日本海学シンポジウム
2001年度 「新世紀、大阪から見つめる文明と海」
2001年度 日本海学シンポジウム
2001年12月22日
毎日新聞ビル オーバルホール
主催:富山県・日本海学推進会議
後援:毎日新聞社
第2部 パネルディスカッション「文明と海-地中海と日本海の比較から」
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第1部 基調講演 | |
1.文明と海 青柳 正規(東京大学大学院教授) | 概要 |
第2部 パネルディスカッション | |
2.文明と海-地中海と日本海の比較から | 概要/内容 |
1.文明と海
国際化とは、相手の国、民族あるいは文化を尊重したうえで相互交流を図ろうとする傾向である。これに対してグローバル化は、それぞれの国という枠組みを越え、一体化していき、国の中の制度・体制あるいは構造そのものをも変えてしまう傾向である。
経済の分野では既にグローバル化が進み出している。
文化に関しては、グローバル化の影響力はそれほど大きいものではないと考えたい。また、そのような方向に持っていかなければいけない。
積み重ねの文化のおかげで我々は今生きており、さらに異なる文化と相互に影響を与え合うことによってまた新しい可能性を獲得している。もしグローバル化が文化のレベルでも進んでいけば、文化の発展の将来の可能性が閉ざされてしまう。
日本海と地中海を比較するポイントとして、
1つは、一つの集団や組織や体制あるいは文化の状況を解明すること。日本海域は次の秩序立てのための移行段階にあり、流動的な部分がある。
2番目には、それが持っている固有の属性は何かということ。日本海域圏は、日本列島と韓国の朝鮮半島、ロシアの極東地方など大陸半島と列島によってを作られており、むしろ北海の方に似ている。
3つ目には、その集団や組織や体制あるいは文化が成り立っている骨組み。地中海域に比して日本海域は交流による豊かな魅力の形成がまだ顕現されていない。新しい考え方で環境問題などをきちんと位置づけし、固有の文化それぞれが相乗効果を起こして、さらにすばらしい文化群を作るようになれば、この地域がもっと世界からも注目され、世界にも貢献できるのではないか。
2.文明と海-地中海と日本海の比較から
コーディネーター パネリスト |
青柳 正規 伊東 俊太郎 小泉 格 武田 佐知子 ロナルド・トビ |
(東京大学大学院教授) (麗澤大学教授) (北海道大学名誉教授) (大阪外国語大学教授) (東京大学大学院教授) |
【地中海および日本海という海の自然環境あるいは文化環境の概観】
地中海の海水は、世界中を回るシステムの中に組み入れられているが、日本海は孤立している。日本海は地中海に比べると年中通して湿潤である。地中海はテチス海の一番最後に残った海域、日本海は大陸が割れた海域である。
地中海はヨーロッパ系の文化系列とセム系の文化系列の文明交流圏。日本海も朝鮮半島や沿海州、中国東北部、そういうものとの文明交流圏として捉えるとおもしろい。
文化交流圏あるいは文明交流圏としてとらえたらどうかという試みが、実は日本史の中で十数年前から試みられている
出雲大社などは、ラクーン(潟)の中で沈黙貿易の拠点となっており、高い建物を必要とした。
【地中海域と日本海域の比較による文明と海の関係の具体的なイメージ】
歴史はあるとき突然イベント的に起こるのではなくて、継承され、変質されていく。それが地中海等を介して行われていた。
海は文明を隔てるのではなく、かえってそれを結び付ける機能を持っている。日本海文明交流圏、東シナ海文明交流圏、それから太平洋文明交流圏、この3つの交流圏でもっと日本列島の歴史を考えていったらおもしろいことになる。
いくつかの文明圏があって、その文明が海を伝って関係を持つという文明交流圏がある。海の繋がり「列海」が重要な存在だった。しかし、日本文化を支配してきた民族はこの難波あたりに拠点を作って、日本海沿岸を周辺化させた。
五島列島を中心とする海人のネットワークは、航海の技術と人的資源、造船技術があった。倭寇は倭寇の名を冠せられながらおそらく日本人だけではない国際的な集団だ。
【新世紀の環日本海域の文明あるいは文化の可能性】
博物館を造るのであれば、統合して一発で勝負する必要がある。そして地元の人とあらゆる分野で連携する参画型にする必要がある。また、日本海学の知的サービスをする必要がある。
縄文時代のけつ状耳飾りや古墳時代早期の四隅突出型方墳、渤海との交流等々に見られるように、日本海には文明交流があった。こうした歴史認識の共有化を図ることが大切である。また、経済交流、環日本海の共同した環境保全が大切。
日本海というネーミングを「北ツ海」に戻してはどうか。
日本列島津々浦々という言葉がかつてあった。歴史認識を共有するためにも海からの視点が非常に重要である。