大学等連携事業

富山県立大学秋季公開講座 「深層水と食物」


本講演録は、日本海学推進機構事務局の責任で取りまとめたものです。
講師のご好意により、ここに掲載させていただきます。

平成15年度 富山県立大学
秋季公開講座
2003年11月8日
富山県立大学

講師 葭田隆治
富山県立大学短期大学部助教授

 きょうは、富山湾の深層水を中心にお話をすることになっております。
 今、御紹介ありましたように、私は植物資源学並びに植物の生長制御という植物の内的な問題も扱っております。最近、富山県は富山湾の深層水を有効に利用しようということで、大学も頑張れということになりまして、私どもも微力ながら協力しております。
 きょうお話しする内容は、生物工学研究センターに微生物の専門家で制がん剤の開発などの仕事をやっている古米先生という方がいらっしゃいます。本日、お話しする内容は、共同研究の成果の部分が相当あることを申し添えます。

1.海水とのかかわり

 私ども人間は海水とのかかわり合いは大昔からであります。それは当然のことだと思います。日本の農書には、貝殻を砕いて肥料にしています。同時に、昔はおけで海水を汲み田んぼや畑へミネラルの補給に使っておりました。すなわち、海の貝殻と海水の2つを利用して田んぼや畑にミネラルとカルシウムの補給を行っておりました。あとの窒素や燐酸はどうするかというと、特に窒素は人糞を使っていました。ですから、昔の日本というのは、資源循環型社会を構築していたということです。捨てる物は何もないということです。
 一方、ヨーロッパでは汚物を川へ流す習慣がありました。例えば、有名なイギリスの国会議事堂はテムズ川の横にありますが、その川に汚物を流すので臭くて議会が開けなかったという記述もあります。でも日本は皆さん御承知のように、昔から人ぷんや家畜ふんを肥料にして作物の栽培をしていました。不足するものは海水を利用し補っていたということです。
 現在の主要な肥料成分であるマグネシウムや燐酸は、大体海が起源です。特にマグネシウムは、現在でも海水から取っています。そういう意味で、海水と私どもの生活のかかわり合いというのは非常に密接で、昔も現在も続いているということをまず御理解いただきたいと思います。
 また、食品分野でも、現在海水が使われております。例えば、輪島のほうに寄せ豆腐というのがございます。曽々木海岸のあたりに行きますと、極めてきれいな表層水が取れます。この海水を取って現在でも豆腐をつくっています。ですから、昔も今も私どもは海水の役割や機能を十分理解して、使っているということです。これを少し科学的に進めようというのが、きょうお話しする中身です。
 今日は民間の方もいらっしゃると思いますので、深層水というのはどの程度もうかっているのかという話からさせていただきたいと思います。
 高知県の高知新聞によりますと、高知は、平成13年の4月で100億円突破したと自慢していますが、こんなことを恐れることは毛頭ありません。というのは、富山県は昨年度(平成14年度)には1,500億円余りの深層水を使った商品の売り上げをしています。そのうちの1,400億までアサヒビールが赤ラベル発泡酒ビールで持っていってしまいました。富山に残っているのは100億ぐらいしかありません。ということになると、高知県と何ら変わらないということになるわけですが、総額からすれば富山のほうが1,500億ですから、大変な利益を上げているわけです。
 これは裏話ですが、深層水はどこから出ているかというと入善町から出ています。1,500億も売り上げておれば恐らく何億というお金が入善町に入っているのではないかということで国税の査察が入りました。しかし、残念ながら水の代金は何十万にしかならないことがわかり、がっかりして帰ったという笑い話があります。要するに、国税が入ったという事実が非常に大事なことで、それだけ税務署も深層水の有効利用やできる製品の価値が相当あり利益も高いのではないかということで査察に入ったわけです。
 このように物を創るとなると、ただ創れるわけではありません。とくに、新しい技術の権利については知的財産所有権ともいいますが、深層水関連には山のように特許が出ています。皆さんが深層水を使って物をつくって売ることはできます。1億でも2億でももうかるかもしれません。もし、それが特許に触れていると、もうかった時分に分け前をごっそりと相手企業に取られてしまいますから、注意が必要です。情けないことに富山県は深層水特許については後発県ですので、富山県のもつ特許は数えるほどしかありません。そこで私どもは、深層水を電気分解して機能水をつくり製品をつくるというところに焦点をあてたわけです。この技術については、高知県も気がついておりませんでしたので、私どものひとり舞台ということで、100億円の一部分を担ったということになります。

