大学等連携事業

富山県立大学秋季公開講座 「黄砂の飛来-黄色い空-」


本講演録は、日本海学推進機構事務局の責任で取りまとめたものです。
講師のご好意により、ここに掲載させていただきます。

平成15年度 富山県立大学
秋季公開講座
2003年11月15日
富山県立大学

講師 渡辺幸一
富山県立大学講師


1.黄砂の飛来の状況

 昨年、富山に来て、黄砂の多さに驚いた。
 黄砂現象とは、中国大陸のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠で、春先に砂が巻き上げられ、1,000m以上の上空に上がったものが、落ちながら遠くへ運ばれているものである。

 北京市内でも、ひどい黄砂に悩まされ、昼でも車のライトが必要なことがある。

 中国では、沙塵暴と呼んでいる。最近は、砂でなく沙を使っているようだ。また、オリンピックを控えて、精力的に研究が進められており、大会はもっとも黄砂の可能性少ない時期に開会されるようだ。

 立山の積雪の断面を見ると汚れた層が見えるが、これが飛来した黄砂による汚れである。

 九州・沖縄と並んで、日本海沿岸地域で黄砂現象が見られる。
 黄砂の飛来の記録は、各測候所の気象官の目視でその有無を判断し、その地点数でなされる。
 2000年以来、3年間、黄砂現象の観測数が飛びぬけて多くなっていたが、2003年の春先では、極めて少なく、初観測も3月25-27日で遅かった。
 これは、発生源で冬に降水量が多かったこと、春に強風が少なかったことのためとされている。


2.黄砂の正体

(1)エアロゾル

 「エアロゾル」とは、気体中に含まれる液体と個体微粒子である。
 これには、各種のものが含まれ、黄砂はこのうちの鉱物ダストに含まれる。
 黄砂の研究には、エアロゾルの大きさ・量の分析が必要である。
 概ね半径1μmを挟んだ大きさである。
  硫酸エアロゾル等は0.5μm強の大きさ、黄砂は5μm程度の大きさである。
  北京の観測では、5μmモードの粒子が多い。
 ちなみに、雨粒は2mm、霧粒は0.1mm、雲は10μm、花粉は10-50μmで、エアロゾルはこれらよりも小さい。

(2)何が重要か

①放射への影響
 光を吸収・散乱するともに、雲の形成とその寿命にも影響し、地球の温暖化、寒冷化をもたらす。
②健康・自然環境への影響
 大気汚染・酸性雨など。

(3)放射によるエネルギーの流れ

 地球外への後方散乱、地上方向への前方散乱がある。
 CO2などのいわゆる温室効果ガスでは、方向性が明確で、地球温暖化に影響することがはっきりわかっている。
 しかし、鉱物ダストは、非球形であり、その方向性はよくわかっていない。

3.鉱物ダストの観測

(1)観測方法

①直接観測
  地上あるいは飛行機等で粒子を直接観測。
②衛星による観測
  衛星写真の分析。
  アジアでは西風により拡散、アフリカでは東風により拡散していることが一目でわかる。
③ライダーによる観測
  レーザーレーダーであり、レーザー光の反射を観測。

(2)鉱物ダストの分析の困難性

 沙漠の面積・位置が年々変化し発生源が特定されない。
 地上面の状態により発生が異なる。 降水により発生し難くなる。
 非球形であり、放射性能が分かり難い。

(3)パーティクルカウンターによる観測

 レーザー光のエアロゾル粒子の散乱から、粒子の大きさ(5段階)毎の個数(濃度)を測定する。
 実際の観測結果では、通常時には、0.3-0.5μmでは、1.00E+8#/m3(1m3中1億個)程度、5μmでは、1.00E+3#/m3(1m3中1千個)-1.00E+4#/m3(1m3中1万個)程度の値が出るが、黄砂の飛来によって、この5μmモードの値が飛び上がる。

 2000-2002年の春先の飛来の急増で、2003年の飛来の観測を期待していたのだが、時期が遅れて、わずかしか観測できなかった。
 2002年には、秋(11/12-13)にも大規模な飛来があり、小杉でも機器の調整運転と重なり観測できた。富山測候所でも、nssCa2+によるpHの上昇が観測されている。天気図と合わせて見ると、モンゴル付近で低気圧が砂塵を巻き上げら、日本まで移動してきたことが理解できる。

4.黄砂の降水成分に及ぼす影響

 黄砂粒子にはCaCO3などのアルカリ成分が含まれる。
 この成分は、非海起源カルシウムイオン(nssCa2+)と呼ばれる。
 このため、酸性雨は中和される。この結果、春の降水のpHは上がる。

 2001年3月には、多摩丘陵で黄砂現象を観測し、飛来が確認できた。nssCa2+の増加も観測できたが、酸性雨を中和させるまでにはならなかった。
 なお、林内雨の観測では、乾性沈着による粒子も洗い流されて混入するが、このpHは相対的に上昇していた。
 首都圏での酸性雨の森林生態系への影響が懸念される。