会議

2010年度 運営委員会


   日時;平成22年5月14日 13:30~15:15
   場所;富山県民会館601号室

Ⅰ 出席者

運営委員
 
青柳正規、秋道智彌、雨宮洋司、今村弘子、
 張 勁、藤野文晤、牧田和樹、戸高秀史、
佐々木外志
アドバイザー 中井徳太郎
 事務局(3名)


 

Ⅱ 会議の概要

 1  挨拶   戸高秀史  富山県観光・地域振興局長

 2  議事

 (1) 
日本海学の再定義について

    事務局から資料に基づき説明

   


 

事務局 昨年秋に東京で、会長、中井アドバイザー、事務局の3者で再定義に関する企画会議を行った。今回の再定義は、①分かりやすい表現 ②範囲を東アジア全体に広げること ③学究的な側面に加えて、国際交流や海を中心とした街づくりなど草の根の活動も日本海学の中に取り込んでいくこと。という3つの観点で検討した

会長 補足をさせていただく。

・「環日本海地域~」の部分について
rim(へり)が強調され、中核にある日本海が物理的になっている。きちっと「日本海とその周辺及び関連地域全体を」と変更した。

・「総合学~」の部分について
日本海学は、研究を深める、知識を増やしていくだけでなく、将来への知恵を引き出す、holistic(総括的)なものとしてとらえたほうが、今の科学技術一辺倒の社会に新たな提案が出来るのではないかというようなことを3者で考えてこのような案を提示できるような段階まできた。 

アドバイザー この日本海学が10年以上になる。循環と共生と海を視点におき、東アジアを大きくとらえようとして始まった。また、総合学が言われる時期にこの日本海学が立ち上がった。非常に多くの方々の努力によって成果も蓄積されてきた。それを21世紀に入って、世界に生きているわれわれの生き方にフィードバックする局面になっている。再定義をするにあたって、一般の人々にわかりやすく日本海学を伝えることと既存の専門、細分化していく「学」ではなく、全体をとらえられるような「学」として、大きな共有化を持つ中で専門を深めていくことが、21世紀になって、より大切になっているという考えに立って議論した。


 

・日本海学のエリアの標記について

委員 「その周辺および関連地域」とは具体的に東アジア全体とあるが、どことどこを視野に入れているのか? 

会長 東アジアを考える際に、地域として考える場合とそこに関与している国で考える場合では、広がりが違う。理念的なものだから、国としての東アジアではなくて、圏域としての東アジアである。我々は、日本海を中心にしながら、ダイナミックなフレームワークとして、「日本海とその周辺および関連地域全体」というものをとらえる。様々なことを考える場合に、対象が大きくなったり小さくなったりするが、それでよいのではないか。何を対象とするかによって、日本海だけが対象になる場合もあるし、その周辺も含んだ場合もあるし、その周辺の関係が膨らんだりもする。

委員 北東アジアについては「北東アジア自治体連合」という枠組みがあり、ロシアであれば極東の自治体、モンゴル、中国の遼寧省を中心とした地域などが入っている。国というよりは、地域的な、日本海を中心としたその地域でのまとまり、その周辺地域の枠組みで、考えている。そういう意味でも今回の定義は、違和感はないように考えている。

委員 冷戦時代の中で、脈々とロシアとの交流をやってきたのは、富山県、あるいは北陸地域だと思うが、そこが「環日本海」という言葉をどんどん捨てていくのは非常に寂しい。「環日本海」という言葉は、個人的には是非残したいという思いが強い。学会では、環日本海学会というのもあった。北東アジア学会と名前が変わったが、結局中国の大成長で、東アジア、北東アジアの言葉に残念ながらシフトしていき、地方自治体もそれにならっている経緯がある。


 

・「環境」という言葉の取り扱いについて

委員 「海との関わりを軸にその自然・文化・歴史・経済を」とあるが、日本海学は、循環という視点で環境問題を多く扱ってきたので、「環境」を入れればいいのではないか?

委員 「海との関わりを軸にその自然・文化・歴史・経済を」に環境が入ったとして、日本海学は本当にそのカテゴリーしかないものなのか?あえて項目を表記せず「海との関わりを軸に総合的に研究し」と表記すればどうか。

委員 日本海学とは何ですかといつも聞かれる。一般の人にわかりやすく提示する必要がある。環境は4つ(自然・文化・歴史・経済)ともに含まれる。「自然」は、3Dで空間的に山から海まで、「文化」は、そこに住んでいる命、「歴史・経済」は、ロングスケールとショートスケール、時間軸を加えていることプラス温故知新、過去をふりかえり将来を展望する。環境を入れると政治をどうするかとかが出てくるのではないか?