2.深層水の特徴

 今、深層水と人間とのかかわりあいについての話をしましたが、もう少し、海洋深層水の特徴について理解を深めたいと思います。深層水とは光が届かない深さから以深を深層水と定義しています。学会によって多少定義は違いますが、日本海固有水と呼ぶこともあります。
 よく講演会などに呼ばれて行きますと、毎日2カ所で取水していると深層水はなくなるのではないかという質問を受けます。きょうは質問を受ける前にお答えしておきますが、絶対になくなりません。というのは、海水が地球全体を循環しています。これを大循環といっています。日本海の固有水というのは、シベリアのほうから日本海へ水塊が落ち込んできます。シベリアは寒いので、水温も低く比重が重いので日本海の下のほうに潜り込んできます。表層水の場合は、対馬暖流とか黒潮などで構成され、速い単位で循環しています。測定した人はだれもいませんが、日本海深層水というのは約50年で1回循環するだろうと言われています。
 高知県と富山県の深層水のどこに特徴があるかというと、富山県の深層水はシベリアのほうから日本海へ入ってきますので、水温が2度しかありません。高知県は10度あります。2度と10度の違いは非常に大きな違いです。私どもは水産試験場の中に、アンダークーリングという地中温度を冷やす栽培システムを持っています。この冷熱を利用する今年度の実験は、まず冷蔵庫の中に深層水を循環させて湿度を保持しながら野菜を貯蔵しようというシステムをつくっています。大手の電気メーカーから湿度70~80%を保持する冷蔵庫が出ていますが、私どものシステムは、深層水そのものをコイル状の冷却管の中を循環させ、庫内の湿度を保ちながら冷やし、野菜や穀物を貯蔵しようというものです。
 なぜ、このシステムがいいかということになりますが、野菜の貯蔵の一番の大敵は乾燥です。ですから、皆さんは水分が飛ばないようにラップで包み冷蔵庫に入れております。この事により、野菜の抗酸化機能性物質が高く維持されます。例えば、ホウレンソウやニンジンのビタミンCが高まることなどが実際わかっております。ですから冷蔵庫に入れて貯蔵するだけではなく、皆さんの健康を左右する抗酸化機能物質の保持や品質を高めるなどの機能をもつことが大事なのです。この様に、低温と湿度の保持機能は、野菜や果物の品質保持に最もふさわしいといえるでしょう。 
 他の特徴としては、深層水の塩分は表層水に比べて大体0.1%程度しか濃くありませんが、菌数が非常に少ないという特徴があります。これは水温が低いので、高知県に比べて極めて菌数が少ないということかもしれません。高知を目のかたきにしているようですが、富山県としては深層水に関して何としても勝たなくてはいけないという意欲だけをかっていただきたいと思います。
 また、深層水は表層水に比べてどういう成分が高いかということですが、特に硝酸、珪酸、燐酸といった成分が高くなります。要するに、濃度の単位は非常に低いので、飲料水にしても健康を害するということでは決してありません。

3.深層水の直接的利用

 そこで、私共には具体的に何ができるかということになるわけです。まず、深層水は直接利用について話しを進めます。一般論になりますが、ニガリを利用した豆腐あるいは食塩つくりの材料として直接利用できます。次に、食塩の利用で多いのは漬物類です。最近の当研究室の取組みについて紹介します。これは八ッ頭という品種の赤色ズイキです。実はこの赤色はアントシアンという抗酸化機能を持つ物質です。きょう、お集まりの皆さん方は勉強しようという若々しい方ばかりですが、恐らく日ごろから抗酸化機能を持つ食品を常に摂取していらっしゃるのではとお見受けします。このズイキの抗酸化機能を失わせないような食塩水の使い方も私どものところで研究しています。具体的には、深層水で漬けると、アントシアンの抜けが防止され、機能性が維持されるということです。
 他に、小矢部市にある伊藤ハム食品㈱でつくっているウインナーや魚肉ソーセージは必ず食塩を使います。現在、こういう大手の会社では食塩1キロ600円ぐらいのものを使います。ソーセージは高いどおりです。恐らく皆さんが使っている塩は1キロ200円か250円だと思います。それは精製塩ですので味が非常にきつく、舌にぴりっときますが、深層水塩などの天然塩は非常にマイルドな感じがします。
 また、あとで詳しく話しますが、氷見のいきいき地ビールでは、深層水を用いた地ビールを製造し好評を得ております。このビール製造の場合は、醗酵が早くなります。

