日本海学講座

第2回 「日本海沿岸の人工漂着物」


2002年度 日本海学講座
2002年6月15日
富山県教育文化会館

講師 楠井 隆史
富山県立大学教授

レジンペレットの発見

○98年から日本海沿岸の海辺埋没物・漂着物の分布調査を始めている。富山では96年から始まっている。
 北海道大学の小城春雄教授が水鳥の生態調査で胃の内容物を調べていて胃袋の中に米粒大のプラスチック(10㎜~20㎜g)がつまっていることを見つけ、それが、プラスチック製品の中間材料=レジンペレットであることが分かった。20年ほど前、海浜植物を研究している中西弘樹氏によって海浜砂80リットルに1万個も見つかっていたという。

レジンペレットの流失

○レジンペレットは、工場間で流通している物である。県内の工場では、原料を溶かしてスパゲッティのように小さくして、最終的にチップにして袋に詰めて、プラスチックを作る工場に出荷する。
 なぜ、海へ出るのか?工場の床にこぼれた物が川から海へ?セメント袋に入った物が港で漏れてでる?
 プラスチックは溶解しないので、安全と思われているが、海洋生物が糸、網にからまる、海草の生育の阻害等、環境の中に長く在るため、海洋の生物に与える影響は大きい。
 また、プラスチックは分解せずに、細かくなって砂の中に入っていく。


[調査で採取されたレジンペレット]

調査方法

 調査方法が統一されていないために、現在、環境中に出ているプラスチックが増えているか、減っているかは明確には分からない。

:オーストラリアでは、
・1ヶ月で海岸線1平方キロメートルあたりにどれくらいあるかを調査。
・分類項目-プラスチック、金属、木、大きさ等。
 地味な作業のため、人が交代することが多く、一貫して作業を続けるのは少ない。定点を決めて1年くらい続けると正確になる。
 
:富山の方式はユニーク
・統一した調査  小城式
・同時期、日本海沿岸20カ所で実施
・大規模なため600~800人のボランテイアが参加
・砂の表面の他に埋没物も同じ海岸で調査

砂浜の表面の調査法 ─ 10メートル×10メートルを1区画とする。プラスチック、金属等集める物を決める。同じ砂浜でも3~6区画調べる。
埋没物の調査法 ─ 40㎝×40㎝×5㎝の枠に8リットルの砂を入れ、表面の漂着物を排除した後、海水を入れると軽いプラスチックが浮かんでくるものを濾す。それをピンセットで分類し重さを計る。

調査結果

 どの海岸もプラスチックが過半数を占めている。日本ではほぼ全域でレジンペレットが出ている。海外からの漂着物は文字とバーコードで識別するが、韓国、北朝鮮が多く、中国、台湾は少ない。ロシアは北海道で少し出る。
 ロシアでの調査では、プラスチックが40パーセントで、ガラス、金属等の重いものが多い。レジンペレットが埋没物として見つかったのは1カ所のみであった。
 日本では生活の快適さにつながるものが多く、ロシアでは生活に密着したものが多い。

 富山湾では外からの漂着は少なく、神通川、庄川等の河川から出るものが多いのではないか。

問題と対策

 プラスチックの可塑剤として使われているものが環境ホルモン問題として危惧され、る。レジンペレットは海に浮かんでいる間にPCBが付着し、それを魚や鳥が食べて体内に蓄積していく。
 日本のほぼ全域からレジンペレットが出ている。発生源で管理し、環境影響の少ない製品をつくり、捨てない環境教育が重要になる。