所得水準と必要耕地面積
−−試算フレームの検討−−

 一般に、穀物等の植物性食糧からの一人当たりカロリー摂取量は、所得水準に関らず比較的安定している。ただし、ごく所得水準が低い地域では飢餓的状況からの脱出段階で若干増加する傾向が見られる。
 しかし、所得水準の向上にともなって、動物性食糧からのカロリー摂取が増加する傾向がある。動物性の場合、耕地でその飼料穀物を生産するが、その量は動物性食糧から得られるカロリーの何倍かを必要としており、耕地面積の追加的必要量は急増することとなる。
 必要耕地面積を積算する際には、一人当たり摂取カロリー量、穀物当たり平均カロリー含有量、食肉の飼料生産性、穀物の土地生産性などのパラメーターが必要であり、これを一意的に決めることはできない。
 ここでは、こうした検討のためのスタート台として、積算のためのフレームを提示する。今後は、各パラメータの妥当性を検討しつつ、内容を深めていく必要がある。


LN(所得)の係数定数相関係数(R2)
植物性76.561636.10.1303
動物性195.5-951.770.7420
合計272.1684.280.6521
合計植物性換算780.3-1790.30.7871
 所得水準とカロリー摂取(供給)量の相関を世界123ヶ国のデータで見ると、摂取量全体で相関係数(自乗値)が0.652と一定の関連性がある。このうち、動物性のみでは相関係数が0.742となり高い関連性が見られる。これに対して植物性については、0.1303でありほとんど関連性はない。
 動物性食物の生産には、その飼料として最終取得カロリー量の何倍かの穀物等の生産が必要である。この比率については、鶏肉2倍、豚肉4倍、牛肉7倍などといわれている。
 ここで、動物性カロリーを一定の比率で穀物等に換算したカロリーと植物性のカロリーの合計値(「オリジナル・カロリー」)と所得水準との関連性については、動物性カロリーの換算比率3.6倍で、相関係数(自乗値)が0.7871と最も高くなる。これは、豚肉を若干下回る値であり、とりあえず以下の試算ではこの比率を用いることとする。


カロリー
食糧
飼料
穀物
穀物
当たり
カロリー量
面積
当たり
生産量
必要面積
Cal/gkg/aa/Cal/year
植物性小麦2.67 400.00342
動物性トウモロコシ2.91 500.00251
(0.00905)
FAOデータベース、中国統計局統計年鑑から引用
 次に植物性カロリーとしては、仮にその全てを小麦から取得することに、また動物性カロリーの生産には仮にその全てをトウモロコシで行うことにする。
 このカロリーの確保に必要な穀物量をFAOデータベースの中国に関する統計から援用し、それぞれ2.67Cal/g、2.91Cal/gとする。また、その土地生産性を中国統計局統計年鑑のデータを参考にそれぞれ40kg/a、50kg/aとする。
 これらの仮定の結果、年間1期作を想定し、植物性カロリー1g/dayの取得には、0.00342a、動物性カロリー1g/dayの取得には、0.00905aの耕地が必要となる。


 所得水準と摂取カロリーの関連性、及び摂取カロリーと耕地必要面積の関連性を前提として、所得水準と耕地必要面積の関連を描くことができる。
 上述のような仮定では、所得水準が倍になると一人当たり必要耕地面積は、1.4a増えることとなる。

 中国が年率7%の経済成長を続けると、約10年間で所得水準は倍増する。この場合、約12億人の食生活改善(食肉消費の拡大)にとって追加的に必要な耕地の面積は、170,000km2となる。これは現在の耕地面積 1,240,000km2の10%を上回る。
 現実には、このような耕地の拡大は困難とみられ、食肉の輸入の拡大等が予想される。
 こうしたシナリオの詳細な検討については、今後、別途行うこととしたい。


(統計データ)
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(Mar.08,2002.)