4.新薬と化粧品の開発

 富山県立大学の極めて優れた研究について紹介します。重要な点は、深層水由来の微生物を取り出し、その二次代謝産物から薬をつくり出そうということです。生物工学研究センターの古米教授を中心とするグループは、新聞で紹介されたようにアリソスタチンやコシノスタチンといった制がん効果を持つ抗生物質を見つけ出しました。この発見が新聞に出たとき「私の家内が余命幾ばくもないからその薬を分けてくれ」という電話が大学へかかってきたそうです。しかし、それは薬事法に引っかかりまして、それを出したほうも飲んだほうも罰せられますので、まことに申しわけないけれども、お出しできないということで決着したそうです。一般に、抗がん剤一つつくるとなると、安くても1,500億円ぐらいのお金がかかります。簡単に薬はできません。しかも、それは10年、15年とかかります。今、ここで私どもが大発見しても、それが日の目を見るまで私どもは生きていないくらいの年代が必要になります。それだけ新薬の開発というのは大変なわけです。
 一方、深層水からどのように放線菌を分離するかというと、古米教授によると、メンブランフィルターというろ過膜がありますが、これに1リットルの深層水を通過させます。すると、0.2マイクロメーターの穴の中を放線菌は通過しませんので、このフィルターを直接培地の上に乗せれば、そこに有用な菌がたくさん出てくるそうです。もちろん必要ない雑菌も入りますが、それを選択培地で落とし、有用な菌だけを集めるという手段が有効だそうです。
 実際、どれだけ分離されたかというと、古米研究室では計38菌株とれています。ペニシリウムの仲間が非常によくとれています。皆さんペニシリンを思い出していただきたいのですが、これはペニシリウムという放線菌の仲間の一属からとられているわけです。このペニシリンで結核が根治できたことは忘れることができないでしょう。
 また、分離された放線菌から、抗生物質であるアリソスタチン、コシノスタチン、ワタセマイシンといった生産菌がとれました。本来ならば、これが市場に出れば大もうけということは間違いないわけですが、先ほど申し上げましたように新薬が出るまでに15年ぐらいはかかるということなので、大金はここにいる若い学生さんあたりがもらう権利が生ずるかもしれません。分離された抗生物質アリソスタチンAとBは、乳がん、脳腫瘍、大腸がん、肺がんや胃がんなどのがん細胞も殺す力があることがわかっています。この確認は、東京のがん化学療法センターで行っているとのことです。
 このがん細胞をやっつける機構ですが、1つはチューブリンの合成阻害というのがあります。皆様はタキソールという乳がん治療薬をご存知のことと思います。タキソールというのは、カナダの研究者が、イチイの木の皮からとり出した物質です。これが非常に乳がんによく効くと言われています。しかし、1人の人間の乳がんを治すのに約50本のイチイの木が必要だと言われています。実はおもしろいのは、この成分はイチイの木が産生するのではなく、イチイの木に寄生する放線菌が分泌するということがわかりました。こういう例は、フグのフグ毒もそうです。フグそのものが毒をつくっているわけではなく、フグの体内の中に存在している放線菌がつくっているのです。この2例が示すように、放線菌の非常におもしろい習性がそこにあります。しかし、加賀百万石の伝統文化の中にわざとフグの卵巣を塩漬けにして食べるというすばらしい裏わざがあります。塩水に漬けて3年ほどかかります。すると、フグの毒が解毒されてしまいます。これはすごい知恵を持った食文化だと思います。要するに、がんが私どものあちこちにできたとしても、外科的に取れる部分は現在のところ問題が少ないようです。問題は、血液中を移動する転移型のがん細胞が一番怖いわけです。それは正常細胞となかなか区別できないわけです。ですから、皆さんがもしがんになったとすれば、お薬を飲んでいるのはがん細胞の転移を防ぐため血液中の抗がん剤の濃度を高める療法をやっているのだと思います。例えば、大腸でがんができてもそれが肺へ転移したとき、がん細胞は生きていかなければいけないので、肺の細胞に血管を新生させて肺から栄養分をとってだんだん大きくなるということです。ですから、がんの血管新生阻害剤(チューブリン合成阻害剤)を見つけると、がん細胞の転移は怖くなくなってしまいます。
 一方、深層水を化粧品にどう利用するかというお話をしたいと思います。
 私共が開発した石けんは、麦飯石という石を素材にした石けんです。もし、皆さんが不幸にしてお亡くなりになると、「薬石効なく」と新聞に書かなくてはいけなくなります。薬石というのは、この麦飯石のことをいっています。古代中国では、昔は全部石で病気を治していました。この麦飯石に類似した石は岐阜の山からとれます。基本的にはこの石を微粉にし、深層水でゲル化し石けんをつくっています。
 また、深層水や薬石を混合したクリームをつくりました。これは機能性がありまして、主として皮膚の活性酸素を消去やアトピーの軽減効果ももっております。

