大学等連携事業

早稲田大学オープンカレッジ秋季講座 「日本海学 -文化をつなぐ日本海-」


早稲田大学オープンカレッジ秋期講座(2004年度)
  日本海学推進機構連携講座
 

日時:10/1~12/3
14:40~16:10
(金曜日・10回)

案内パンフ(Pdf_file)

目標

 「さかさ地図」が与えてくれる柔軟な発想を手がかりに、循環・共生・海の視点に立って、北東アジア・環日本海地域から21世紀における人間の営みの方向性を地球規模で総合的に探るためのフレームワークの習得を目指す。

講義概要

日本海学は、日本海および環日本海地域を一つの循環・共生体系としてとらえて、地域からはじまり地球全体におよぶ自然環境と人間とのかかわり、地域間の人間と人間とのかかわりの歴史の中で繰り返されてきた循環・共生システムに学んでいく。そして将来に起こりうる様々な問題を予測し、これに対処する備えを用意することにより、地域全体の危機を回避し、ひいては健全な地域・地球を子孫に引き継いでいくことをめざすものである。

開催日 内容 講師 概要 内容
10月1日 日本海に想う心の風景 木崎さと子 作家
10月8日 朝鮮からみた
日本海域の神話伝承
依田千百子 摂南大学教授
10月15日 古代の出雲について 瀧音能之 駒澤大学教授
島根県古代文化センター
客員研究員
10月22日 環日本海における
毛皮交易の歴史
-クロテンを主として-
大塚和義 国立民族学博物館
教授
 
10月29日 美術にみる
海のイメージ
-環日本海地域
を中心に-
太田昌子 金沢美術工芸大学
教授
 
11月5日 ロシア極東・
中国東北の
近代都市形成
佐藤洋一 早稲田大学芸術学校
客員助教授
 
11月12日 環日本海の交通と、
出雲大社・淳足柵
武田佐知子 大阪外国語大学教授  
11月19日 渤海と古代の日本 酒寄雅志 國學院大學栃木短期大学
教授
早稲田大学講師
11月26日 現代に蘇る翡翠美 野田雄一 ガラス造形作家
(富山ガラス造形研究所
教授)
 
12月3日 日本海と地中海 青柳正規 東京大学教授  

 

※使用テキスト「日本海学の新世紀 第二集 ~還流する文化と美」は本講座のテキストとして、開講時にエクステンションセンター本館2階で販売いたします。
ちなみに、第一集~第四集の各本とも早稲田大学生協ブックセンターおよび全国の有名書店でお買い求めいただけます。
※なお、受講にあたっては、受講料などが必要となります。

詳しくは、
 早稲田大学エクステンションセンター(℡03-3208-2248)
  までお問い合わせください。

 

月日
内容
概要
10月1日
日本海に想う
心の風景
 「日本海をめぐる森が古代から育んできた詩情は、沿岸の民族が共有する神話にある。かつての戦いから生じた様々な悲劇を、人間に普遍な苦悩としてみつめ、地中海その他の海をはさむ諸国の人の暮らしと重ねつつ、"こどもごころ"を顧みて、共生への希望をたしかめたい。そこから生じた創作の例を語り、可能性を共に探る。
10月8日
朝鮮からみた
日本海域の
神話伝承
 考古学・歴史学・人類学などの諸分野において、東アジアという視座から環日本海文化が脚光をあびるようになってからすでに久しい。しかし、神話伝承の分野ではまだまとまった研究成果は上がっていない。本講義では朝鮮半島から日本海を見据え、日本海域に伝わる神話伝承に描かれた人々の交渉や接触について考察する。
10月15日
古代の
出雲について
 環日本海地域にはユニークな地域が多い。その中でも、出雲という地域はひときわ異彩をはなった場所のように思われる。古代史の中で、出雲がもっていると思われる特殊性について、できるだけ多角的にのべてみたい。そして、それらが環日本海の中でどのような役割を果たしているのか、という点についてもふれてみたい。
10月22日
環日本海における
毛皮交易の歴史
-クロテンを主として-
 中国を軸に周辺民族との間で展開された毛皮交易を歴史的にたどることを目的としている。ことに6~10世紀に毛皮生産・交易で発展をみたオホーツク文化の実像を明らかにしながら、環日本海の毛皮交易ネットワークの存在と役割を示したい。
10月29日
美術にみる
海のイメージ
-環日本海地域
を中心に-
 同じ海域を囲みながら日本と半島では、また大陸では、それぞれに異なる海のイメージを育んできた。気候風土、政治経済、歴史、宗教など多様な要因が絡み合って形成された極東の海のイメージを、美術作品を読み解くことを通して考察してみたい。
11月5日
ロシア極東・
中国東北の
近代都市形成
 ロシア極東のウラジオストクと中国のハルビンを取り上げる。とくに19世紀末から20世紀にかけて、国際都市と呼ばれた両都市の形成を、建築物や都市の構築物などから読みとりたい。都市の内部に作り上げた特徴的な場の解読を通じて、環日本海・東北アジア地域の都市の性格について考えたい。
11月12日
環日本海の交通と、
出雲大社・淳足柵
 古代日本海には、数々の大型建物の遺跡が存在する。これらは、環日本海の諸民族の交易のための、ランドマークタワーとして建てられた、世界貿易センターではなかったか。史料から蝦夷や粛慎との交易の方法を抽出する。そこには異民族の祀る神に対して供物を捧げたり、文化人類学で「沈黙貿易」と称される手法が用いられている。こうした交易の場として、出雲大社や、新潟の淳足柵が設けられたのである。
11月19日
渤海と古代の日本
 7世紀末、中国東北地方、北朝鮮、ロシア沿海州に興った渤海と日本の関係は、727年(神亀4)に始まる。以後、渤海から34回、また日本からは13回の外交使節の往来を数えることができ、両国の関係は濃密であった。本講座では、渤海の国家形成はもとより、両国の政治、経済、文化などの関係を多面的に探ることとしたい。
11月26日
現代に蘇る翡翠美
 縄文のシャーマンと深いかかわりのある、ヒスイとほんとうの意味で出合ったのは、1999年にスタートした「世界に通用する新素材開発プロジェクト」からであった。
  古代から日本人は、自然に潜む霊的な力、眼には見えない生命力の働きなどを、日常生活の中に「かたち」として生み出してきている。ガラスを通して探ってみた。
12月3日
日本海と地中海
 シチリアを例にとってその歴史を概観し、地中海域と日本海域の間には共通性よりもむしろ歴史と文化、そして自然条件の違いから生ずる異なる要素が多いことを解説する。その後視点を転ずることにより、無限ともいえる可能性を擁する海を大地が取り囲んでいる巨視的な自然条件は大きな共通点といえることについて論ずる。