過剰開発
−−地球が3つ要る−−

 20世紀後半、多くの先進国は、世界大戦からの復興に引き続き、目覚しい発展を遂げた。
 これに対して、発展途上国については、トルーマン大統領就任演説(Point Four提案、1949年)のアメリカを始め、先進各国により精力的な開発支援が宣言され、途上国が新たな発展により先進国と並んでいくと期待された。しかし、結果的には、限られた一部の国は経済的離陸を果たしたが、多くの国は、開発努力が実を結ばず、かえって社会の崩壊を招いた様相がある。
 こうした中で、先進国グループの生産・消費する食糧、エネルギー等々、そして排出する温暖化ガスは、著しく大きなものとなっており、既に、人類全体が同水準の経済活動を行うには、地球が幾つも必要となる状態に達していると考えられている。いわば、過剰開発の状況である。

 別途考察したように、世界各国の所得(生産)を購買力平価で評価し、その配分の平準度としてジニ係数(不平等度)を求めると、各国内に格差がないとした場合、0.52となる。
 ここで、世界が先進国と発展途上国の2つに分かれ、それぞれの内部では所得格差がなく、全体としてのジニ係数を0.5と仮定して、世界全体の所得の平準化について、モデル的な検討を行ってみよう。
 ジニ係数0.5とは、高所得階層(先進国)の人口が全体の25%で、総所得額が全体の75%であることに相当する。逆に低所得層(発展途上国)の人口、総所得額はそれぞれ世界全体の75%、25%となる。
 この場合、双方の所得格差は、9倍である。
 ここで、低所得層の所得が9倍となり、高所得層の所得水準となって平準化するとすれば、世界全体の所得は3倍に拡大することとなる。
 例えば、仮に炭酸ガスの排出量が生産額(所得額)に比例するとして、現在の世界全体の炭酸ガスの排出量が限界にきているとすれば、これは、地球が3つ必要なことを意味している。「地球上の全ての人がロサンジェルスに住む人と同じ生活をするには、地球が5つ要る」という言説があるそうである。
 これに対して、1つの地球の下で、世界の総所得額(生産額)を現在の水準に留め、なおかつ世界の所得を平準化するとした場合、低所得層の所得は3倍に拡大し、高所得層の所得は1/3に縮小することになる。
 このようなモデルは、人類が居住できる地球の持続可能性を検討する際、その出発点としての意味を持っている。技術革新等により生産額当たりの地球への負荷の削減に努めるとしても、これを超えた何らかの新たな対応が求められれていることは間違いない。


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(Sep.12,2001.)