日本海学研究機関等連携事業

日本海洋学会 「富山湾の流動環境と水質汚濁に関する研究」


2007年度 日本海洋学会春季大会シンポジウム
日時:2007年3月22日
会場:東京海洋大学品川キャンパス

○井上貴史・木村伸吾(東大院新領域/海洋研)
キーワード:富山湾・人工衛星画像・最大相互相関手法(MCC 法)

【はじめに】

 富山湾は、本州日本海側のほぼ中央に位置しており、その湾岸には、5 つの1 級河川を始め30 余りの中小河川が存在するため河川からの淡水流入量が多い。また、3 種類の海水が層を成しており、300m よりも深い部分は日本海固有水、その上に対馬暖流系水、そして岸近くの表層には、河川水の影響で塩分の低くなった沿岸表層水が分布する。

 対馬暖流系水と日本海固有水の存在により、同じ海域で、暖流系と冷水系の魚が遊泳しているため、豊かな漁場となっている。

 しかしながら近年の公共用水域調査結果によると、富山湾の水質汚濁(COD の上昇)が顕在化してきている。

 汚濁物質等は、河川水や湾外水により輸送されるため、河川水や湾外水の挙動を広域的かつ時系列的に把握することは、富山湾の水質汚濁機構を解明するために重要である。

 そこで本研究では、富山湾海域の流動に焦点を当て、流動環境が水質汚濁にどの程度寄与しているかを明らかにすることを目的とする。

 

【研究方法】

 富山湾海域の流動環境を把握するために、以下に示す3つの手法から解析を進めてきた。

1.人工衛星画像を用いた富山湾海域の流動2.現場観測データを用いた富山湾海域の流動3.流速計同化数値モデルを用いた富山湾海域の流動

富山湾海域の流動環境を明らかにした後、水質環境及び流動環境から富山湾海域の水質汚濁機構についての考察を行っていく。

 

【解析資料】

・(財)環日本海環境協力センター提供の気象衛星NOAA の海表面水温画像及びJAXA/TRIC 提供のTerra/Aqua 衛星のMODIS クロロフィルa 画像・KT04-22 次及びKT0510 次航海の観測資料・流速計データ及びADCP データ

 

【結果及び考察】

 

 図 クロロフィルa 画像を用いて得られた流動場
(赤い部分はクロロフィルa 濃度の高い部分を示しており、
濃度の高い付近に渦状の流れが形成されている)

 人工衛星画像から得られた富山湾内の流動は、湾西部から湾東部や外洋へと向かう東向きの流れが一年を通じて多く示された。沿岸付近の流動パターンは、岸に沿って西部から東部へ向かうパターン、沖から岸方向への向かうパターン、また沖から岸方向へ流れ、再び沖方向へと戻るパターンなど短期変動を示したが、一年を通じて東向きの流れが多く示された。また、能登半島の先端から富山湾内へと向かう流れは南東方向が多く、湾奥へと向かう南西方向の流れは見られなかった。

 

 海表面付近に分布する汚染物質等は、富山湾外へと流れて行きやすい流動環境にあると考えられるが、これはごく表面に限った結果である。湾全体におよぶ流動環境の把握には不十分であるため、流速係留系データを同化する数値モデルの構築を進めており、汚濁機構の解明に努めていきたい。