拡大する食肉消費
−−所得水準の向上と食生活の改善−−

 所得水準の向上と食生活の改善の関連性を見る場合、一人が一日当たり摂取する熱量や栄養素から分析することが一見論理的であるが、穀物や肉類の消費量から分析した方が理解がし易いようである。

穀物摂取量

 まず、所得水準と穀物消費量(ここではFAOデータベースにおける一人当たり供給量を利用)の関連性については、一人当たりGNPが100US$に近い諸国では消費量が低いが、それ以外では、所得と消費量の関連性は見られない。
 むしろ、1,000US$を超えると消費量の多い国が減少している。これは、食糧全体が穀物以外により賄われるとともに、労働による熱量需要が減少するためであろう。


 日本、韓国、中国における、過去20年間の穀物消費量の推移を見ると、日本については、既に国際的にも低い水準にありながら、漸減を続けている。
 韓国については、1990年前後に大幅の減少を含め、全体として漸減を続けている。
 中国については、'80年代当初には増加が見られたが、その後漸減を続けている。


食肉等摂取量

 食肉消費については、所得水準の増加とともに、著しく拡大する傾向がある。ちなみに世界各国の所得水準と一人当たり食肉消費量について、所得を対数尺度で取った場合、R2=0.677の高い相関となる。
 ただし、モンゴルについては、その生活文化から、食肉消費量は所得水準に比して高い。また、中国も相対的には高い位置にある。
 食肉で穀物と同水準の熱量を得るためには、その生産に一層の土地・水が必要である。このため、所得水準の向上が食糧需給の困難化をもたらすとされている。
 なお、ノルウェイ、日本、韓国などについては、魚によって代替され、所得水準に比して食肉消費量は少ない。


 過去20年間の食肉消費量の推移を見ると、日本については、'90年代半ばまで増加を続けていたが、それ以降は減少に転じている。これは一般に健康への配慮 (過食への反省)が強まったためと捉えられよう。
 韓国については、著しい増加を続けている。'90年代末に停滞に転じた様相も見られるが、今後の推移を見る必要があろう。
 中国については、著しい増加を続けており、さらに'90年代末に増加速度を強めた様子が見られる。また、水準としては、既に日本、韓国を上回っている。


 なお、中国の食肉消費は、現在、豚肉が太宗を占めるが、牛肉の伸びが著しい。日本や韓国と比較してみても、今後、豚肉から牛肉への移行が相当程度進む可能性があるといえる。
 これは、生産に必要な穀物量を一層拡大させる要素である。


 他方、水産物生産の推移について見ると、中国の生産量が1980年代から急速に拡大しており、2001年には世界全体の1/3を超えている。
 これに対して、日本では1980年代末から急速に減少しており、韓国でも1990年代から減少を続けている。


 中国の生産については、海産魚については、1990年代末以降概ね横ばいで推移しているが、淡水魚が増加し続けており、総業業生産量も増加している。

 →詳細情報(世界の60%を占める中国の淡水魚生産)


 魚の消費量の所得水準との相関はR2=0.306で肉ほど高くはない(1997年FAO統計による)。
 消費の多寡は、経済開発の段階というより、漁場の存在と食習慣である程度決まっている面が多いものと考えられる。
 この意味では、世界の食糧問題の緩和策として、漁業資源の開発の可能性も考えられよう。
 しかし、地球温暖化で海流までに異変が起これば、漁獲高の激変が起こる可能性があることにも留意しておく必要があろう。

(漁業統計データ)

(Ja.17,2006.Rev.)



熱量摂取量

 世界各国での所得水準の向上にとなう食生活の改善を包括的に捉えるには、一人当たり熱量摂取量を利用することができよう (ここでは、FAO統計の一人当たり供給量を利用)。
 飢餓的状況からの脱出、さらに肉体的労働に見合う熱量の摂取という意味での増加は自然な行動であろう。しかし、増加の趨勢は高所得国まで続き、通常の健康維持から見て余剰摂取の傾向があるものと懸念される。高所得国では肉体的労働からの熱量必要量はかえって減少しているはずである。

 摂取熱量の内訳は、植物性と動物性に分けて見ることができるが、内容的には、先に述べた、穀物及び食肉の消費量の状況に対応している。
 植物性については、所得の最も低い国々では、所得の増加とともに摂取量も増える傾向がみられるが、それ以上の国々では増加の一定の傾向はなく、全体としての相関係数(線形回帰)も低い。むしろ摂取量が最も多い国は1,000$/人近辺に分布しており、以降所得が上がるほど摂取量の大きな国は少なくなる傾向が見られる。
 一方、動物性熱量の摂取については、所得の増加とともに増加する傾向が明確にある。ただ、こうした中で、日本及び韓国は所得水準に比して動物性熱量の取得量は少ない。これに対して中国では、所得水準に比して若干多く、3国は同程度の摂取量となっている。


 日本、韓国、中国の熱量摂取量の最近20年間の推移を見ると、日本については、1980年代には動物性の摂取量の若干の増加が見られ合計も増加していたが、'90年代は安定している。
 韓国については、'80年代は動物性、植物性ともに伸びていたが'90年代に入り動物性の伸びは鈍化し、植物性が減少しているため合計では安定して推移している。
 中国については、動物性が急増を続けるとともに、植物性も漸増しているため、合計は'80年代後半の若干の停滞を除き急速に伸び続けている。

 

蛋白摂取量

 世界各国の蛋白質の摂取量については、植物性は所得水準との関連性は見られないが、動物性については、所得水準の上昇とともに増加している。
 日本、韓国については、魚類の消費により、熱量や次の脂肪ほど世界水準から乖離して低くはない。


 蛋白質摂取量について、日本では、'80年代は増加傾向が見られたが、90年代に入って停滞気味で推移し、最近は減少傾向を見せている。
 韓国については、植物性の漸減と動物性の急増が重なり、合計では漸増が続いている。
 中国については、植物性の漸増と動物性の急増で、合計は著しく増加し続けている。しかし、未だ日本の水準には達していない。


脂肪摂取量

 世界各国の脂肪の摂取量については、動物性が所得水準と強い関連性を持つとともに、植物性もある程度の関連性を持っているため、合計では特に強い関連性がある。
 なお、日本、韓国の摂取量は、所得水準に比して、特に低い位置にある。


 脂肪摂取量について、日本では'80年代に急速に増加していたが、'90年代においても漸増を続けている。ただし、植物性が着実に増加しているのに対して、動物性は近年減少傾向を見せている。
 韓国は、着実に増加しているが'90年代に若干速度が低下し、この結果中国を下回るようになっている。
 中国は、着実に増加を続け、特に近年は動物性の増加が急速になっている。この結果、合計では日本とほぼ同水準に達している。


 以上のように日本、韓国、中国の食糧摂取量について熱量、栄養素から見ると、いずれでも中国が急速に伸び既に日本の水準に達しようとしているが、日本は所得水準から見て相対的に摂取量が少なく、中国は、日本を越えてさらに増加していくものと見られる。

情報源
FAO統計

(統計データ)

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(Mar.13,2002.Rev./Dec.08,2001.Orig.)