日本海学シンポジウム
2000年度 「いま、富山から日本海ルネッサンスの胎動」
2000年度 日本海学シンポジウム
2001年3月31日
富山国際会議場大手町フォーラム
主催:富山県・日本海学推進会議
第1部 基調講演 | |
1.新世紀に求められる地域学 榊原英資(慶応義塾大学教授) | 概要 |
第2部 パネルディスカッション | |
2.日本海学と新世紀の文明の創造 | 概要/記録 |
1.新世紀に求められる地域学
グローバリゼーションとは何か
ネットワーク型のグローバリゼーション
日本とは何か-問い直されるアイデンティティ
タコツボ型の歴史観からの脱却
人間中心主義から自然との共生へ
2.日本海学と新世紀の文明の創造
コーディネーター パネリスト |
丹羽昇 大塚和義 小泉格 藤田富士夫 丸山茂徳 安田喜憲 |
富山大学教 国立民族学博物館教授 北海道大学名誉教授 富山市教育委員会埋蔵文化財センター所長 東京工業大学大学院教授 国際日本文化研究センター教授 |
かつてフランスのブローデルが、歴史学、地理学、さまざまな学問を通じてこの地中海というものをきわめてうまく描いてた。それに我々は見習って、「日本海学」というものがありえないだろうか
1.「日本海および環日本海地域の固有性、あるいは特徴」。
日本海は海と陸とのセットから成っている。海流が一方通行の海で要所要所に冷水域ができている。日本海側に雪とか雨とかをもたらす。
我々は地球化学環境の取り返しのつかない破壊と人口の爆発的な増加という2つの課題を抱えている。この課題を突破するには最も重要なクリティカルな場所はここ、アジア東部、そして日本海だ。
環日本海は、歴史的に円環状のネットワークをもっており、先住民地域、特に採集民地域と、農耕民的な地域とが陸路、海峡をものともせず全部うまくつなげてずっと循環してきた。しかし今、この都市部が突出して資源を大量消費して、先住民地域を非常に脅かしている。
縄文時代はこれまで貧しくて閉鎖的な社会であったというけれども、実は、日本海を縄文時代中期にはかなり自在に列島の北から南まで行き来していた。
日本海があることによって日本列島に「森の文化」が育まれ、また大陸から日本列島の「森の文化」を守った。
2.「循環」「共生」、そして「日本海」を21世紀の文明の創造という観点からどう考えたらいいのか。
日本海は、周辺を陸地で囲まれたいわゆる閉鎖海域で、周辺の陸地が海に影響を及ぼす。海がまた、周辺の陸地に影響を及ぼしまさに共生関係になっている。
資源はどんどん枯渇している。廃棄物は一方的に溜まって濃縮していく。この日本海の周りで、人類に課せられたこの環境問題をどうやって突破するか。
日本は、多神教的価値観でいろいろな文化を自由自在に取り入れて、軟構造の文化をつくりあげてきた。将来展望として21世紀の日本にとって、その役割を注目したい。
硬玉製大珠は、アジアの世界の大きな玉器文化の中で連動して出現してきている。こうした「共生」を日本海文化を考える考古学的ヒントとしたい。
長江文明という文明を担っていた民族は、現在の雲南省とか貴州省にいるような少数民族の越人だ。北方から家畜の民が爆発的に拡大をしてきて追い出されて、一部の人は雲南省へ逃げていって、一部の人が日本へやってきている。
21世紀に文明は水によって危機に直面する。日本の稲作農業というのは流域というものを単位にして循環的な生活をずっとやってきたわけです。これが21世紀の日本が生き残る戦略だ。
3.21世紀に求められる日本海学、あるいは日本海学に対する期待。
日本海学の柱は、①日本海および環日本海地域の環境、あるいは政治・経済の危機、②日本海、環日本海地域の文化、③日本海および環日本海地域における交流、④日本海および環日本海地域の自然環境
酸性雨とかいろいろなものが日本に降ってくる。情報を蓄え、どうやって回避するのか具体的な政策などを富山で立案するということが最も重要なポイント。
地域学の確立が、その新しい地域の人類生存戦略というものがこの地域の中から出てくる。
日本の歴史観の転換期に、自らのアイデンティティを日本海文化にそれを求めたい。
日本海学をしっかり成就するためには、関係する諸機関をバインドして内部共生をして、より強く前進していくことが問われいる。