日本海学講座
第6回 「水中カメラがとらえた富山湾」
2002年度 日本海学講座
日本海交流センター
2003年2月1日
講師 大田希生
大田氏が地元の富山湾に潜り、6年間にわたって撮影した映像を解説しながら講座は進んだ。
<氷見灘浦海岸>
○藻場が発達し、海中林を形成しており、生き物の種類が多い。海中林は水がきれいな時に最も発達する。
・メバル、アナハゼの多くの仲間がいて、環境に合わせた保護色となり、石の上で小動物を狙っている。
・ザラカイメンは、岩場に付いている動物の仲間で、海水のプランクトンをスポンジ状の器官で採る。
○岩場には軟体動物が多い
・ウミケムシのような不可解な生き物を見ると、海の中にいるのだと思う。
・ウニには、砂の中に隠れて暮らす種がいて、ウエットスーツを刺してくることがある
○虻ケ島の藻場は自然環境が良好に保たれているので、注目されている。
・チャガラは島で一番目立つ
・メジナは海草を食べている
・シロウミウシ、アオウミウシ、ミノウミウシ、ゴシキミノウミウシ、リュウモンウミウシ等の軟体動物が多く、ウミウシはあまり魚に食べられない。魚が嫌がる何かを持っているのだろうか?
<魚津の海岸>
○離岸堤が多く、海の景観を汚していると言われるが、この環境で暮らす色々な生き物がいる。
・マアジ、メバル、メジナが県東部に多い。メジナは体色が黒い。これは、海の中が暗いからか?
・カサゴは岩場の代表。
・タコの仲間は皮膚にしわを作って、岩場の海草に見せて適応している。
・イカの仲間は警戒心が強くて、近寄ることが困難。
・キュウセン(ベラの仲間)やカレイも多い。
・コブダイは放流されたアワビやサザエを食べて増えるらしい。
・ヨウジウオはタツの落とし子の親戚。
・アユの稚魚は冬期に沿岸域を群れで回遊する。
・ムラサキウニは雑食性で、増えると磯焼けが発生したりする。
<水中の環境>
・河口は特に汚れがひどい。ゴミ箱をひっくり返したような状況。空き缶、ズック、弁当殻衣類、古タイヤ・・一旦海に入ると誰も拾わないから、溜まる一方。
・特に、有名な釣りポイントは、釣り道具、竿、針が多い。岩に絡まった糸で死んでいる魚を見ると悲しい。釣り糸はまだ可愛い方だ。漁師の網が落ちていると、絡まったままの魚が多くいる。また、船のバッテリーもある。海に生きる漁師が捨てたのならショックである。
・外国からゴミが流れてくると聞くが、富山湾に限って言えば自分たちのゴミがたまっているという印象。
・県東部では海草が減っているように見える。昨年は海が汚くて、あまり潜れなかった。状況は悪い方向に向かっているのではないか(そんなに騒ぐこともない、という見方もあるが)。
○富山湾の特徴
・川水の影響が強いようだ。
・透視度が低くく浮遊物が多い。
○楽しみと夢
・海に潜ると自然との距離が縮まる。魚屋で見る魚と違う表情豊かな魚や生き物が興味を持って近づいてきて、生き物と近づけたという満足感が持てる。陸上の動物ではなかなか経験できない。
・経済的に可能ならば、日本海全域に潜って南北を比較したり、富山湾と同緯度の韓国や太平洋という東西を比較してみたい。