大学等連携事業

富山県立大学秋季公開講座 「油にまみれた海-海の悲鳴が聞こえる-」


本講演録は、日本海学推進機構事務局の責任で取りまとめたものです。
講師のご好意により、ここに掲載させていただきます。

平成15年度 富山県立大学
秋季公開講座
2003年10月25日
富山県立大学

講師 立田真文
富山県立大学短期大学部助教授

1.はじめに

 私のタイトルは「油にまみれた海―海の悲鳴が聞こえる―」ということですが、別に悲鳴は聞こえていないのです。タイトルをつけてくださいと言われたときに、何かインパクトのあるようなタイトルがいいかなと思って、「悲鳴が聞こえる」ということにしました。
 私が言いたいのは、海はそんなに華奢じゃないよ、海はもっともっと力強いんだぞというのも、お話ししたいと思います。
 私のきょうの講義のポイントは「分解とは何ぞや」ということです。特に原油分解とか、一般に言われる分解についてお話ししたいと思います。

2.油流出事故について

 油流出事故ですが、一覧表に載っているだけでも20件、1965年5月23日から2002年までのオイル事故が載っています。これは一部です。全部ではありません。1965年の事故は、私が1歳のときです。ノルウェーのタンカーが座礁、爆発し、28日間にわたって燃え続けました。
 2年後の1967年、トリーキャニオン号がペルシャ湾からイギリスに向けて航行中、操船ミスにより座礁し、9万 3,000キロリットルが流出しました。
 1974年には日本で起きました。三菱石油水島製油所で重油 7,500から 9,500キロリットルの流出事故がありました。我々が使う灯油缶は20リットルですから、それの何個分かわかりませんが、かなりの量が流れ出ているということです。
 1989年、エクソン・バルディズ号の座礁。きのうのことのように思い出しますが、これは世界的に大きなニュースになりました。これによってエクソンモービル社はかなりの環境保全のお金を払わざるを得なかったわけです。これは積荷の20%、4万 1,000キロリットルが流出した大惨事でした。
 日本海では、6年前の1997年、福井県三国町安東岬付近で、ロシア船籍のナホトカ号が岩盤に着底、油が流出するという事故がありました。沿岸の方がボランテイアで寒い中、海岸をきれいに清掃したというニュースを見て、大変なことだなと思いました。
 世界的に見て、このような座礁が起こり、かなりの量の油が海に流れてしまっているということですが、海ではどのようになっているのかを見てみたいと思います。

