日本海学調査研究委託事業
環境・資源・エネルギー問題への 日中間での共同対処に関する研究
日中産学官交流機構 報告書
目次
はじめに
I.寄稿「環日本海の持続的発展とバイオマス起業-政経分離と経済司令塔-」
富山大学教授・北京大学客員教授 清家 彰敏
1.はじめに
2.持続型発展経済への転換の原理
3.エネルギーをめぐるロシアの環日本海への影響
4.日本と中国の関係
5.政経分離と起業家主導循環型成長経済への移行
6.バイオマスヘの挑戦
7.環日本海周辺の起業リーダー
8.東アジアリサイクルシステムの日本化
9.おわりに 政治司令塔と経済司令塔の分離
Ⅱ.研究報告「中国におけるバイオマス利活用の状況調査」
日中産学官交流機構会員 李 大寅
1.バイオマス開発利用の政策と方針
1.1 日本政府の施策(バイオマス・ニッポン総合政策等)
1.2 中国政府の施策(中華人民共和国存生可能エネルギー法等)
2.バイオマス利用技術の概要
2.1 エネルギー利活用
直接燃焼、炭化、ガス化、液化、ほか
2.2 製品別活用
堆肥化、飼料化、再生木質素材、機能性食品
3.バイオマス関連における日中協力の可能性
3.1 バイオマスエネルギープロジェクト
3.2 中国と欧米の協力関係
3.3 日中協力の可能性
3.4 日中協力の重点分野
4.まとめ
4.1 日中バイオマス事業ネットワークのアクションプラン
Ⅲ.参考資料
1.バイオマス・エネルギー開発に関する資料(中国農業部)
2.中国再生エネルギー法案全訳
3.中国 北京出張報告
はじめに
本報告書は、日中産学官交流機構が財団法人とやま国際センター日本海学推進機構から受託した「環境・資源・エネルギー問題への日中間での共同対処策に開する研究」として、特に近年注目を浴びているバイオマス分野に焦点を絞り調査・研究の結果を取りまとめたものである。
中国は2005年3月、全国人民代表大会常務委員会において再生エネルギー法案を可決し、2006年1月1日からその実施に入った。長期にわたる高度経済成長の結果、エネルギー・資源の消費・輸入大国となった中国は、今後さらなる成長を維持し、増えつづける膨大な人口を養うため、石油エネルギーの確保とバイオマスを含む新エネルギーの開発への国をあげての取り組みを重要な国家戦略としている。新エネルギーの開発を促進するだけでなく、既存のエネルギー機関に新規開発のエネルギーの買取りを強制する今回の再生エネルギー法の施行は、この問題への中国の真剣な姿勢を窺わせるものである。
日本からも環境にやさしい新エネルギー開発に向けて歩みだした中国に協力しようとする声が上がりつつある。中国は海流、気流等の上流部に位置し、対馬海峡を介して日本海にも影響を及ぼすなど、環境面における利害を共有する日本にとって、この分野での日中協力は重要な意義を持つものといえよう。
本報告書ではこのような視点から、再生エネルギーの中から特にバイオマスを取り上げ、日中における利活用の現状を分析し、将来における日中協力の可能性について検討・提言を行った。
調査・研究にあたっては、将来の共同事業を見据え、中国農業部、環境保護総局等の関連機関との間に交流関係を確立した。また今後の日中間の研究・協力の一層の発展を目指し、本研究の一環として2005年11月15日には、農林水産省、中国環境保護総局等の主催で開催された『第1回目中バイオマスフオーラム』に共催者として参加した。フオーラムの実現の過程で日中の産官学各分野の力を結集した研究が行われ、バイオマスに間する中国側の現状と今後の課題を浮き彫りにすることができたばかりではなく、今後の日中間の共同事業ヘの足がかりをつかむことができたことも本研究の成果のひとつである。
本調査・研究が日中間における環境・資源・エネルギーの協力を促進し、環境にやさしい環日本海地域の実現の一端を担うことができれば望外のよろこびである。
本調査・研究の実施とフォーラム開催に際し、日中両国の多くの関係者の皆様にご協力をいただいた。ここに厚く御礼を申し上げる次第である。また報告書の作成にあたっては、当機構の会員でもある、株式会社KRI李大寅博士のご協力をいただいた。さらに、特定非営利活動法人環・日本海の理事長でもあり、富山大学経済学部教授清家彰敏氏には環・日本海の視点から日中関係のあり方について巻頭を飾るお言葉を頂戴した。
謹んでご両氏に謝意を表したい。
2006年3月
日中座学官交流機構
事務局長 柳瀬豊昭