 

・「地域の自立・交流を促進し」について

委員 「自立」とはどこの自立なのかとなってしまうので、「地域の交流を促進し」というふうにして、「自立」という言葉を出さないほうがいいのでないか?


 

・日本海学の再定義についての会長総括

会長 「学」という「-logy」が付くと西洋系の学問分野としての日本海学と聞こえる。一方で、儒学とか、生き方を考える東洋的な「学」というとらえ方もある。今、日本の中で「学」というのがヨーロッパ系の科学技術での意味の「学」にとらわれすぎている。日本海学にはもう少し広い意味が「学」にこめられていると思う。
 海の持っている生命力というか、循環性は、陸地に比べるとはるかに大きい。環境が悪くなっていっても安定性は海のほうがはるかにある。安定性を「生命の源」、あるいは環境の軸というふうにとらえて、陸の変容をとらえていくという方向性は、間違っていないような気がする。そのあたりが、「生命の輝き」につながってきている。このような新しい領域を日本海学は10年前に提案しているわけで、再定義というよりも情勢の変化に対して日本海学をもう一回違う表現の仕方で提案することが、今回の作業の大きな目的ではないか。

意見を頂いたものを再確認すると、①日本海学のエリアの表記 ②環境という言葉の扱い 「自立」についての再検討にならないか。以上の意見をもとに、もう1回事務局と中井アドバイザーと私で案を取りまとめていきたいが、その改正案については一任させていただけないか?(了解)


 (2) 平成21年度事業の実施状況について


     事務局から資料に基づき説明   →平成21年度事業一覧


 (3) 平成22年度事業の実施計画(案)について

     事務局から資料に基づき説明   →平成22年度事業一覧 
 
 (4) その他
 

・連携について

委員 富山経済同友会では、一昨年から日本海沿岸地域の経済同友会が連携して何かできないかということでシンポジウムを行った。他県の動向は、どのようになっているのか。

委員 物流に関しては、日本海をめぐる県の横の連絡がほとんどない。これが現実で、有機的に動けば環日本海がもっと活性化してくるはず。そのためには、日本海沿岸各県が協調体制をとらないといけない。日本海学が1つの起爆剤になるなら、横の連絡を取って、お互いに協調できる体制になればよい。

委員 日本海については、あまり知られていない。日本海は、気温の上昇が世界の海の中で世界平均の3倍高い。61個の海を調べている中で日本海は、top3に入る。水温上昇が激しい海。つまり、この沿岸の国々の気候に一番影響を及ぼしているということがなかなか伝わっていない。データとしてはweb上に載っているが、解説する人がいない。富山のいいところがどれだけ県民に浸透しているか?富山の水は、おいしさ日本一だ。昭和版と平成版で環境省で選ばれた名水は8本で、熊本と並んで47都道府県の中でtop2。また、県の面積で割った水の涵養量は日本一で、2番目の岐阜県の3倍くらい高い。全国の平均値の10倍近い値。この様な知識や情報はどこにも出ていない。富山県民で、このことを自慢している人はいるだろうか。こういったところが問題なのではないか。一研究者はどこまで出来るか?県や市が政策的に行わないと。連携は大事だが、どういうふうに組むかを考えるべき。組むことは大事だが、自分のポリシー、色を出さない限りだめである。

  

23年度以降の取り組みについて

アドバイザー 日本海学のコンセプトで活動をし、個人的にもかかわっている東京のNPO「ものづくり生命文明機構」がコンセプトメーカーとなり、「ローカルサミット」を一昨年は十勝で、昨年は宇和島で行った。日本海学のコンセプトに共感する人々の輪が広がっている。1年に1回集まって、交流をする現代版のお祭りのようなものを仕掛けていく時期にきているのではないかと思う。日本海学推進機構として23年度に支援できる体制をとるということを検討していただければ有り難い。

事務局 富山湾読本を2年間かけて作るのだが、完成した際には、それを県民に知ってもらうシンポジウムを計画中である。あわせて日本海学ウィークみたいなことを考えて、これだけ問題意識を持っている人がいるのなら、前向きに検討していきたい。