3.原油分解について

1)原油

〔パワーポイント使用〕

 これは大体を示した図ですが、油が海に流れ込むということで、初めは当然ベタベタで厚い油膜があります。太陽が照るから蒸発もあります。厚い油膜の中でも軽い成分は溶解していきます。
 厚い油膜がだんだん散らばり、年月を経ることによって、当然、薄い油膜になってきます。それも蒸発していくものもあるし、軽い成分は懸濁していくのもあって、上や下に移動していきます。揮発しない部分は残っていきます。同時に、厚い油膜なら海の中、下に下がっていく過程もあります。これらすべてのことが一遍に起こります。蒸発が起こってから下に下がるのでなくて、ドッと流れた途端、上にも蒸発するし、下にももぐっていくし、あるものは溶けるし、あらゆる運動が行われる。それがあるから、きれいになっていくわけです。
 厚い油膜のもの、または薄いもの、揮発しないものはドーンと下がって、あるものは濃過ぎるから、バーッと下がっていって、油の中に海水をためるという形でエマルジョンになります。エマルジョンというのは、油と水をコップに入れてグワーッと振ったら乳白色になります。水が油で囲まれた状態、または油が水で囲まれた状態を乳化と言って白くなります。多いところだったら、油が下がっていって、その中に水が入っていくエマルジョンになるし、少なかったら、薄い油膜があって、それが落ちていって水の中に油膜があるエマルジョンになっていきます。そういういろいろな形で落ちていくわけです。
 そして、微生物によって分解されていくものもあるし、さらにかたまりがグワーンと下に落ちていくのもあるし、あるいはその中でもゆっくり分解されていくのもある。薄いですから懸濁物としてフワフワ流れていってしまうものもあるし、プランクトンにくっついたり、プランクトンに食べられたりするのもある。先ほども言ったように微生物による分解もあるし、太陽光線によって分解するのもあるし、溶解していくもの、また下に沈むものもあります。
 先ほど言いましたように、これらのことは順序よく起こるのではないのです。ドーッと一遍に起こるのです。油が環境中にほうり出されたら、ダーッと海の表面を走っていくのもあるし、グワーッと落ちていくのもあるでしょう。それらはこのような微生物による分解、下にたまっていく、プランクトンにひっつく、魚にくっつく、海藻にくっつく、化学反応で分解するというのがいっぱいあって、海は自分自身を浄化していくわけです。
 だから、極論ですけれども、油が流出したらほっておいたらいいのです。それは漁業とかの問題があるから大変なのですけれども、ほっておけば、いつかはわかりませんが、必ずきれいになります。私たちが生きている間かもしれませんし、孫の時代かもしれませんが、こういう作用によってきれいになっていくということをわかっていただきたいわけです。しかし、我々が生きていく間、商売もしなければいけないし、もうけなければいけないし、観光で人を呼ばなければいけないし、汚い海はだめだということで、いろいろやらなければならないというのが現状です。
 自然には浄化作用があって、きれいになっていきます。それを担っているのが微生物で、微生物というのは非常に優秀で、実は我々の下水も微生物できれいにされています。微生物はあなどれないもので、自然条件下では、放出された油の40から60%が微生物によってきれいにされます。だから、自然というのは非常に素晴らしいのです。

2)原油の成分

 私は廃棄物専門で、廃棄物のことを一所懸命にやっていますが、私がよく耳にすることがあります。「この微生物は、何でも分解する。油も全部分解するんです」という話がよくあります。ここに来ていただいた方は覚えておいていただきたいのですが、原油を分解するということはないのです。原油というのは、あらゆる成分がなって原油なのです。だから、原油が分解するといっても、何を分解するのか私にとってはわからない。それをしっかり押さえていただきたいのです。

 原油の成分を分類していくと、大体4つの成分に分けられます。飽和分という長い鎖状なっているものです。それと芳香族分、こういうクルクルと回っているベンゼン環というのがついているもの。それから、レジン分、アスファルテン分に分けられます。だから正しい言い方は、油分の中のこれらが分解するんですというのだったらいいのです。しかし、ただ単に原油が分解するんですという話がよくあります。原油のどこが分解するんですかと言ったら、わからないから口を閉じられる。そういう話を聞けば、ここに来た方は言ってください。「原油のどの成分が分解するんですか」と。これがポイントです。
 先ほどもいったように原油というのは飽和分、芳香族分、レジン分、アスファルテン分が集まってできているわけです。これのどれかが分解されていくのです。だから、原油が分解されたように見えるわけです。それを分解と言います。これが分解ということで私が言いたかったことの1つです。

 飽和分というのは、パラフイン系とナフタリン系がそろっている、こういう形のものです。分子量が大体 300から 200ぐらい。そんなに重たくありません。これが一番分解しやすいのです。次は、芳香族分で 300から 2,000、レジン分がちょっと大きい。アスファルテン分が一番大きいです。
 これはアラビアン・ライトですが、飽和分が27%ぐらい、芳香族分が47%、レジン分が23%、アスファルテン分が4%含まれています。原油よって、この成分率は変わっていきます。原油が分解するというのは、このどれかが分解していくということです。

 これをまとめたものですが、原油を分解すると、飽和分・芳香族分・レジン分・アスファルテン分に分けられます。そのそれぞれの性質は、アスファルテン分が分子では一番形自体が大きい。だから、ドーンと下がっていくのはこれでしょう。飽和分は非常に小さいもので、だから溶けやすくて分解性もなかなかよい。これがアスファルテン分にいくほど分解性が悪くなります。
 溶解性と分解性というのはよく似ていまして、溶けるから分解するのです。何でもそうです。毒でもそうです。水に溶けない毒は一般的に毒になりません。大丈夫です。水に溶けるから私たちが飲んで、それを体が摂取してしまう。だから危ないだけで、水に溶けないものは基本的に大丈夫なのです。

