大学等連携事業

出前講座2005年度 第3回 「日本海をめぐる自然環境の循環」


氷見高校

<対象>

氷見高校 自然科学コース 2、3年生2クラス

<日時>

7月20日(水)13:00~14:30

<場所>

氷見高校 研修室

<目的>

環日本海地域の自然環境の循環についての理解と関心を深める。

<内容>

1.環日本海地域入門

講師 丹保裕 日本海学推進機構日本海学推進員
*逆さ地図を眺めて
*海でつながる環日本海

2.日本海をめぐる自然環境の循環

講師 小泉 格 北海道大学名誉教授


講演要旨
「日本海学」のフレームワークである過去・現在・未来にわたる環日本海地域の人間と自然のかかわり、地域間の人間と人間のかかわりを、「循環」・「共生」・「日本海」の視点から紹介した。

1.「逆さ地図」の発想

物事を見る立場(視座)が大事
① 五木寛之氏が『戒厳令の夜』を書いた時に考えた、海と陸地を逆にした地図。
② 香月泰男氏(1911-1974)が描いた地図。
③ オーストラリアの逆さ世界地図。

2.「循環」

①めぐりめぐって、また元にかえり、それを繰り返すこと
②血液循環の略  (『広辞苑』岩波書店)
①→自然環境を中心とした循環(マクロコスモス)
・ 海底凸所の斜面で栄養塩類を含んだ中間水や深層水が新たに形成された中間水や深層水に追い出され海面にわき上がり(湧昇流)、潮目となる(魚場)。
・ 河川水や地下水が岩石類を侵食して溶かし込んだミネラルや栄養塩類を河口や沿岸で放出し、汽水性生物を育てる。
・ 冬季にアジア大陸から吹いてくる北西季節風(モンスーン)は雨や雪の他に、大陸から土壌粒子(黄砂)を運んでくるがその中に煤煙や硫酸塩などの汚染物質が含まれている。
・ 対馬暖流は津軽海峡から北西太平洋へ津軽暖流、北海道の西岸を北方流となり宗谷海峡からオホーツク海へ宗谷暖流、中国大陸沿岸をリマン海流となって南下する。
②→私たちの身体の内的循環(ミクロコスモス)。
・血液、消化系、呼吸系、神経器官系の循環
・立ち上がった精神(心)は、先人たちが一生かけて獲得した叡智を学ぶことによって継承し向上させなければ、人として人の世に存在することの意味がない。

3.「共生」とは

異種の生物が行動的・生理的に結びついて1カ所に生活している状態。→共に生きることは生命の本質
・酸素呼吸をして生きる全ての動物は、光合成によって酸素を発生する植物と共に生きている。これが共生の基本である。
・共存は、人間同士の関係を言っており、自分も他人もともども生存することが共存である。共存共栄はともに生存し、ともに繁栄することである。

4.「日本海」の特徴

ベーリング海、オホーツク海、東シナ海、南シナ海などと同じく北西太平洋に位置する縁海。
・縁海は大陸の縁辺にあり、島や半島で大洋と不完全に隔てられている海を言うが、海流や潮の干満は大洋とつながっており、且つ周辺の陸地から流れ込む河川の影響を受けやすいので海と陸をつなぐ位置にある。
・日本海は、大洋と浅い海峡でつながっているために、地中海と同じように閉鎖性海域と呼ばれ、大洋と連動した単一の海洋としての反応が、例えば氷期・間氷期による海水面の高さの変化として、増幅される。

5.「日本海学」の重要性

私たちの身近な場所で起こっている地域的な事象は、すべて地球や宇宙というシステムの変化と密接に結びついている。すなわち、地域(ローカル)=全体(グローバル)であり、全体は部分から構成されているのである。
・think globally, act locally
・香月泰男氏のように、地域にいながらもグローバルなことを実践することは可能。
・精度の高い地域事象のデータベースを積み重ねて、地球規模で理解する姿勢が、重要となってきている。日本海で起きた(過去)?起きている(現在)事象が地球・宇宙と関連していることを検証し、地球・宇宙の普遍的法則性から(未来)を予測することこそグローカロジー(地球地域学)の本質である。

6.環日本海地域・東アジアにおける日本の役割

日本はアジア各国の資源を大量に使い、工場を海外に移転した生産額の6割はアジアで行われており、輸出額の半分はアジア向けである。営業利益額の半分以上をアジアで生み出したおかげで、日本は経済発展をとげて先進国となったことを自覚し感謝するだけなく、利益を還元してアジアの経済が向上し人々の暮らしが楽になるように配慮すべきである。
・自分たちが暮らす地域を主体的に暮らしやすくする住民の自覚と行動が第一であり、科学・芸術・教育・スポーツなどの交流を通じて環日本海地域における相互理解を深め、環境や人権、歴史など人間社会全体を見渡した価値観を重んじることが大事である。