5.食品製造

 この分野は、最も広範囲に深層水やその食塩が利用できます。
 10月に学会で、名古屋大学に行きましたら、「名古屋大学ビール」がありました。これは負けてはいけないということで、12月には「富山県立大学ビール」をつくろうということになりました。今、その計画を県のプロジェクトとしてやっています。私どもの目的は、富山県の6条大麦と深層水を使ってビールをつくろうということです。
 また、味噌もつくっています。これは普通の味噌ではありません。これは発芽玄米こうじ味噌といって、発芽米をこうじにしてつくるわけです。もちろん原料のコメとダイズは無農薬栽培です。玄米発芽米をこうじにするというのは技術的に非常に難しいのですが、本研究室では成功しました。
 あとは日本酒です。これは入善町の林酒造と黒部市の銀盤酒造でつくられています。

6.農作物への適用

 次に、アンダークーリングの栽培システムについて紹介します。地中にこのように配管をしています。ここに2度の深層水を流すわけです。夏場の気温が三十二、三度あっても地中の温度は二十二、三度しかありません。地中温度を二十二、三度に下げて何をするか、これが一番大事なことです。例えば、富山では夏場にホウレンソウはできません。ホウレンソウは25度以上の地温があると発芽しなくなります。発芽しても種子が腐って枯れてしまいます。したがって、ホウレンソウの栽培では、やはり地温を低くしなくてはいけないということで、このクーリングシステムを使いますと立派なホウレンソウができます。
 また、この施設を使ってチューリップの促成栽培をしています。チューリップも地温が15度以下でないと球根が腐ったり、あるいは病気が出て花が咲かなくなったりしてしまうということがあります。作物には、適温があります。この装置は水産試験場の中にあります。場長さんが笑っていましたけれども、「水産試験場の中になぜ作物が植えられているの?」と言う人がいるそうですが、深層水の有効利用の一環としてやっているのだと説明していただいております。

