中国・韓国・日本の耕地の減少
−−生産性の高い農地の減少−−


中国

 中国の耕地の総面積は、1990年代を通じ安定していた。
 しかし、黄河の断流が年々厳しくなるなど、長期的には、砂漠化による耕地の減少が懸念されている。

 一方、現時点では、経済開発の著しい地域での耕地の転用が進んでいる。


 現在、経済開発の進展のもとで耕地の減少が進んでいる地域は、主として水稲栽培が行われており、中国全体の中では、農業の生産性の高い地域と重なっている
 さらに、今後、農村地帯の経済開発戦略として小都市の育成が掲げられているが、優良農地の一層の減少が懸念される。


食肉指向
−−穀物別作付面積の変化−−

 最近の穀物作付面積の変化を省市区別に見ると、まず華南地域で合計面積の減少が目立つ。この結果、水稲の作付面積が特に減少している。
 このような作付け面積の減少はについては、経済開発が進む中で、都市的利用への転換が起きているものと考えられる。
 一般に、水利がよく、平野が広がった地域は、海岸線の沖積平野であることが多く、都市的開発にも有利な地域となっている。農業と都市の競合では、農業的利用が不利であり、その縮小は避け難い。これは日本でも起きている現象である。
 中国の第10次5ヵ年計画では、「基本農地を立派に保護しなければならず、決して耕地を非農用地に無断変更することは許さない。これは超えてはならない『警戒ライン』である。」としているが、趨勢を変えることは困難であろう。

 他方、華北、東北地方では、多くの省市区で合計面積が増えているが、その多くはトウモロコシの生産に向けられている。
 これは、生活水準の向上とともに食肉への需要が高まっているためと見られる。ただし、新たに拡大される耕地は土地生産性が限界的な位置にあり、このためにトウモロコシの土地生産性の向上が停滞しているものと見られる。
 なお、小麦の作付面積が減少している省区も多いが、これはトウモロコシがより高収益となるためか、あるいは水供給の不都合か、それとも別の要因があるのか実態を検討する必要がある。
 また、ここでの検討は、1997年、1999年の2時点の比較に留まっており、趨勢に乗ったものか別途精査しておく必要もある。具体的には、小麦の作付面積の減少が若干過大に現れているとも見られる。

 中国全体としては、このような作付耕地の減少と増加の相殺があり、中国全体としての3穀物の作付面積は、若干の増加となっている。
(統計データ)

(Feb.22,2002.Add.)



韓国

 韓国は、最近において、年々1%強の耕地の減少が続いている。特に、アジア金融危機に至る直前の1990年代半ばの耕地の減少速度は著しかった。
 地域別には、大田、大邱、釜山の広域都市で耕地の減少が急速に進んでいる。その他各道でも減少は大きく、ほとんどの地域で年率1%強の減少となっている。
 なお、南部の済州道は耕地がむしろ増加しており、全羅南道についてはほぼ横ばいで推移している。


優良農地の一層の減少が懸念
−−韓国の耕地面積の推移−−

 世界の中でも、韓国及び日本の耕地は、著しい速さで減少していると指摘されている。
 韓国の耕地は、特に1990年代半ばに著しい減少を見せたが、その後1997年以降の減少幅は、年当たり0.5%程度で推移している。
 しかし、これは経済の低迷の中での動きであり、景気の回復とともに再び減少幅が大きくなるものと懸念される。
 特に、ソウルを中心とする都市圏での住宅事情は厳しく、これに対して土地利用規制を大きく緩和させる動きもあり、耕地の減少を助長するものと見られる。


 耕地の減少を作物の作付面積で見ると、その太宗は食糧穀物で占められており、耕地面積の減少の内容も食糧穀物の作付け面積の減少で把握することができる。


 食糧穀物の作付面積の変化について、1990年代当初までの推移では、麦類の減少が主体であり、その他豆類、薯類、雑穀類の減少も見られた。これに対して、米の作付け面積は概ね同水準で維持されてきていた。
 これは、地域的に稲作田の他用途への転換があっても、国全体としては、灌漑等の充実により、畑から水田への転換があって補われてきていたと見られる。
 しかし'90年代に入って、畑作面積は残り少なくなり、水田の減少を補うこともできず、米作面積の急激な減少が起こっている。'90年代末には、減少が留まっているが、経済の活性化とともに再び減少し始めることが懸念される。
 なお、この作物の転換の具体的な状況については、地域毎の事情があることに留意しておく必要がある。


 耕地面積の推移を広域都市地域を含めた9つの道別に見ると、済州道を除きいずれの道でも著しい減少が続いている。ただし、全羅南道については、1990年代において概ね同水準を維持している。