 油は4つの成分を持っていて、それぞれが流れていく。この辺で、先ほどの飽和分は溶けてしまう。タール分とかなかなか反応しない。分解しないものはレジン分、アスファルテン分と言われますが、そういうのがだんだん残っていくという形です。何遍も言っていますように、原油というのは、このようなものから成っていて、それぞれ性質が違うということをわかっていただきたいのです。

 先ほども言いましたように、流出した油は何年かかるかわかりませんが、ほっておいても自然に分解していく。しかし、人間としてはもっと早くきれいにしたいということで、私らがよくやる手は、油が流出されますと、ここに分散剤をまぜて処理しようとすることも多々あります。要するに洗剤です。分散剤は細かく言えば溶媒に界面活性剤を入れる。そういう洗剤を振り混ぜてやるのです。そしたら、油は洗剤と一緒になって広がりやすくなります。広がりやすくなるということは、学術的に言いますと表面積が大きくなる。かたまっていたものが、グワーッと散らばるから、微生物が攻撃しやすくなる。食べやすくなるわけです。かたまりは、なかなか食べられない。肉でもそうですね。小さく切って食べたほうが食べやすい。ドーンと肉を5キロ出されても、ちょっと食べられないですね。それと一緒で、分散剤によって油のかたまりを細かくして、微生物がアタックしやすいようにして、分解を促進してやる方法もあります。エクソンの会社とか、油回収会社がよくやる手はそれです。分散剤を海にばらまく。そしたら、かたまっているものが小さくなったり、または浮かんでいるものが沈んでいったりします。
 海での処理方法の一番大切なのは、いかに油を水に沈めてやるかということです。だから、一所懸命まいているのは、それなのです。上から分散させて、いかに分解しやすくするかということをやっています。
ここで大切なことは、油がばらまかられると、皆さん、鳥が油まみれになって死んでいく映像を見られたと思いますがああいうことにもなるし、当然、油による影響は非常に大きいのです。海は元気だと私が言っても、局所的に見たら、何リットルもこぼれていったら大変です。だからその地域は、油による影響は非常に大きいわけです。

3)分散剤による影響

 もう1つありまして、早く処理したい、早くきれいにしたいということで、分散剤をまくと言いました。これをまいたことによる影響もあります。だから難しいのです。まいたがために、油が分解しやすくなりますが、それから起こる問題もあります。油が海の中にドーンと落ちてきたというのも非常に大きな問題です。それを処理しようとして、分散剤をまいたという事実に対して、その分散剤自体の生物への影響もあるし、そして、その分散剤によって分解が促進された油による影響もあります。だから、非常に難しい話なのです。一概に「始めに分散剤をまいたらええやんか」というものではなくて、それによる影響も我々は考えていかなければならない。だから、これをしたら分解が早くなる、これをしたらよくなるというのでなくて、いろいろな影響が出てくるわけです。当然、油を流さないことが一番いいのですが、油を流してしまったら、それによる影響もあるし、それをきれいにしようとしたがために出てくる影響もあるということ、これは非常に大きなポイントです。

 専門的な話になりますけれども、これらはいろいろな文献からとってきた値です。いろいろな原油があります。1つだけではありません。ベリー原油、マーバン原油、アラビアン・ライト、いろいろあります。それについて、どういうものを使えば分解が早くなるかとか、それによる分解効率はどうなのかとか、世界的にいろいろ研究しているわけで、これはその結果です。

4)微生物による分解と分散剤による分解

 これは微生物の名前です。微生物にいろいろ名前がついていまして、これに食べさせたらどうなるのかとか、違う種類に食べさせるとどうなるのかとか、こういう1つ1つに食べさせるのでなくて、いろいろな微生物が集まった状態、集積系と言いますが、下水処理もいろいろな微生物のかたまりで処理しています。それと一緒で、いろいろな微生物のかたまりで分解させたらどうなるかというので、こういう結果が出ているわけです。1時間当たり1個の微生物によって、3.88×10‐10ミリグラムという、ほとんど分解しないのではないかというような数値です。しかし微生物の数は天文学的なのです。だからこのような小さい数字でも効果はあるのです。このように研究が進められております。