7.電気分解装置の開発と間接利用

 今度は、いよいよ深層水の間接利用である電解機能水の話しです。要するに、この部分は高知県にない技術といえましょう。まず、原理について説明しますが、電解分解というのは非常に単純な原理で、電極板(隔膜)を真ん中に置いて、そのプラス側には酸性水、マイナス側にはアルカリ水ができます。酸性水側には次亜塩素酸という成分が出てきます。皆さんが飲んでいらっしゃる水道水は次亜塩素酸ナトリウムで消毒されています。この物質は殺菌効果をもっております。次亜塩素酸は、次亜塩素酸ナトリウムの数十倍から数百倍殺菌効果が高いわけです。現在、歯医者へ行きますと、今まで水銀で消毒していましたが、それを電気分解水の酸性水でやります。また、胃カメラのチューブの中を今まで薬品でやっていましたが有害菌は完全には死なないこともあります。それともう1つ怖いのは耐性菌ができるということです。要するに、消毒剤で怖いのはお薬でも何でもそうですが、耐性菌ができると処置法がなくなることです。この電気分解水は、耐性菌はできません。みんな殺してしまいます。ですから、病院では、特に内科や口腔外科でよく使われています。一方、アルカリ側のほうには何の機能があるかというと、この水にはカセイソーダが生成されるのでpH12になります。もう1つは、水素が飽和になります。そのことが大きな機能性を持つことになります。
 次に、この機能水をどのようにつくるかと言いますと、食塩があればいいということです。ですから、海水そのものを電気分解しても酸性水とアルカリ水ができることになりますし、もう1つは、希釈してもできます。食塩を植物にかけると枯れるのではないかと言われています。確かに濃くなると枯れますが、そういった場合は、塩化カリ溶液を電気分解し機能水をつくりますとKの補給にもなり枯れることはありません。
 では、本当に殺菌効果があるのかということですが、黄色ブドウ状球菌とか大腸菌、カンジダなどいろいろあります。二重丸がついているのは、非常に効果が高いということです。
 普通の精製塩を電気分解すると、その酸性水でも納豆菌の仲間にはあまり効果がありません。しかし、深層水を使うと30倍に希釈しても非常に効果が高いということがわかっています。
 ここで大腸菌に関しておもしろいことを少し御紹介しておきます。私どもは、厚生省の試験研究機関である国立感染研究所と一緒に共同研究をやっております。これはハエの口の部分です。ハエの口の部分を拡大するとこうなります。要するに、ここにO-157が巣くっているわけです。皆さんは恐らく大阪のカイワレダイコンの騒動を知っていらっしゃると思いますが、あのときは大腸菌が水の中にあったのではないか、あるいは手が汚れていたのではないか、近くに家畜の排泄物を堆積する場所があったのではないかといろいろなことが言われました。このO-157菌をいち早く伝播したのは、ハエです。ハエは口のところに大腸菌をたくさん持っています。1匹でもあちこち飛んで歩けば、O-157でみんな汚染されてしまうということです。ですから、ハエのO-157の伝播というのは非常に大事です。電気分解でO-157という大腸菌は殺せます。もし、食品工場等を経営している方がいらっしゃれば、ハエがいるということは非常に危険性が高いということになります。
 次に、野菜や魚の殺菌効果について紹介しましょう。これは能登の夏の岩ガキです。夏場の岩ガキを食べるのは富山と能登周辺です。私どもは研究室でも共同研究をしているメーカーの方から夏にカキ貝をもらうのですが、ここにいる学生さんと一緒に夜な夜な食べると、夏場のカキは10人食べると2人は大体翌日下痢をし、講義を休みます。この原因はたくさん生息する微生物です。私のように野蛮な人間は、幾ら食べても全然病気になりません。デリケートな人だけがなります。それは、こういう有害なカビあるいはバクテリアが生息しているから食中毒になるということです。しかし、驚くべきことに酸性水で処理すると菌数がほとんど見られなくなってしまいます。アルカリ水でも効果があります。なぜかというと、電気分解の装置の仕組みで次亜塩素酸が少し含まれていますので、酸性水に比べて効果は劣るけれども、殺菌は可能です。カット野菜(ニンジン)の殺菌にも同様な効果が認められます。
 魚屋さんに並んでいるイワシやアジでも菌数がすとんと落ちることになります。ここに10の5乗とありますが、この数が小さくなればなるほど菌数は少ないということを意味しています。
 それでは、どんな器械で酸性水やアルカリ水を作るのでしょうか。
 これが、私どもが高岡の大木樹脂という樹脂会社と一緒につくった電気分解装置です。現在のところ、海水を直接電気分解する電気分解装置はありません。市販されているはアマノやホシザキなどの大手メーカーから出ていますが、それは水道水を電気分解するか極めて薄い食塩水を電気分解する装置ですが、私どもは直接海水を電気分解する新しい装置をつくりました。
 もう少し電気分解装置について説明しましょう。これは電気分解の装置で、2段分解を行っています。要するに、市販のものは塩素濃度が大体50ppmが最高になりますが、私どもの器械は2,000ppmまでいきます。最近つくった次亜水の装置は6,500ppmまでいきます。すなわち、殺菌作用には、生成される次亜塩酸が有機物と反応し分解されるので、高い濃度が要求されます。