 韓国全体の耕地面積の変化について、1990年代を前後半に分け、道別の寄与度で見ると、済州道及び全羅南道を除き、いずれの道の減少幅も大きく、特に'90年代後半では、概ね同水準の減少率となっている。
 これは、都市的用途への転換があるばかりでなく、過疎化する地域での耕作放棄的な転換も著しく進んでいることを示しているものと推測される。


 ちなみに、民有地の地目別面積の変化を見ると、京畿道(ソウル、仁川を含む)については、耕地の減少に相応して居住用地や道路用地が拡大している。
 これに対して、例えば、江原道については、耕地の減少に見合うような都市的利用の拡大はない。


地域別作物別耕作面積の推移
 1980年代において、済州道を除き作付面積合計が減少しているが、これは米以外の面積であり、京畿道では豆類、江原道では雑穀類、忠清北道では食糧穀物以外、その他の道では麦類を主体に作付け面積が減少している。これに対して、米作面積は、韓国全体で若干増加気味で推移しているが、これは、忠清南道や全羅北道での増加が貢献している。
 '90年代に入ってからは、いずれの道においても米の作付け面積が大きく減少し始めている。'80年代に麦の作付面積が減少し米の面積を増やしていた地域においても、既に麦の作付面積が極めて小さくなっており、米に転換する余力はなくなっている。
 なお、済州道では、総面積自体が小さいく、また当初から米の作付はほとんどなく、現在は、食糧穀物以外の作付面積が拡大している。


 以上のように、韓国での耕地面積の減少には、単に都市的用途への転換ばかりでなく、生産性の低い限界的地域での農業生産自体が成立しなくなり減少している面もある。
 農業生産が都市的生産・都市的活用に競争できないだけでなく、所得形成力等からそれ自体として存立し得ないことは、食糧面からの安全保障を危うくしており、何らかの対策が求められているといえよう。
 具体的には、食糧備蓄、農地保全のためのデカップリング、農地転用の規制など最適なポリシーミックスを明確に展開していくことが必要であろう。
 なお、こうした現象は、日本でも見られ、同様の課題を抱えている。

韓国地名のアルファベット表記
表記方には一定のものがない。
例えば、同じ統計表の中で、全羅北道、全羅南道をそれぞれChollabuk-do,Jeollanam-doと表記しているものがある。
また同じ統計書の中で、京畿道をGyeonggi-do及びKuonggi provinceと表記している例もある。
本サイトでも、とりあえずは統一せず、引用のままとなっている。

(統計データ)

(Feb.27,2002.Add.)




日本

 日本においても、全国全ての都道府県において、1990年代を通じて、年々1%弱の耕地の減少が続いている。
 各地域の減少率からは、都市化による転用と、過疎化による放棄等の要因があると見られる。このうち、都市化に伴う転用は、一般に平野部の生産性の高い農地であることが予想される。
 こうした農地の減少については、米の過剰から生産調整がなされており、農地の保全意欲が湧かないといった背景がある。しかし、世界の食糧需給状況を踏まえた、食糧安全保障の観点からは、極めて危機的な状況にあるといえよう。


都市的利用と耕作放棄で減少
−−日本の耕地面積の推移−−




 日本の耕地面積については、北海道を除き、長期間にわたり減少が続いている。特に、1990年代に入って、東北、九州、関東東山などでの減少速度が著しくなっている。また、北海道についても減少に転じている。
 耕地の減少を田と畑に分けて見ると、総じて、畑の減少速度が大きい。'90年代に入ってからの年々の減少幅の拡大も畑について見られる現象である。
 畑をさらに細分して見ると、この大幅の減少は、主として果樹園であり、その産地である関東東山(長野、山梨を含む)、九州、東北で減少幅が大きくなっていることが理解できる。





 耕地の人為的な壊廃の主な原因については、都市的利用への用途転換と経営難等からの放棄に分けられる。
 耕作放棄の詳細な理由は明らかでないが、各地域を3つのパターンに分けて捉えることができよう。
 東海、北陸、近畿については、主として都市的利用への転換が求められて壊廃が進んでいる。
 中国、四国、北海道、九州、東北については、主として経営が困難となって壊廃されている。これは経済的理由ばかりでなく、従事者の高齢化も含まれよう。
 関東山東については、都市的利用への転換とともに経営困難からの壊廃が含まれており、さらに地域の都市化の波の中で経営意欲を失い都市的利用に先行して放棄されている耕地も含まれていると見られる。


 このように日本においても、韓国同様に、食糧の安全保障が危うくなっており、早急な対策が必要と考えられる。

(統計データ)

(Mar.01,2002.Add.)


情報源
中国国家統計局
韓国統計庁
農林水産省統計情報

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(Jul.11,2001.)