大学等連携事業

2005年度 富山県大学連携協議会公開講座 「日本海・食の恵み」


2005年度 富山県大学連携協議会公開講座
平成17年10月15日
とやま市民交流館
第1回 海と恵み 2限目

講師 富山短期大学
教授 桑守 豊美氏

富山県民の魚の摂取

 日本海には暖流と寒流が流れており、富山湾には暖流が流れ込んでいる。富山湾を縦に切ってみると、上側は暖流の水で、下側は日本海固有水である。いちばん深い所は1200mで、3000mの立山の山頂から約4500m一気に落ち込んでいるという点が非常に珍しく、さらに湾で囲まれているため、魚の種類が多く、しかもおいしいということである。
 平成12年度に富山湾で取れた魚の漁獲量を見ると、あじがいちばん多く、ほかにはそうだがつお類やいわし、するめいか、かます類、ふくらぎ、ほたるいかなどが取れている。また平成16年度家計調査を見ると、富山市は消費支出が全国1位、食費だけでは5位ということだが、エンゲル係数は23.4で全国平均より低い状態であった。また、生鮮魚介類は全国で4位、鮮魚だけでは5位、貝類だけでは5位、塩干魚介類で6位、練製品は11位、他の魚介加工品は1位と報告されている。また、16年度1年間に富山市で食べられた魚介類を多い順に並べると、ぶりが1位、いかが2位、あじが3位、まぐろが4位、以下、さけ、えび、さばとなっている。
 次に、富山と全国の食品群の摂取量の推移を見てみよう。米の消費量は昭和37年から平成12年までの間に、富山でも全国でも大きく減ってしまつた。また、野菜は横ばい状態だが、富山は全国よりも摂取量が多い。また、50~60代の人は非常に多く魚を食べているが、成長期の人は少なくもっと魚を食べてほしいと思う。

油の摂取と健康

 また、日本人は実に油脂をたくさん食べるようになった。油脂が細かく消化された状態を脂肪酸と言うが、そのうちステアリン酸は分子が一直線になっている。また、オリーブ油はオレイン酸(n-9系)が多いがオレイン酸は一部だけが二重結合しておりちょっと曲がっている。紅花油のリノール酸(n-6系)には二重結合が2か所あり、鎖がさらに曲がっているし、肉の脂などのアラキドン酸(n-6系)はさらに曲がり、えごまのα-リノレン酸、魚油のエイコペンタエン酸(IPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)(n-3系)はさらに大きく曲がっている。この構造の差が、吸収されたあとの体内での働きの差となっている。動物の体内では、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸各々の代謝経路が異なっており、別のラインに移ることができない。近年、油料理や肉を食べることが多く、n-6系の脂肪酸摂取量が多く、これが動脈硬化、がん、アレルギーが増えている原因だといわれている。すなわち、n-6系は炎症反応や血液凝固作用が強いが、n-3系は弱いということが明らかにされている。
 食品中の脂肪酸含有量を見ると、サンフラワー油、大豆油、ごまや牛肉にはn-6系が多い。鶏肉の皮、豚の脂も同様である。一方、魚にはいい脂肪酸であるn-3系が多い。いわし、にしん、さばなどの表面が青い魚を食べると体にいいのはこのためである。健康のためには油料理や肉の脂の摂取を減らすことが必要である。
 n-6系多価不飽和脂肪酸とn-3系多価不飽和脂肪酸の比は、富山県全体で3という数値が出ている。しかし、成長期は1~2歳が3.6なのに、年代が進むに従ってだんだん増えて高校生あたりでいちばん高くなり、健康上問題になる5.5になっている。しかし、日本全体の4という数値から比べると、富山県の3は非常に理想的な数値と言える。しかし、病気との関係を見ると、がんで亡くなる人は全国平均より富山県が多く、高血圧はほぼ同じ、糖尿病は富山県が多くなっており、n-3系脂肪酸の摂取が多いことが、病気の発症を少なくしていると現状では言えないが、アレルギーや動脈硬化を予防するためには、これを2までもっていくことが必要である。