8.魚市場の床面の魚の洗浄・殺菌

 先ほどの魚の殺菌の話が出てきたわけですが、富山の漁港へ行きますと、大体コンクリートの床面に魚を並べます。表日本の焼津などへ行きますとカツオなどはみんな箱に入れます。富山のブリなんかは大型魚ですから、箱に入れるといってもすぐに箱が見当らないわけです。どうしてもコンクリート面に並べるほうが便利です。このコンクリート面の汚れがひどいわけです。それを殺菌しなければいけないということで、先ほどの海水型の殺菌装置をつくらせていただいたということです。そこで海の水を直接電気分解して、酸性水を床にまけば非常にきれいになり、魚も汚れないということになります。
 これは実際に氷見の魚河岸でやった実験です。朝どれ魚でもシャーレ上でカウントできないくらい無限大に菌がたくさんいます。ところが、酸性水を使いますと、すとんと落ちてしまいます。ゼロになるということはありませんが、菌数が大幅に減ってしまいます。ただ、シイラなんかの大型魚は、なかなか簡単には菌を落とせないという欠点もあります。
 とくに、菌数が多いのは魚のえらの部分です。アジのエラの部分ですが、ここにもやもやとしたものがあります。実は、これは粘土鉱物です。粘土鉱物は何か、私どももわからなかったのですが、金沢で学会がありましてこの話をしていましたら、金沢大学の先生がこれはスメークタイトといって粘土鉱物であることが明らかになりました。要するに、魚のエラの部分に粘土鉱物が付着し、この部分が菌で汚染されやすいということになります。
 でも、ご安心下さい。私たちはこういう汚れた魚をきれいにする技術を知っているわけです。例えば、酸性水で洗いますと粘土鉱物はみんな取れてしまいます。粘土粒子というのはマイナスに荷電しています。プラスイオンが来ますとイオンの交換が起り、マイナスイオンの変りに電解水で生成したプラスイオンがくっついてしまうわけです。だから、魚がきれいに洗滌できることになります。

9.野菜と果樹の洗浄・殺菌

 実は、今、野菜も汚れています。この話できょうから野菜を食べないという気持ちになっていただいたら困りますが、一番困るのはカット野菜です。皆さんは大きなものを買ってきて食べられると思いますが、うちの学生さんあたりは一人住まいが多いものですから、カット野菜を食べます。カット野菜は夏場にとても菌による汚染度が激しいものの一つでしょう。いかにしてそれを除菌するかというのが今求められています。私どもの研究室にも相談にこられます。
 実験の結果、野菜表面の大腸菌みたいなものはゼロに落とすことが可能になりました。しかし、電解水の欠点というのは表面にあるものは殺せますが、組織の中にいる微生物までは殺せません。表面殺菌のみではやはり限界があります。
 これは近くのスーパーで売られているカット野菜ですが、実は群馬から来ています。したがって、カット野菜のように流通過程で野菜が汚れますから、それをできるだけ除菌する必要があるということになります。
 他に、コンビニにはソバが売られています。このソバはうどんに比べて菌数が多いのです。この菌数を落とせないかということです。前半の下坪先生から、作物の話で皆さんはいいことをお聴きになったのに、私の話でソバは食べないということになると困ります。ただ、ソバの例のように菌で汚れているものをきれいにする除菌効果が、この電解水にあるということを御承知おき願いたいということです。
 一方、電解水には漂白効果があります。これは、わざと紅茶で布を汚しておきまして、漂白するわけですが、有効塩素濃度250ppmぐらいで非常に白くなります。皆さんも御承知のハイターは次亜塩素酸ナトリウムが入っています。それを入れることによって漂白します。電解水というのは非常に漂白効果が強いということです。
 次に、作物栽培における除菌の話しをしましょう。例えば、夏場のネギというのは、1本100円から150円します。農家がなぜ困るかというと、軟腐病というネギの軟白部が腐る病気が出るからです。ですから、2日と夏場の室温に放置できません。必ずべとべとになって食べられなくなってしまいます。ですから、1時間でも2時間でも、半日でも病気の症状を軽減する効果が求められます。この酸性水に軽減効果があります。効果は、酸性水が最も強く、アルカリ水、混合水の順に効果は弱まります。
 先ほどから電解水の酸性水の話をしておりますが、電解水は全て長期間使えるというものではなくて、非常に分解しやすいという性質があります。そのため次亜塩酸濃度の安定のため、私どもはpHを調整するということを行っています。安定するpH範囲というのは4から6の間です。また、pH4から6の範囲で電気分解水の酸性水をつくり、その氷の上に野菜を並べたり魚を並べたりして鮮度を保つことも可能です。これは、電解水機能型の氷と呼べます。高岡の某すし屋さんに行きますと、そういうことを現在でもしています。だから、非常に新鮮な感じで食べられます。
 次に、この殺菌効果のある酸性水を、手の消毒に適用してみました。給食センターの職員の方の手を拝借し菌数を調べますと、洗浄前だとこれだけ出てきます。ですから、職員の方は手袋をはめてやっていらっしゃいます。しかし、酸性水で洗うとゼロの状態になります。ですから、こういう電気分解の装置は、できるだけ給食センター、幼稚園や小学校の給食に携わっている方に推奨したいものです。病院の職員の方々には電解水を使って消毒していただければ、抵抗性の弱い人たちも非常に助かるだろうと私どもは考えています。実際に、国立感染研究所の先生方と一緒にこういう運動をしています。
 一つの例について示します。これは昆布じめの会社の床です。非常に汚れています。もちろん、床に落としたサシミを直接食べる人はいないので危険性はないと思います。こういうところを酸性水で消毒すると全くいなくなってしまいます。
 しかも、この酸性水は先ほど申し上げましたように耐性菌が出ませんので何回使用しても安全です。酸性水というのは、病原菌のDNAを破壊してしまうので、耐性菌は出ないということです。

