大学等連携事業
早稲田大学オープンカレッジ秋季講座
日本海学
-日本海から、21世紀の森と水の文明が見えてくる-
日時:10/3~12/12
14:40~16:10
(金曜日・10回)
目標
「さかさ地図」が与えてくれる柔軟な発想を手がかりに、循環・共生・海の視点に立って、北東アジア・環日本海地域から21世紀における人間の営みの方向性を地球規模で総合的に探るためのフレームワークの習得を目指す。
講義概要
日本海学は、日本海および環日本海地域を一つの循環・共生体系としてとらえて、地域からはじまり地球全体におよぶ自然環境と人間とのかかわり、地域間の人間と人間とのかかわりの歴史の中で繰り返されてきた循環・共生システムに学んでいく。そして将来に起こりうる様々な問題を予測し、これに対処する備えを用意することにより、地域全体の危機を回避し、ひいては健全な地域・地球を子孫に引き継いでいくことをめざすものである。
開催日 | 内容 | 講師 | ||
10/3 | 開講挨拶 | 中沖 豊 | 富山県知事 | |
日本海学の提唱とその意義 | 中井徳太郎 | 財務省大臣官房文書課広報室長 | 概要 | |
10/10 | 日本海文明交流圏 | 伊東俊太郎 | 東京大学名誉教授(日本海学推進機構会長) | 概要 |
10/17 | 地図にみる「日本海」の呼称 | 青山宏夫 | 国立歴史民俗博物館助教授 | 概要 |
10/24 | 日本海側の風土と稲作文化 | 宮口侗廸 | 早稲田大学教授 | 概要 |
11/7 | 循環・共生の環日本海地域 | 小泉格 | 北海道大学名誉教授 | 概要 |
11/14 | 環日本海沿岸の先住民世界と物流 | 大塚和義 | 国立民族学博物館教授 | 概要 |
11/21 | 環日本海玉文化交流 | 藤田富士夫 | 富山市埋蔵文化財センター所長 | 概要 |
11/28 | 環日本海地域の将来の気候変化と植生 | 太田俊二 | 早稲田大学助教授 | 概要 |
12/5 |
現代とはどんな時代なのだろうか -日本海学の役割- |
丸山茂徳 | 東京工業大学大学院教授 | 概要 |
12/12 | 森と文明 | 安田喜憲 | 国際日本文化研究センター教授 | 概要 |
※使用テキスト「日本海学の新世紀 第1集」 早稲田大学生協ブックセンターで販売 ※なお、受講にあたっては、受講料などが必要となります。 詳しくは、 早稲田大学エクステンションセンター(℡03-3208-2248) までお問い合わせください。 |
月日 内容 |
概要 |
10/3 日本海学の提唱とその意義 |
「日本海学」は、環日本海地域全体を、日本海を共有する一つのまとまりのある圏域としてとらえ、過去、現在、未来にわたる環日本海地域の人間と自然のかかわり、地域間の人間と人間とのかかわりを、「循環」と「共生」と「海」の視点を明確にしつつ、総合学として学際的に研究するものである。 |
10/10 日本海文明交流圏 |
日本海をひとつの「文明交流圏」としてとらえ、この海をめぐっての文明の交流のありさまを、古墳や装身具や建築物などの具体的事物や神信仰や習俗といった人びとの精神生活のありようまで含めて、考察する。こうした過去の考察を通して、現在やや波立っている日本海を、友好の平和の海へと再生させたい。 |
10/17 地図にみる「日本海」の呼称 |
ユーラシア大陸と日本列島にはさまれた海域を、現在われわれは日本海と呼んでいる。この日本海という呼称は、いつ、どのようにして生まれたのであろうか。古地図を資料として、その成立と普及の歴史を、その海域の地理的知識の変遷とともに考えてみよう。 |
10/24 日本海側の風土と稲作文化 |
日本海側の地域は、その大半が雪国であり、同時に、夏の暑さを共有する地域でもある。暑い時期に水があり、冬に土地を使うことができないことは、研ぎ澄まされた稲作文化を持つ水田単作地帯が生まれた風土的基盤となった。講義では、日本海側で生まれた、稲作に対する努力と工夫の成果をもとに日本海地域の歩みを語りたい。 |
11/7 循環・共生の環日本海地域 |
日本海学の基本的視点は、日本海を共有するこの地域での自然と人間とのかかわりや地域間の人間と人間とのかかわりを、海を基点とした1つのまりまりのある循環と共生の体系としてとらえることである。偏西風や対馬暖流をはじめとして、この地域の生態系や人びとの生活と文明に深くかかわっている物質循環を解説する。 |
11/14 環日本海沿岸の先住民世界と物流 |
この海域世界には、文化と歴史を異にする多様な民族集団が生活しており、生業の観点から農耕と非農耕の二つに大別される。両者は物流で結びつき、技術・情報を含む文化的ネットワークを形成し共存の関係にあった。現在、非農耕の先住民地域では環境が激変し、生存すら危機にある。これは海域生活者全体の問題でもある。 |
11/21 環日本海玉文化交流 |
縄文時代を代表する装身具に「けつ状耳飾り」と「硬玉製大珠」がある。これらを、環日本海をめぐる玉の文化交流の視座でこの二つを検討し、孤立した存在と考えられてきた縄文の装身文化がアジア諸地域の玉文化と連動して展開していることを論ずる。 |
11/28 環日本海地域の将来の気候変化と植生 |
環日本海地域の気候はモンスーンアジアの地理的条件(インド洋、ヒマラヤ山脈など)に支配された大気大循環の季節変化に強く影響されている。その結果、豊かな四季をもち、特徴的な自然植生や農耕が古くから成立してきた。本講では、2100年頃の環日本海地域の気候がどのように変化し、植生や農業に影響するかについて説明する。 |
12/5 現代とはどんな時代なのだろうか -日本海学の役割- |
人類史の中で現代を位置づけ未来を展望する。現代は人類史1万年の中で最大の試練の時である。2020年から始まる世界動乱の時代とその後の世界を予測し、人類史における日本の役割を考える。2つの方向、科学と技術の発展に未来を託す、或いは化石燃料なしの持続社会への移行を想定し、日本海周辺国から始める運動を考える。 |
12/12 森と文明 |
人類の文明には森を破壊し尽す文明と森とともに生きる文明の二つがある。日本の文明は森とともに生きる道を選んだ世界でもきわめて特異な文明である。森の文明はまた水の文明でもある。日本人は森と水の文明を発展させてきた。この地球環境の危機の時代に、日本人が果すべき役割とはこの森と水の文明の再認識にある。 |