 これは、メキシコ湾でとれた微生物によって、14日で17%ぐらいが分解できたということで結構大きいですね。ここに至っては、14日で大体15%、ここに至っては半分ぐらい。これはかなりですね。こういう結果が出ています。
 これは、我々の下水を処理する活性汚泥ですが、これでやってみると1カ月ぐらいで18.8%ぐらいが分解できているという結果が出ています。
 これは、分散剤を使って、原油のどの部分が分解したかという結果です。

 先ほど言いましたのは、このグラフです。始めの原油はここです。ここには飽和分がこれだけ、芳香族分がこれだけ、アスファルテン分がこれだけ、レジン分がこれだけという状況です。
 これの場合、分散剤なしで原油分解できる菌の集積系です。いろいろなものが集まった菌で分解した結果、大体 500ミリグラムだった原油が 10日目には450ミリグラに落ちている。1カ月後には 330ミリグラぐらいになっているから分解しているでしょうというデータです。
 大切なのは、原油が幾らか分解されて、一番大きく分解された部分です。先ほど、原油を分解するという言葉はないと言いましたけれども、見ていただいたらわかりますように、飽和分が大体 200ミリグラから 300ミリグラぐらいあったのが、ここでは 120ミリグラぐらいに減っているということがわかるでしょう。飽和分が減ったから原油が分解されているということです。芳香族は幅があまり減っていないので、原油の中でもあまり分解しないのだということです。

 次、これはどういう意味かというと、ここでは分散剤を使った。このデータはBですから、分散剤を入れて、同じ条件で分解させたわけです。当然、初めは一緒です。終わりを見たらあまり差がないのですけれども、10日目では少し差があるでしょう。言いたいのは、分散剤を入れたほうが分解が早いでしょうというデータなのです。分散剤を入れたほうが10日ではかなり減っています。けれども、30日だったら、あまり変わらないのではないかという感じですが、ちょっと減っているということで安心したような感じです。
 また、おもしろいことに、ここでは、芳香族分もちょっと減っています。だから、分散剤を入れることによって分解が進み、かつ分散剤を入れない場合は、分解されない部分が分解されるようになった。分散剤というのは、そういうものなのです。
 しかし、先ほど言ったように、私らはこれだけ見ていたらだめなのです。「ほら、分散した。分散剤はいいでしょう」というようなとらえ方をしていたら、研究者としては失格です。このデータを見たら、だれでも説得できます。「ほら、これはあまり変わらないけれども、分解しているでしょう」と。しかし、我々がしなければならないのは、分解は進んだけれども、分散剤による新たな影響は何かというのを考えていかなければ、特に環境を研究する人間としては失格なのです。

 またグラフを見ていただきたいのですが、このあたりでは分散剤を使ったほうが、かなりいいではないかということです。分散剤というのは、全体も下げるし、今まで分解されなかったものまでも分解してしまうものです。
A、 Bは、油を分解できると言われている微生物だけを集めてきて分解させたわけです。
 C、Dは、もう1つ違う能力にたけている微生物を呼んできて、「ちょっと分解を助けてくれ」ということで、助っ人を入れて行った実験です。
 見てもらったらわかりますように、これは分散剤なし、これは分散剤ありということで、明らかに分散剤があったほうがいいということもわかります。これは分散剤ありですけれども、助っ人を入れたほうが、 250ミリグラだから落ちているでしょう。フェナントレンという物質を分解できるものですが、こういうある種特別な能力を持ったものを助っ人として連れてきて分解させたほうが、より分解していくという話です。
 先ほどから何遍も言っておりますが、油というのは、どこが分解されるかが問題です。そのまま分解させるよりも、分散剤を入れたほうが明らかに分解が早い。かつ、それで終わっていてはだめで、分散剤の影響も我々は見ていかなければならないということです。「この微生物が油を分解しますよ」と言われたら、油のどこを何%分解するのですかということを聞いてほしいわけです。多分その人は帰ってしまいます。

