日本海学講座
第3回 「海の生物教室」
2000年度 日本海学講座
2000年7月22日(土)
日本海交流センター
講師 小松美英子
富山大学教授
小松研究室の学生4名
1.講義内容要旨
・ウニやヒトデの仲間は体表に'とげ'を持ち、棘皮動物(きょくひどうぶつ)と呼ばれる。ナマコやウミユリもこれらと形は異なるが、クモヒトデとともに棘皮動物の仲間である。
・ウミユリ、ウミシダは生きた化石と呼ばれており、めずらしい動物である。
・イトマキヒトデ、アカヒトデ、キヒトデは富山湾で普通にみられるヒトデである。同じヒトデという名前がついているが、クモヒトデはそれらとは違う仲間である。
・ヒトデの仲間は腕(わん)の裏についている管足(かんそく)を使って歩行するが、クモヒトデは腕全体を動かして歩行する。
・ヤツデヒトデは腕の長さが揃っていないものがあるが、切れた部分が再生したからである。普通ウニやヒトデは有性生殖をするが、ヤツデヒトデは無性生殖(分裂)によっても増える。
・チビイトマキヒトデはイトマキヒトデと非常によく似ており、親子のように見えるが、異なる種である。
・普通、ウニ類は球形であるが、カシパンの仲間は名前のとおり菓子パンのように平らな形をしている。ヒトデやウニの仲間は、底に接している面の中央に口がありその反対側に肛門があるが、カシパンの場合は底に接している面の中央に口があり、肛門はその面の端の方にある。このように、ウニ類にはムラサキウニなど球形の正形類とカシパンなど扁平な不正形類と呼ばれる仲間がいる。
・ウニは丸い形をしているが、よく見るとヒトデを丸めた形をしている。
・ムラサキウニやバフンウニの食用にされるところは、主に卵巣(生殖巣)である。
・ナマコの口の周りには触手がついており、その反対側に肛門がある。
・ヤドカリは節足動物というグループにはいる。カニやエビは体全体が節のある固い殻に覆われているが、ヤドカリでは貝殻に隠れている部分は軟らかくなっている。
・アメフラシは、タコやイカと同じ軟体動物の仲間である。タコやイカが頭足類と呼ばれるのに対して、アメフラシは腹足類と呼ばれる。
2.各観察・実験コーナーの紹介
・展示水槽①:ウニ類
ムラサキウニ、バフンウニ、タコノマクラ、ヒラタブンブク、スカシカシパン、ナビベリハスノハカシパンなどのウニ類の水槽である。
・展示水槽②:ヒトデ類
アカヒトデ、イトマキヒトデ、ヤツデヒトデ、キヒトデなどの富山湾から集めたヒトデ類の水槽である。
・展示水槽③:その他の棘皮動物
クモヒトデ類のニホンクモヒトデとナマコ類のナマコの水槽である。ニホンクモヒトデは、岩の下に隠れる習性があり、ここではホヤの芽茎の下に入り込み、ホヤを持ち上げるようにしているのが見られる。
・展示水槽④:その他の海産動物
棘皮動物以外の富山湾にすむ動物の紹介水槽である。軟体動物のアメフラシ、シロウミウシ、及び刺胞動物類のイソギンチャクが入っている。イソギンチャクとヤドカリは共生関係にあり、ヤドカリのハサミや貝殻にイソギンチャクがついているのが見られる。
・観察コーナー:チビイトマキヒトデの親子の観察
チビイトマキヒトデの親子を顕微鏡で観察し、イトマキヒトデと比較する。種は違うが、たいへんよく似ていることがわかる。
・実験コーナー:貝殻からでたヤドカリの観察
ヤドカリとカニは、ともに10本の脚を持つ十脚類の仲間である。ヤドカリの殻をアルコールランプであぶり、殻からはい出てきたヤドカリの柔らかい腹部の様子を観察する。
・乾燥標本コーナー
ウミユリ、セミエビ、オニヒトデ、パイプウニ、コウイカ、ヒラタブンブク、マンジュウヒトデなどの乾燥標本が展示してある。
・書籍コーナー
海生生物に関する図鑑、写真集が展示してある。
・ビデオコーナー
日頃見られない深海の生物を紹介するビデオが放映された。
・野外タッチングプール
幼児用プールに、アカヒトデ、イトマキヒトデ、ヤツデヒトデなどのヒトデ類、クモヒトデ類のニホンクモヒトデ、ウニ類のカシパン、節足動物のヤドカリなどが入っている。自由に触ることができ、子供たちにとって人気のあるコーナーである。最初は恐る恐るプールに手を入れていた子供たちも慣れてくると平気で手づかみすることができるようになった。日頃、動物に直接触れることの少ない子供たちにとって貴重な体験となったようである。