日本海学講座
第2回 「日本海の魚たち」
2005年度 日本海学講座
平成17年7月23日
ありそドーム研修室(魚津市)
講師 魚津市教育委員会
文化係長・学芸員
稲村 修氏
はじめに
日本海学では「循環と共生」をテーマとしているが、人間を含めて全ての生物はお互いにつながっている。 本日は、河川の上流から富山湾の海底までに生息する魚などについて話したい。
まず、富山、特に魚津を含む県東部の地形の特殊性として、急流河川がそのまま海に入り、流れのゆるい下流域がないこと、富山湾の沿岸域が急激に深くなっていることを知っておく必要がある。また、河川のように目で見える場所だけでなく、地下水や海底湧水のように見えない場所を水が流れている。
イワナ
魚として、最上流まですんでおり、富山では黒部川上流の「雲の平」にもいる。
かつて海を経由して、河を遡上し、分布を広げた。冷水性で県内各河川の上流域に分布するが、希に海に下りることもあり、富山が海まで降りる南限となっている。
素焼きして熱燗をそそぐ骨酒は、富山や新潟、長野、岐阜の一部が発祥のようだ。
ヤマメとは背中の斑点の色が、ヤマメ「黒」、イワナ「白」で区別できる。
サクラマス
英語では、Salmon(サケ)は、海へ降りる種類、Trout(マス)は陸のみの種類として区別されることが多いが、富山で「マス」と言えば「サクラマス」のことである。
もともと富山の鱒寿しは、神通川に遡上したサクラマスで作られていたが、現在ではサケ類も使っており原材料表示は、「サケ・マス類」となっている。
ちなみに、ヤマメの降海したのをサクラマス、アマゴではサツキマスと呼ばれている。
カジカ
美味しいので「河鹿」と呼ばれた。
上流域にすむ大卵型の稚魚は負の走光性を持ち、生まれた後、川底の方に向かうことによって、川下に流されずその場ですみ続けている。
カンキョウカジカ(咸鏡鰍)という種類がいるがこれは、朝鮮の咸鏡道、北海道、東北、富山に分布している。新潟にはいない。
アユカケ
エラブタにカギ状の棘を持ち、これでアユを引っ掛けて食べるいうことから名前が付いたようだ。実際にアユを捕食しているが、棘でアユを掛けるのは確認されていない。 高知ではカマキリと呼んでいる。
アユ
秋に下流域で産卵され、稚魚は海で成長し、春に遡上する。
2004年には少なかったが、前年にエチゼンクラゲが大発生し稚魚のエサとなるプランクトンを食べたためという説がある。
富山では毛針釣りが盛んだが、毛針が虫に見えるというよりは、石から剥がれた水ゴケに見えるのだろう。
縄張りを利用した友釣りのほか、あまり知られていないがシラスやアミエビなどを使った餌釣りもできる。
サケ
雌に比べて雄は、鼻先が曲がり、脂鰭・尻鰭が大きい。
現在では遡上するサケを河口近くで捕まえてしまう。
本来は、上流まで登り、産卵後の死体は色々な生物によって運ばれて分解し、山の草木の肥料に循環されていた。
ギンブナ
県東部の河川では、流れがゆるい下流域がないため、少ない。
片貝川には河口付近にのみいる。
日本海について
日本海の出入口である対馬海峡、津軽海峡は水深120~130mで極めて浅い。
しかし、日本海の最深部は3000m以上もあり、ボールのような形状である。
日本海の海水の概要は、沿岸表層水、対馬暖流、深層水(日本海固有水)で構成される。
深層水は水深300m以深で、水温は1~2℃で、きれいで栄養塩が多い。ちなみに太平洋では水深1000mでも5℃程度である。
深層水で藻類を増やしこれをエサとしてアワビを育てている。
日本海固有水は、ウラジオ付近で海水が冷やされたり密度が高まったりして、重くなってもぐりこんでいる。
「富山県のさかな」として特に次の3つが指定されている。
富山湾の王者 ブリ
富山湾の神秘 ホタルイカ
富山湾の宝石 シロエビ
カタクチイワシ
下あごが短いので付いた名前。マイワシは日本海では、絶滅危惧種。
トビウオ
胸ビレでグライダーのように数百mも滑空する。
イシダイ
背から腹に向かって縞があるが、これを横縞と呼んでいる。
頭から尾の縞が縦縞である。
ブリ
出世魚でツバイソ、フクラギ、ハマチ(ガンド)、ブリなどと呼ばれている。
産卵は主に九州の西南域で行われ、流れ藻とともに北上し富山湾に来るのがツバイソで、成長してフクラギとなる。
3年目からは北海道付近で成長し11月以降に南下して富山湾に入るのが越中ブリである。卵巣(生殖巣)がまだ大きくなっていないので脂ののりが良く最も美味しい時期である。
ホッケ
富山湾の主に水深100~200mにすすむが、冬、浅場に上がってくる。
干物が美味しい。
マダラ
タラの仲間は、背鰭が3つ、尻鰭が2つあり判別できる。
マダラ、スケトウダラ、コマイなどがいる。スケトウダラは深いところにいる。
ホテイウオ
浅い所で卵を産み雄が育てる。このとき吸盤で石等にくっついており、姿が布袋様に似ている。
ホタルイカ
腕発光器の3つが特に大きい。水槽の中で身体を掴んでいて離すと一旦光った後に消える。これは、墨と同様に光を使った外敵をまどわす仕掛けなのだろう。
ホタルイカは日本海にも太平洋にも分布する。産卵期の日中は水深200m程度におり、夕方から夜にかけて浮上する。富山湾では古くから定置網漁がさかんである。これは富山湾の海底地形が関係しているのだろう。
昭和38年以前はコイカ、マツイカなどと呼ばれていた。
ゲンゲ
クロゲンゲ、シロゲンゲ(ノロゲンゲ)、タナカゲンゲ(ナンダ)がいる。
カガバイ
深海性のバイである。富山湾では漁獲されるバイは4種類いる。
煮付けにするツバイは、新湊での呼び名に由来すし、「つんこい(小さい)バイ」の意味である。 カガ(加賀)バイは富山湾だけで、エッチュウバイは富山湾では採れない。
アマエビ
標準和名は、ホッコクアカエビである。
最初は雄で4歳で雌に性転換する。