4.「分解」とは何ぞや

 次に、わかっていただきたいのは、「分解」の言葉の意味です。非常にトリッキーな、人をだませる言葉です。私が今日言いたかったのは、油は4つの成分が含まれているということと、あと1つ、これが言いたかったわけです。
 先ほどから分解とか、微生物分解、極めて緩慢な分解とか、「分解」という言葉を使っていますが、「分解とは何ぞや」ということが一番大切です。私は学生に必ず言うようにしていることですが、分解したらなくなると思われるでしょう。しかし、「分解」には2つありまして、完全分解と部分的な分解があります。部分的な分解も「分解」と言うのです。「この微生物があると原油が分解できますよ」という言葉を聞くと、分解してなくなってしまうような感じがしませんか。

 これは油とは全然違う話ですが、テトラクロロエチレンといって、洗浄、特にドライクリーニングで使われます。ドライクリーニングで汚れが落ちるのは、こういう溶媒を振りかけるからです。精密機械の洗浄にも使われています。これは危ない物質でもあるけれども、非常に重宝されています。
 クリーニングに出したものを受け取ったとき、ビニールの袋に入っています。あれは、ベランダであけて中身を取り出してから、部屋の中に入れたほうがいいです。あれはこういう化学物質がついています。それで汚れを落としているのです。発がん性があるとは言われていませんが、当然あまり体によくない。ああいうのは、ベランダでビニールを取って、部屋の中に持ち込んだほうがいいのです。
 今、一番問題なのが地下水汚染です。ドライクリーニング工場の地下は、こういうので土壌が汚染されていて、それが地下水にまで達しているという研究結果が出ています。だから、非常に危ない物質でもあるし、気をつけなければならない。
 テトラクロロエチレンが分解すると、トリクロロエチレンになります。Clが4つついているのがClが1個取れるわけです。こっちはHになっているでしょう。これ、また分解したら、ここが取れて、ここがHになっているでしょう。これが塩化ビニルになると3つ取れて1つだけ残っているでしょう。分解しているんです。このテトラクロロエチレンは分解されたわけです。このように推移しているからテトラクロロエチレンを測定しても出てきません。
 だから、分解というのは、その物がなくなっても、後に中間代謝物あるわけです。もとの物質がバラバラになって二酸化炭素なっているのを完全分解と言います。部分分解というのはいまいったテトラクロロエチレンの話のことですが、テトラクロロエチレンは測定しても出てこないから分解したと言えるのですが、「分解」という言葉を聞いたときに、「それは全部分解したのですか。それとも一部ですか」ということを聞いてほしいのです。これは本当に大切なことです。
 これは嘘ではないでしょう、分解しているんですから。なくなったら 100%分解です。しかし、いっぱい残っているのです。実際に分解していって、これは塩化ビニールですが、発がん性があるということがわかっている物質です。
 世の中では、分解してなくなったけれども、もっとややこしいのができているのが非常に多いのです。だから、「分解」という言葉を聞いたときに、ああ、分解した。ハッピーですねという解釈の仕方ではなくて、「何か残っているのですか。完全分解なのですか」というのを聞く習慣をつけていただきたいのです。非常に大切なのです。
 非常にトリッキーなのです。これはなくなっています。けれども、後に何があるかが、我々研究者にとっても非常に大切なのです。石油を分解しても、後、何が残るか。もっとややこしいのが出てきている可能性がたくさんあります。それまでフォローしなければ、本当の研究ではないし、片手落ちです。だから、どうぞ皆さんも「ダイオキシンは分解されました」ということを聞けば、「それは本当になくなったのか、中間のほかのものがあるのか」と聞くことが一番大切なことです。それは絶対ありますよ。私はなにも焼却処理がいけないと言っているのではありません。私は焼却処理は好きですからね。
 一番ややこしいことは分解です。2つあります。どちらも分解です。初めのものはなくなります。けれども、ややこしいのがいっぱい残っているのです。もっとややこしいのが残っているかもしれない。そういうのを確認する権利は、我々市民にも絶対あるわけです。またそういうことを知っていたら、だまされないわけです。
 私の姉の子供が筋ジストロフィーです。これはすごい難病で完全に動けないです。そういう弱みに付け込んで「この特殊な菌が入っているドリンクを飲んだら治ります」とか言って、売るアホもいるんです。ファイブミニとかオロナミンCぐらいの少ない量で 3,000円もするのです。それを姉に売るんです。姉もやはり何かにすがりたいという気持ちがあります。それにつけ込むわけです。私は言ったのです。「こんなものだめだ」って。特殊な菌とか何とか言って、そんなもの効くわけないんですよ。効いたら、世界じゅうの病気治っていますよ。これだけ我々が一所懸命研究しているのに、できないのです。人の不幸につけ込んでいかがわしいものを売りつける人がいっぱいいるわけです。そういうたぐいの人の口ぐせが「分解できる」ということです。今、よくバイオ、バイオといって、医療品とかがはやっていますけれども、一番だまされやすいのが、「バイオで何にでも効きます」というのがありますが、そんなことは絶対にないです。だまされないでくださいね。
 例えばこのフェナントレン分解菌というのは、フェナントレンという物質だけを分解するのです。微生物というのは、例えばダイオキシンを分解するものもある。でも、それが、あれもこれも分解することは絶対ないです。しかし、だます人は、「何にでも効きます」と言う。効くわけないです。そういうのを注意していただいたほうがいいと思います。きょうは、「分解」というキーワードを、ぜひ覚えて帰っていただきたいと思います。
 私も、たまにお年寄りの方から、「この薬はバイオといって効くと言われているけれども、本当ですか」という電話があります。値段を聞くと、べらぼうに高い。私は「そんなの効きませんよ。騙されないで下さい。」とは言うのですが、病は気持ちからですから、もしかして効くかもしれない。しかし、まあそんなことはない。効かないです。全部治ることなんてないし、そんなことよりも、おいしい御飯を食べたほうが身体にいいと思います。だから、我々もそんな胡散臭い商品に騙されずにもっと賢い市民になっていきたいなと思います。

