日本海学調査研究委託事業

環日本海の玉文化の始源と展開 15.「会議のまとめ」


藤田富士夫
 

 東アジアの玉器文化は、環日本海をとりまく沿岸諸地域に広く展開している。それは、玦によって具現されており、その始源は中国東北部の興隆窪文化に求められている。
 それが時間を経て東アジア世界に拡散したものと推測されている。その始源と展開に関する学術的解明は、これまでも大きな課題であった。研究会議では、その具体的事例がとりわけ東アジア的視点から論じられた。それぞれ短い発表時間であったが、国内外の玉器研究の第一人者による精髄が凝縮した内容であった。その成果には大きなものがある。
 日本列島では、明治の終わりから大正の初め頃(1912年前後)にかけて大陸の玦に形態類似した「玦状耳飾」が注意されてきた。それが大陸からの伝播によるか、それとも列島での自生かについて論議を生んできた。藤田はこれまで伝播説についで主張してきているが、「発表要旨」を見るとそれをはるかに超えた内容となっている。そこには玦状耳飾の研究に環日本海(東アジア)的な視野での検討が欠かせないことが示されている。海外研究者の視点は、大陸とその周辺地域において地域差が認められることをも鮮明にしている。
 積み残された課題も多い。この会議によってすべてが解明された、というよりは問題点が見えてきたと言えよう。むしろ、研究のスタートラインに立ったとするのが正しいかもしれない。これまではそれすら茫漠としていた。この会議からヒントを得て、それぞれのゴールをめざしての助走が始まるとすれば会議担当者として幸いである。
 なお、本会議で発表された内容などを充実した「研究報告書」(論文集)を来春刊行する予定としている。今日の内容で言い足りなかったことなどについでは、そこで成されることとなっていることを付記しておきたい。

 謝辞:このたび日本海学推進機構(伊東俊太郎会長)の委託研究事業として、研究会議「環日本海の玉文化の始源と展開」を企画したところ、国内外の多くの親友、友人、研究者の心温まる支援を得、日本で初めての「玉器の始源と展開」に関する総合的研究会議を開催することが出来ました。小さな会議で、しかも皆様には短時間でご準備いただきましたがハイレベルの成果が得られたと自負しております。厚くお礼申しあげます。
 特に、香港中文大学の鄧聡教授からは全面的なご教示とご指導を賜わりました。国学院大学考古学研究案の吉田恵二先生と岩崎様には、郡先生とKIM先生のご来富に便宜を図っていただきました。「何か手伝うことがあったら言ってください」との申し出も何人もの方からいただきました。有難うございました。手作り会議で不手際も多いことを承知で、1人でやってみたい衝動があって泥縄で走りました。お許しください。
 おわりに、機会を作っていただいた日本海学推進機構をはじめ、ご発表頂いた皆様やご参加いただいた皆様に心から感謝申し上げます。
 (研究担当者:藤田富士夫)