第3章 新たな共生への道

第4節 人道的支援による共生

要旨
 世界各国の生活水準(所得)の格差は著しい。現在のところ、各国自らの努力はもとより、国外からの多様な支援を得たとしても、格差が解消されていく目途はほとんどない。さらに、これを積極的に是正していくべきという、各国が遵守せざるを得ない正義論も我々は持ち合せていない。
 国際的には、このための多様な会議が開催され議論されつつあるが、現実には、功利的な国際間の駆け引きに委ねられているといえよう。
 このため、国際的な格差解消のための諸国の行動は、各国の倫理観をどの程度の高みに置くかに掛かっているといえよう。

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1.困難な離陸

 第二次世界大戦後、ヨーロッパ、日本等の復興とその他多くの発展途上国の経済開発が一斉に着手された。また、かつて植民地であった地域も順次独立を果たしていった。
 このうち、先進国の復興は順調に進んだが、発展途上国において新たに着手された経済開発は、必ずしも順調には進まなかった。

 このため、1960年代には、世界の南北問題としてその解決の重要性が提起さている。そして東西冷戦での自陣営への取り込みの動機もあり、国連開発の10年などの提唱の下で先進国による発展途上国への支援が展開された。

 しかし、これまでに経済的離陸を果たした発展途上国は、東、東南アジアを中心とした一部の国に限られ、多くの国は、停滞したままとなっている。さらには、死亡率の低下が進み人口圧力の下で一層厳しい状態となっている国も多い。

 こうした中で、ソ連邦の崩壊もあり、先進国から発展途上国への支援は、その熱意を失いつつあるように見られる。

 この結果、世界の所得格差を各国内の格差をも含めて試算すると、世界全体の1割の人が世界全体の所得の9割を得ることに相当する格差の状態に至っている。(実際に1割の人が得ている所得は約7割。)

 こうした中で、最貧国が絶望状態から抜け出ることは、極めて困難であり、世界全体の社会的統合の危機をもたらし兼ねない状況である。しかし最貧国は国境を超えた影響力を行使することもできず国境内に封じ込められてしまう。決して肯定しないが、まさしくテロ行為などによって、世界の意識を喚起させるより他はない状況である。


2.国際社会での対応

 世界の最貧国がその状態から抜け出すためには、先進国の支援が不可欠なことは間違いない。
 しかし、現代の国際社会では、一定の領土の中に一定の国民を抱えた主権国家が存在しており、世界から各国の行動が指示されるという論理がない。最貧国の状況についても、まさに国境があるために、物理的に隔離されており、看過することができる。そして、今日の我々は、国境を超えて所得格差を是正すべきだという正義論などは、持ち合わせていない。

 実際には、人道的支援等として、飢餓・疾病、災害対策に関する緊急支援などが行われている。
 また、経済協力開発機構(OECD)、その他関連国際機関などでの協議を踏まえ、先進国が一定の方針を立て、政府開発援助(ODA)を実施している。さらに、2000年には国連ミレニアム・サミットが開催され、ミレニアム開発目標による国際的な共同行動が目指されている。
 しかし、経済が低迷するなかで、目標に向かっての進捗ははかばかしくない。また、離陸へ向かうための効果的な一定の方策がある訳でもない。

 基本的には、国際社会の中で、それぞれの国が、いかに尊厳ある存在となっていくかといった主体的な意思の下で、政治的に行動していくこととなる。
 このため、まさしく、国家として長期的な展望を持ち、戦略的に行動していくことが重要となっている。

 なお、個人的にあるいはNPO通じて、国際協力に参画していくことも可能であり、それなりの尊厳ある行動となろう。また、地域として広義の技術協力等を通じて国際的貢献を果たしていくことも可能であろう。



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(Dec.04,2003.)