10.深層水の化粧品への応用

 次に、食物と関係のない化粧品について話しを進めることにします。
 これは、石英斑岩という麦飯石に類似した岩石です。これを超微粉にし、石けんやクリームあるいは美顔用に泥パックもつくった話しです。
 ゴルフの好きな人は炎天下にやりますと、皮膚に活性酸素が発生します。この酸化物を早く消去するかということは大事なことです。女性の方は用心深いですから、外へ出る前にUVカットクリームを塗られるわけです。しかし、このクリームでは生成した活性酸素を消去できないわけです。男性の方は、UVにより生成した活性酸素を早く消去するということが重要なのです。すなわち、事前に防御するか事後に消去するか、同じことだろうと思いますが、アフターケアの面からすれば、消去する剤もまた必要になります。
 それでは、なぜ、これに深層水が絡んでくるかということが本日の話題のポイントです。理由は、超微紛にした石英斑岩に深層水を入れるとゲル化します。変りに水を入れてやると、撹拌しているときはゲル化しますが、ものの二、三分もすると沈殿が起こって二層に分離してしまいます。これでは製品になりません。おもしろいことに、深層水を使うとゲル化し、ドロドロになって、そのまま数ヶ月放置しても変りません。さらに、このゲル化物に石けんの素材を入れ固形石けんを作ります。この石けんを使って皮膚の活性酸素が落ちるか落ちないかという実験をやりました。実験では、活性酸素を発生させる人工物をネズミの皮膚に塗りつけています。その結果、乾いたのち洗ってやりますと、活性酸素は消えてしまいました。人間の皮膚は直接紫外線に当たりますから、活性酸素をたくさん生成します。それを、いかに消去するかということも皮膚がん予防の面からも極めて大事なことです。
 一方、近年、アトピー症状でお困りの方もたくさんいらっしゃると思います。この例は、私どもの部屋で働いている若い方ですが、小さいときからアトピー症で困っている方です。ところが、この石英斑岩を入れたクリームを塗りつけますと、14日後にかなり症状が軽減しました。それまでは、内科に行ってお薬を飲んだり、あるいは皮膚科へ行って塗り薬をつけたりいろんなことをやっていたそうですが、結局は治りませんでした。でも、私どもの開発したクリームをつけるとここまで治りました。特に、かゆみがおさまったことが最もよかったと言っています。一般に、アトピー症は内科的な症状ですから治すことはなかなか難しいのですが、かゆみさえとまればかくことはないので、症状が進行することはないと思います。かくことによって、菌が入ってただれたりはしなくなるということです。しかし、なぜ、アトピー症を軽減するかについての科学的な根拠はわかりません。現在進めているところです。1つは、活性酸素そのものが深く関与するのではと推察しております。

