世界各国のCO2排出量の推移
−−地域ごとにダイナミックに変動している排出−−

推移
 世界全体での化石燃料の消費、燃焼による炭酸ガスの排出量は、1999年で6兆t(炭素等量)強であったと見積もられている(The US Department of Energy,炭素等量は、炭酸ガス重量の12/44(約1/4)に相当する。)。これまで、1980年代半ばから後半にかけ著しく増加したが、'90年代に入り一旦横ばい状態となった後、'90年代後半に再び若干の増加を見せ、'90年代末には逆に減少に転じている。

 炭酸ガスの最大排出国は、アメリカであり、これに中国、さらに旧ソ連地域(ロシア一カ国でもこの位置)が続いている。
 このうち、アメリカの排出は、最近の20年間は、ほぼ拡大を続けている。
 これに対して、中国も拡大を続けていたが、'90年代末には減少に転じている。同時期の世界全体の減少は、中国の動向が世界の動向を決めるという証となっている。
 他方、旧ソ連地域については、'80年代末まで著しい増加を示していたが、ソ連崩壊後は、急速な減少となっている。'90年代の世界全体の横ばいはこれによるものである。日本は、この減少分を日本の炭酸ガス排出削減の代替として購入しようとしている。制度的には可能で、国際政治の中では当然の行為とみなされるとしても、正当か否かには疑問が残る。日本が本当に目指すべき生き方とは乖離があるのではなかろうか。


 3大排出国に次ぐのは、日本であり、景気の停滞もあり、'90年代半ば以降は、停滞気味に推移している。
 さらに続くインドは、著しい拡大を続けている。
 これに次ぐドイツについては、'90年前後に大幅に低下し、その後も減少気味で推移し、インドを下回るようになった。これは、東西ドイツの統合によるものといえよう。
 イギリスを始めとする西ヨーロッパ諸国については、横ばいないしは低い伸びで推移している国が多い。
 逆に、カナダ、オーストラリアについては、増加が続いている。
 また、韓国、メキシコ、南アフリカ、ブラジル等については、いずれも急速な増加を見せている。なお韓国については、'90年代末の経済の混乱の中で、一旦減少を見せている。


 '90年代を通じての各国・地域の炭酸ガス排出量の変化を世界全体の増加の中での寄与度として見たものが右図である。
 伸び率が高かったのは、経済成長の著しかった韓国、インド、その他のアジア地域であり、これに中東諸国やブラジルを含む中南米諸国が加わっている。
 アメリカは、日本や西ヨーロッパ地域と同水準の伸び率であったが、既に大きなシェアを持ち、増加量としては、最も大きかった。
 中国は、著しい経済成長に比べれば、比較的低い伸び率であったが、増加量としては日本を上回っている。
 他方、旧ソ連を含む東欧地域、及びドイツの減少は大きく、これによって世界全体の排出量の増加は大きく抑制される結果となった。

 このように1990年代の世界各国・地域の炭酸ガスの排出量の変動は、それぞれなりの特徴ある動きを示している。


構成
 以上のような推移の結果、1999年の排出量の世界各国・地域の構成比では、アジア・オセアニア地域(中東・ロシアを除く)、北アメリカ地域、ヨーロッパ地域(ロシアを含む)それぞれのシェアは、ちょうど同じく、29%となっている。


1人当たり排出量
 1人当たり排出量については、まず、アメリカ、カナダ、オーストラリアが、年当たり5t/人で突出して多い。
 次いで、2t/人強で多くの先進国が並び、2t/人弱で中東諸国がある。
 その他の発展途上国については、中国が約0.5t/人、インドが約0.25、その他のアジア・オセアニアが約0.4t/人、アフリカが約0.2t/人となっている。
 このように人口規模の大きい、中国、インド、その他のアジア及びアフリカでの排出量が少ないために、世界全体での平均排出量は約1t/人に留まっている。

 今後、人口規模の大きな発展途上国の経済開発が進み、1人当たり排出量が拡大すると、世界全体の排出総量は膨大なものとなる。先進国に匹敵する排出量になれば、全体で2倍強に、さらにはアメリカに匹敵する排出量になれば、5倍強という計算になる。これが「地球全体の人が現在のロスアンゼルスの人並みの生活をすると地球が5つ要る」という言説になっているのであろう。
 ちなみに自動車による炭素排出量については、ガソリンの炭素含有量が0.63kg/リットルであり、自動車の走行距離、燃料効率から概算できる。


 1人当たり炭酸ガス排出量の少ない国から順に並べ、排出総量を累計したローレンツ曲線を描いたものが右図である。
 これに基づき、計算したジニ係数は、0.40となる。
 世界の所得水準を国単位に集計したジニ係数は0.70であり、購買力平価で評価し計算しても0.52であるが、排出量のジニ係数はさらに低い(平準度は高い)。
 これは、経済開発の遅れた国ほど、エネルギー効率の悪いシステムを利用しているためと考えらる。

 排出量平準化の制度、メカニズムが世界に存在する訳ではないが、発展途上国による同等の排出権の主張を先進国は拒否できないであろう。


GDP当たり排出量
 世界各国のGDP当たり炭酸ガス排出量については、まずソ連及び東欧諸国の値が著しく高い。これは、国家体制崩壊後の経済情勢の悪化が反映している。
 ついで、中国、インド、中東諸国等の値が高く、その他アジア・オセアニア等の発展途上国は、これに次いでいる。
 先進国の値は、いずれも世界平均以下ではあるが、中では、アメリカ、カナダが平均値に近く、排出総量の中でも大きなウエィトを占める結果となっている。なお、韓国の排出は世界平均とほぼ同水準となっている。


 以上に述べた世界各国・地域の炭酸ガス排出の特徴は、1人当たりGDPと1人当たり排出量の関係として分類することができる。
 先進国については、アメリカ、カナダ、オーストラリアを含む1人当たり排出量の多いグループとその他の少ないグループに分けられる。
 また、ロシアを含めた東欧諸国は、GDPの水準が先進国グループより低く、離陸後の発展途上国に相当しているが、1人当たり排出量は先進国グループに匹敵している。
 多くの離陸後の発展途上国の1人当たり排出量については、先進国グループより少ない。さらに中国・インド等の1,000ドル/人以下の発展途上国の1人当たり排出量は、他の発展途上国グループと同水準あるいは一層下回る水準にある。
図示した地域の分割が恣意的であるため、回帰曲線も恣意的なものとなっていることに留意が必要である。


 参考;世銀データ なお、炭酸ガス重量は炭素等量の約4倍。

(統計データ)

参考文献等
IPCC第3作業部会編、天野明弘・西岡秀三監訳「地球温暖化の経済・政策学」中央法規出版(株)1997年
環境省編「環境白書」各年
情報源
The US Department of Energy Web site

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(Nov.09,2001.)