日本海学研究機関等連携事業

日本海洋学会 「富山湾産深海生物の飼育の試み」


2007年度 日本海洋学会春季大会シンポジウム
日時:2007年3月22日
会場:東京海洋大学品川キャンパス

髙山茂樹(魚津水族博物館)
キーワード: 富山湾・日本海固有冷水・生物・飼育

 様々なメディアを通して迫力ある映像が配信されている現代において、水族館の役割の一つである実物の生物の展示がこれまで以上に重要になりつつある。そのような中、富山湾岸に位置する魚津水族博物館では、過去26 年間、「北アルプスの渓流から日本海の深海まで」をテーマに富山湾の深海生物を展示の柱に据えてきた。また、その間の飼育機材の発達は、水温1~2℃も可能な冷凍機の普及や断熱技術の進歩により低温水槽を使った展示も可能になった。

 そこで、これまで25 年間に飼育を試みた魚類34種、無脊椎動物97 種の飼育実績とそこから分かる富山湾の深海生物の飼育・展示の可能性と問題点について紹介する。

 生物の展示にあたっては、情報収集の後、生物を収集、試験飼育を通して飼育条件を決め、その後本格的な飼育を行っている。収集は、刺網や籠網、底曳網を行っている地元漁業者に依頼した。中でも、船内に冷凍機付魚槽を持つ漁船は、生物の生存率が高い傾向が見られた。また、表面海水温が18℃もある10 月中旬から翌年5 月までの長期にわたって魚類収集を行うことができた。

 試験飼育は、軟体動物のエゾバイ科Buccinidae の場合、富山湾に生息するニクイロツムバイPlicifiususplicatus 、チヂミエゾボラNeptunea constricta、チョウセンボラN. arthriticacumingii、イジケシライトマキバイBuccinum zelotes、オオエッチュウバイB. tenuissimum、カガバイB.bayani、ツバイB. tsubai を用いて行った。方法は、状態のよい個体が捕獲されるたびに、水温1℃、4℃、6℃、8℃、12℃に水温調整した水槽で飼育し、その生存率を比較した。その結果、水深100~500mに生息するカガバイやイジケシライトマキバイでは、1~12℃のすべての範囲で死亡個体は見られなかった。一方、水深200~1350mにすむツバイや水深350~1550mのオオエッチュウバイは、6℃以上では飼育をすることができなかった。この結果を踏まえ、カガバイとイジケシライトマキバイを水温8~12℃、チジミエゾボラ、オオエッチュウバイ、ツバイは水温2℃の水槽に収容し、飼育を行った。その後、これらのエゾバイ類の内、ツバイを除く4 種は、産卵、孵化の後、稚貝にまで成長した。

 このエゾバイ科での飼育結果を受けて、生物の生息深度を元に富山湾の深海生物を日本海固有冷水域に生息する種を水温2~3℃、それ以外の水深に生息する生物は、水温6~8℃、及び12~18℃に分けて飼育をした。また、照明をやや落した意外は、溶存酸素分圧の調整は行わなかった。与えた餌は、異内容物を調べた上、餌の種類を決め、ホッコクアカエビやホタルイカ、オキアミ、魚肉を与えた。そしてこれまでに魚類6 種、無脊椎動物23 種で繁殖または成長が確認された。この中から、カガバイ、サラサベッコウタマガイOnchidiopsis nihonkaiensis、アバタカワリギンチャクHalcurias japonicus、オオグチボヤMegalodicopia hians、ザラビクニンCareproctus trachysoma、ノロゲンゲAllolepishollandiについて飼育の現状を紹介する。併せて、深海生物の飼育・展示における問題点の対応策についても言及する。