日本海学グループ支援事業

2004年度 「完新世(過去1万2千年間)における日本海の深層水循環の変動に関する研究」


2004年度 日本海学研究グループ支援事業
個人 板木拓也 氏

目的:

現在の日本海の深海は、栄養と酸素に富んだ水塊で満たされている。この深海環境が過去にどのような状態であったのかを明らかにする。

手法:

海底から得られた柱状堆積物(コア)に含まれているプランクトン化石(主に放散虫)の群集解析および有孔虫化石の酸素同位体比測定を用いる。

平成16年度の取組内容と成果:

(1)日本海の10地点から採取されたコアの計230試料をもとに放散虫群集を解析した。それによって、放散虫地理分布の概略的な時間変化を明らかにした。
(2)このうち、1地点から採取されたコアの32試料をもとに有孔虫群集を解析した。これまで知られていなかった完新世初期の群集組成が明らかとなった。
(3)このコアについて、3層準から放射性炭素年代を測定した。これまでに得られている火山灰による年代測定と併せて、堆積速度の推移を見積もった(右図)。
(4)ノルウェーのオスロ大学が運営している放散虫関係のホームページ「Radiolaria.org」に日本海の放散虫を紹介した。


平成16年度の調査で新たに明らかになった日本海の深海環境

○1万年~9千年前

冬期モンスーンにともなう海面の冷却が弱まり、深海に沈み込む海水量が減少した。その結果、水深2000m以深の酸素が減少した。

○6千年前~現在

深海に沈み込む海水量が増加し、またより深い水深にまで達した。
その結果、日本海の深海全体が酸素に富んだ環境となった。

平成17年度の予定:

(1)堆積物の年代測定:平成16年度の調査で、幾つかのコアに多くの有孔虫が含まれていることが明らかになったので、それらを中心に放射性炭素年代の詳細な測定を行う。
(2)酸素同位体比の測定:平成16年度に調査された有孔虫をもとにそれらの殻の酸素同位体比を測定する。
(3)有孔虫論文の執筆:平成16年度の調査において、有孔虫分析から速報性のある重要な成果があったので、これを学会および学術誌に発表する。
(4)放散虫の顕微鏡観察:平成16年度の調査での放散虫の概査結果をより詳細なものにするため、約200試料を新たに分析する。
(5)放散虫モノグラフの作成:日本海から産出する放散虫をまとめてモノグラフを作成し、ノルウェーのオスロ大学が運営している放散虫関係のホームページ「Radiolaria.org」に紹介する。
また、このモノグラフを印刷物として学術誌に発表する。