大については、土地生産性の向上が大きく貢献している。
 これは、農業の請負制導入により、生産意欲を高めたことともに、灌漑の拡大や化学肥料の投入等が大きな要因となっていよう。

 ただし、米、小麦の単位面積当たり収量は、既に国際的にも高い水準となっており、今後の伸びはそれほど期待できないであろう。
 トウモロコシについては、まだ上限に近いとは考えられないが、実態は停滞気味である。
 それぞれの具体的な、生産性拡大の可能性については、国内生産地の気象、水利、土壌等の条件を勘案して検討する必要がある。

 
 また、今後の生産の推移については、華北等での水不足の影響が大きな不安定要素となっている。
 この場合、小麦、トウモロコシの生産に大きな影響を与えることとなろう。
 なお、水不足に関しては、都市用水、工業用水に比して農業用水の対価支払能力は極めて小さいため、優先度が低く扱われざるを得ない。
 さらに、今後の地球温暖化の影響も懸念される。


作付け面積の推移
 一方、各作物の作付面積については、米は減少気味に、小麦は横ばいに推移している。
 これに対して、トウモロコシは拡大を続けている。


 省市区別に、3穀物まとめた作付面積の増減率と面積当り収量の関係を見ると、例外もあるが、生産性の高い地域での減少の傾向が強いように見られる。
 これは、3穀物の中では米の生産性が高く、これが華南沿岸省の経済開発の著しい地域と重なっているためである。

 このように、中国における土地利用の変化、作付穀物の変化は、食糧の需給バランスを厳しくする方向に傾いていると言えよう。



需要の拡大

人口の増加
 一方、食糧需要の変化に関しては、人口増加が確実に進み、今後とも需要が拡大していくことが見込まれている。


肉類の消費の拡大
 また、所得水準の上昇とともに肉類消費の拡大が進む。現在は、豚肉への需要が大部分であるが、今後牛肉等の需要も拡大していくであろう。
 このために飼料用として、一層多くの作物の需要が生じることとなる。


 ちなみに、省市区別の都市での一人当たり収入額と肉類への消費支出額にはほぼ比例的な関係がある。
 なお、穀物消費額に関しては、現在のところは、弾性値は1より小さいが、所得の増加とともに増加する傾向にある。ただし、肉類のように穀物需要への倍数的な効果はなく、あまり言及されない。

 
肉類輸入の急拡大
 一方、肉類の需要に関して、1990年代末に輸入が著しく拡大している。
 肉の種類別には、鶏肉等家禽類の輸入が特に大きく伸びているが、国内生産の拡大により輸出も同時に伸びている。
 豚肉についても輸入の増加が見られるが、国内需要の一層大きな伸びにより、同時に輸出を大きく減少させている。

 いずれにしろ、今後は、牛肉を含めて、肉類の消費需要が一層拡大し、輸入も増加していくものと見られる。
(統計データ)

(May.19,2003.Rev.)



需給動向

 中国は、これまでのところ、主として生産性の拡大で穀物の増産を実現し、概ね需要を満たすようになっている。この結果、現在の直接的な消費量の拡大は、飢餓的状況の解消ではなく、概ね人口増加に見合うものとなっていると考えられる。
 しかし、一方で所得水準の増大に伴って、肉類生産用飼料穀物の需要が大きく拡大し続けている。
 これに対して、これまでのような着実な生産拡大の継続については、生産性向上の限界、土地利用の変化、水資源の枯渇、さらには地球温暖化にともなう異常気象といった懸念がある。
 こうした中で需給関係が崩れ、不足分として、穀物あるいは肉類が世界市場に求められ、混乱を招く可能性があることは否定できない。

 中国政府自体は、今後とも食糧増産に積極的に努力していくとしており、たとえ不足したとしても、5%以内に留める構えであるといわれている。


 仮に、世界の食糧市場に新たに大きな需要が発生した場合、結果しては価格メカニズムで需要が抑制され調整されていくこととなろう。
 しかし、世界の所得配分の格差は著しく、最貧層を一層の困難に陥れることとなる。これは、かつて1994年に、日本が米を大幅輸入した際に明らかになった現象であり、さらに現時点でも日常的に起こっている事態だとも言える。
 こうした意味で、中国はもとより、日本、韓国においても、食糧生産の維持拡大にはそれなりの見識ある姿勢が求められている。



(統計データ)

参考文献等
レスター・R・ブラウン、ハル・ケイン(小島慶三訳)「飢餓の世紀」ダイヤモンド社1995年。
Worldwatch Institute "China's Water Shortage Could Shake World Food Security",1998
The Grain Issue in China,1996(中国農業白書)

情報源
FAO統計

関連項目に戻る

(Nov.30,2001.)