第3章 新たな共生への道
第1節 市場原理による共生
―雁行型発展から競合型発展へ―
要旨
東・東南アジアの経済発展について、かつて20世紀中においては、古典的な比較優位論に基づく垂直分業が展開し、日本を先頭とした雁行型発展が進んでいると捉えられてきた。
しかし、開発の進展とともに、また情報技術等に支えられた企業活動のモジュール化とともに、業種内の生産工程による分業が見られるようになってきている。
さらに今後は、発展途上国における高学歴者の集積等を基礎とした競争力の向上により、各国・地域が多様な業種を住み分けていくこととなろう。
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(1)垂直分業による雁行型発展
中国を含む東アジア及び東南アジアのこれまでの経済発展は、各国地域の発展段階により労働集約的業種から技術集約的業種までを垂直に分担したものであった。
このため、当地域の経済発展は、日本を先頭とした雁(がん)行型の発展であるとされてきた。
先進国を追った発展は、既存技術の活用により開発ステップが圧縮でき、それぞれの経済成長は著しく速いものであった。
こうした中で、日本を含む世界の先進国は、労働集約的な製品の輸入の増加があり、国内の業種調整が進められ、一方で、各企業は、発展途上国への直接投資、企業進出を図ってきた。
さらに、各国の経済の発展段階の進捗とともに、加工組立型産業等も成長し、貿易構造も次第に変化し、垂直分業的パターンは次第に崩れてきた。
参考;→旧稿
(2)経済発展による雁行型発展の変質
一方、こうした変化と同時に、20世紀末には、先進国からの資本財の輸出も急増している。
そして、東・東南アジア地域の雁行型発展も概ね20世紀中に終焉したと認識されている。
なお、中国の産業構造については、国内に発展段階の広がりがあり、繊維産業をはじめとする労働集約分野と機械産業といった技術集約分野の双方で国際競争力を高めていることを理解しておく必要があろう。
21世紀に入ってからの東・東南アジア地域の産業構造・貿易構造については、個々の企業の利益追求の行動の中で実現してきているとの解釈がある。
一連の生産工程の収益力(バリューチェーン)については、開発・企画の段階及びアフタケア等を含む営業・販売の段階で収益力が高く、生産工程の両端が持ち上がったスマイルカーブを描くとされる。そして情報技術の進展等により各生産工程の立地を分割すること(モジュール化)が容易となり、それぞれの過程の最適立地を図っているとされる。
具体的には、収益力のある、スマイルカーブの両端を先進国で担い、中間の製造を主体とする部分を発展途上国に委ねいているとされる。
例えば、パソコンが太宗を占める事務機器の日本の輸入は、中国からの輸入が急増している。
これと同時に、半導体等の日本から中国への輸出も急増してる。
ちなみに、2003年からの日本経済の景気浮揚は、このような中国からの輸入「特需」によるという認識もある。
(1)創造的プロダクトサイクルの追求
このようなスマイルカーブに基づく理解は、21世紀初頭の東・東南アジア地域の産業構造・貿易構造の解説、あるいは企業行動の解釈としてそれなりの有効性はあろう。
しかし、発展途上国の就業者の高学歴化は急速に進んでおり、特に、中国では、高学歴者の人数自体では既に日本を凌駕しており、早晩こうした構造も解消され、事業内容の競合が一層厳しくなっていくものと考えられる。
このため、今後、各企業は、創造的な事業を継続的して展開していくことが必要とされている。
(2)産業クラスターの形成
経済のボーダレス化とともに企業経営の国際化が進み、企業間競争が厳しくなっており、企業活動の基礎となる競争優位の質と程度がより厳しく問われている。このため各国・各地域で持続的な経済活動が展開していくよう、それぞれの得意な産業分野(ニッチ)を形成し、遠隔地の競合者には模倣できない地域なりの競争優位の条件を整備していくことが求められている。具体的には、産業クラスターの形成等として議論されているところであり、多様な関係者の努力の集積の中で、一定分野の業種に関連する研究活動・事業活動の集積が自ずと図られていくことが必要であろう。
このような産業構造の変化の方向が見えてこそ、当該地域での自由貿易協定(FTA)も一層意味のあるものとなってこよう。そして、長期的には所得の平準化も進んでいくものと考えられる。
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(May.25,2004.Rev./Aug.19,2002.Orig.)