11.深層水と飲料

 楽しい話になってきました。ビールの発酵に深層水の効果が高いことの話しをします。
 これは「めざめる」というビールです。きょうは講義室の前に20リットル持ってきています。車でない方は、飲んでみていただきたいと思います。
 ビール発酵に深層水を入れると、酵母による発酵が非常に早まるということです。要するに、深層水を少し混ぜると、発酵が2日間早まります。普通、ビールは仕込んでから12日でできます。それから熟成をして1カ月くらいで出荷するというパターンをとりますが、発酵期間を短くすれば、それだけビール会社は回転が早くなるので収益性も高まってくるということです。当然ながら味も変り、市販の大手ビール会社に比べて格段にうまくなります。私どものつくった「めざめる」というビールは、ドイツで銀賞をもらっています。大学でもこの程度のことはできるということです。同じことが日本酒でも言えます。日本酒の発酵はこうじ菌ですが、深層水を入れるとこうじ菌の活性が非常に高まってきます。理由の1つは、深層水にある微量元素が複雑にからみあっていると思います。しかし、33種類くらいの元素が深層水の中にありますので、それを1つ1つチェックするのは難しいわけです。現在のところ、この元素があるから発酵が早まったのだと本当は言いたいのですが、言えません。もう少し研究のための時間をいただきたいと思います。
 次にアルカリ水飲料水を紹介します。ビールと同様にアルカリ水も試飲できますので、ぜひお試しいただきたいと思います。このアルカリ水は特許製品です。高知でも深層水の水を売っています。1本500ccで150~160円で売っています。
 皆さんは、不思議とこういう指摘をされないですが、ガソリンはガソリンスタンドに行くと1,000ccで100円です。水は500ccで170円です。そんなばかなことはあるかと驚かれますが、実際そうなのです。なぜ、富山にこれだけの水資源がたくさんあるのに、いち早くそれを商品化しないか不思議です。ガソリンは、クウェートやイラクから運んできて、100円で売っています。
 さて、このアルカリ水はどういうところに効果があるかということになります。人間の体によく効くことをおしゃべりすると薬事法にひっかかったりしますのでしゃべりませんが、これを食品に使うと、食味が大きく変ります。例えば、御飯を炊くと古いお米でも非常においしく炊けます。きょうは平成9年度の古い米をこの水で炊いて食べ比べをしていただこうという催し物もあります。大学の公開講座も変わりました。話だけではないです。実物を用意し、試飲や試食を行うことも可能になっております。
 もう1つの利用の仕方は、これで焼酎やウイスキーを割っていただくと、非常に口当たりがよくておいしく飲めます。欠点は、飲み過ぎるということです。愛飲家の方々には、家にお帰りになりぜひお試しいただきたいと思います。これは富山化学と県立大学と富山県の三者で特許をとっています。このアルカリ水の特許については、高知県は大変悔しがっています。
 他方、最も変った利用の仕方は、食品からのうまみ成分の抽出効果が高いことが強調されます。富山ではラーメン祭りというのがあります。実は、このアルカリ水を使うとラーメンが非常にマイルドになるということがわかりました。この理由として2つあげられます。1つは、とりがら、白えびや煮干からのうまみ成分の抽出効果が高くなることならびに2つ目は食品から出る油が水にほどよく混ざることなどが深く関係していると推察しております。
 また、富山にはニシンの糠漬けがあります。しかし、表面の酸化した油が味を悪くします。このアルカリ水で洗っていただくだけで、油がみんな浮いてしまいます。きょうは、アルカリ水を用いたニシンの糠漬けを小矢部市松沢地区の野菊の会の農家さんがつくったものを、食べていただこうと持ってきています。市販品とどこが違うかというと、表面の酸化した油をみんなとっていますからあっさり味になっていますから、若い方でもおいしく食べられます。これまでは、ニシンの糠漬けを漬ける農家さんは非常に魚臭で困ったのです。ハエがいっぱい来るでしょう。でも、ことし6月に漬けこんだわけですが、非常に衛生的でハエもこなくて、しかもでき上がった糠漬けがあっさり味にできました。要するに酸化した油をとったのがよかったと思っています。これら2例が示すように、大学も皆さんのお役に立てる場面もあるのです。大学は教育だけではないのです。こういう商売品開発の支援も積極的に行っています。その特徴は、科学的な根拠に基づいて製品をつくっているということです。
 最後になりましたが、深層水と漬物についてお話しをします。このアルカリ水で漬けますと、1カ月放置してもこのように緑が保たれます。現在、皆さんがお食べになっている、例えば、京都の漬物でもみんな真っ青です。あれは全部着色をしています。普通は食塩に漬けると、ものの1週間もすれば茶褐色になってしまいます。でも、アルカリ水と深層水塩で漬けますと野菜の緑が長期間維持することができます。
 以上、私の持分の時間もきたようですので、もしも、これ以上の詳しい話をお聞きになりたい場合は、皆さんのお子さん並びにお孫さんを大学に入れていただければこの話の内容がさらに濃いものになるでしょう。
 きょうは御清聴いただきましてありがとうございました。