日本海学講座

第3回 「海浜植物教室」


2002年度 日本海学講座
2002年7月13日
氷見市海浜植物園

講師 竹内 基
氷見市海浜植物園職員

○海浜植物の生育環境

・砂浜海岸(浜) 例 ハマヒルガオ、ハマナス
 砂の激しい移動や乾燥に耐える植物が生えています。
 砂浜海岸では波打ち際から内陸に向かって、1年草群落-草本性植物群落-低木群落-クロマツ植林というように、海岸植生が帯状に変化しています。
 これを砂浜海岸の成帯構造(ゾーネーション)と呼んでいます。

・岩石海岸(磯) 例 野生ギクの仲間
 磯と呼ばれる海岸の岩場にも植物が生えていて、各地域ごとに見られる植物に特徴があります。

・塩性湿地(干潟) 例 シバナ
 海岸近くの塩分を含んだ湿地を塩性湿地と呼び、このような場所には塩性植物が生えています。
 塩性湿地は、干潟や河口、塩跡湖、塩田跡などに見られます。

○海浜植物の特徴

・低い背丈、厚い葉 例 ハマナデシコ 海岸の強風に対して低い草丈になり、潮風や強い日射に対して厚い光沢のある葉になっています。

・多肉質の葉 例 メノマンネングサ 乾燥に対してサボテンのような形をしています。

・毛の多い葉 例 エゾオオバコ 葉の表面に毛を多く生やしているものもあります。

・長い地下茎 例 センダイハギ 砂の激しい移動に対応した長い地下茎を持っています。この性質を利用して砂浜の土砂の流出止めに海浜植物が利用されています。

・深い直根  例 ハマボウフウ 地中深く根を伸ばすものもあります。


[海水に浮く南浜植物の種子]

○海浜植物と海流

 海浜植物の多くの種子は海水に浮き、海を利用して分布を広げています。種子が海流によって運ばれる植物を海流種子散布植物と呼んでいます。
 今後、列島が温暖化した場合、南方系の海浜植物が北上すると考えられています。

○日本海側に特有の海浜植物

 日本海側に特有の植物は山間地の多雪地帯に適応した種類が数多く知られています。しかし、海岸ではあまり多くありません。その中で日本海側特有の海浜植物として、砂浜海岸ではアナマスミレやイソスミレなど、岩石海岸では、トウテイランやエチゴトラノオなどが生えています。
 砂浜海岸の植生には成帯構造が見られると紹介しましたが、ある海岸では、陸地側の相対的に安定した場所に見られるイソスミレと海岸の相対的に不安定な場所に見られるアナマスミレの間に成帯構造が見られましたが、ここ数年の砂浜の変化などによって、イソスミレ群落が衰退し、アナマスミレ群落が生育地を拡げていることが観察されました。


[実験に楽しく参加する子供たち]



[海浜植物]