食事のバランス

 日本人が油脂をたくさん食べるようになったことで、動脈硬化、がん、アレルギーが多くなり、老化現象も促進している。私は栄養士だが、栄養士法が平成12年に改正になり、本当に国民の健康度をアップできる栄養士を養成しようという方向に動いている。(私どもの富山短期大学では栄養士を養成しているが、2年間では足りないということで、平成17年4月から80人定員の中の15人に4年間勉強してもらう専攻科を設置している。)また、平成15年には栄養改善法が健康増進法に変更され、平成17年6月には食育基本法が成立した。国でも、「健康日本21」という第3次国民健康づくり運動が平成12年から始められている。ところが、5年が過ぎた今、食事の面は悪くなる一方である。これらを受け、平成17年の6月に厚生労働省と農林水産省が共同して「食事バランスガイド」の発表がなされた。これによれば食事の中で多く摂取してほしいのは穀類、次いで野菜類、その次に肉や魚、卵、大豆であり、牛乳・乳製品、果物も摂取するよう図で示された。皿数で言うと、主食は1日に5~7杯、酢の物、サラダ、煮しめなどの野菜料理を5~6皿、主菜はたんぱく源が入っているハンバーグやエビフライに添え野菜がついているようなものを3~5皿、そのほか、牛乳や果物ということになる。実はこれは私が個人的に提唱していたものとほぼ同じである。
 個々人がエネルギーをどれくらい食べればよいかを決める際は、各年代の男女別基礎代謝量(24時間何もしないでいるときに使うエネルギー)に活動レベルの係数を掛けて算出する。活動レベルは三区分に分けられており、活動の低い人は1.5、中間の人は1.75、高い人は2を掛ける。活動レベルⅢの人は、強い運動を1時間、中強度の運動(長時間可能な運動、労働など)を3時間、ゆっくりした歩行や家事などを3~4時間して、座っている時間が10時間、寝ている時間が7時間位という人だ。これは、本当はこのレベルまで体を動かすと健康が保持できるというラインである。しかし実際は、これ以下の活動ⅠおよびⅡレベルの人が85%である。また、男子と女子でエネルギーの必要量が異なる理由は、体が小さいということもあるが、男子のほうがエネルギーを使う筋肉が多く、女子は脂肪が多いことからきている。
 また、朝は体を動かすための主食のほかに、たんぱく質や脂肪も食べていただきたい。朝食が和食のかたはみそ汁、納豆だけでは不足している。夕食には筋肉の材料であるたんぱく質と赤血球の材料である鉄を多めに取っていただきたい。カルシウムも取っていただきたいが、夕食に鉄とカルシウムが一緒に入ると両方とも吸収が悪くなるので、夕食では鉄だけにして、寝る前にカルシウムを取っていただきたい。

生活習慣病の予防

 最後に、私が考える生活習慣病を予防していただきたくポイントをお話しよう。①食品のバランスを考える。言い換えると前に示した弁当箱に主食が半分というような食品バランスで食べることを習慣化する。②油を減らす。特に成長期の子どもさんは油が多すぎる。③食塩を減らす。現在は12gくらいが平均だが、もう3分の1減らして7gにすれば血圧が確実に減少する。④規則正しく食べる。その前提として、規則正しい生活をする。⑤夕食は8時までに食べる。10時以降に食べると肥満はもとより、熟睡できないという調査結果もある。
 しかし、現在の社会構造の中でなかなか実施が難しいけれどもどうか自分の健康のために自分に合った生活、食事摂取サイクルを考え適正な食事を摂取していただきたい。富山県は恵まれた環境にあり、海の幸である魚を食生活の中に取り入れていただくことも健康を守ることにつながる。健康的な食習慣を身につけて健康になっていただきたい。