5.まとめ

 今日言いたかったことを言ってしまったら、気が抜けましたが、原油というのは4つ成分が含まれているということ。
 分解という言葉は非常に危なくて、分解と聞いたら、完全分解するのか、それとも何か残るのかというのを確かめていただきたいということです。
 ついでに言いますけれども、浄水器のセールスがあるでしょう。私は、浄水器がだめだと言うわけではありません。大阪でよくあった話ですが、浄水器を売ろうと思って来るんです。「奥さん、水道局のほうから来ました」と言う。水道局の方向から来ているけれども、水道局の人じゃないんです。だから、合っていることは合っている。嘘ではないんです。「水道局のほうから来ましたけれども、奥さんのところの水は多分危ないと思うから検査させてください」と言ってずかずかと入ってきて、水をジャーとコップに入れる。それからコップに薬を入れるんです。その薬は、水の中の塩素分と反応して黄色くなるような薬です。水道水は初めから塩素が入っています。入ってなければ私たちは死にますからね。それを、「ほら、黄色くなっていますよ。これはちょっとまずいですよ」ということで浄水器を売りつけることがよくありました。要するに、水道水は塩素が入っているということも覚えていただきたい。
 なぜかというと、消毒は消毒ですけれども、消毒ならば別にオゾンとかでもいいんですが、水道水というのは浄水場からそれぞれのお宅に運ばれてくる距離が長いでしょう。その間に、浄水場でせっかく殺した微生物が、また生き返ってくるのです。だから怖い。浄水場だけで殺菌してもだめなのです。殺菌効果が残る塩素を入れておかなければ、微生物が息を吹き返してくることもあります。だから、塩素が入っているので、あらかじめ薬を入れてあるコップに水道水を入れて黄色くなるのは当然ですから、「はい、ありがとうございました」と言って、帰していただくようになっていただきたい。「いや、ほんま。これは危ないわ」と言って浄水器を買わないように。そういうことも正しい知恵として知っておくべきかなと思います。