大学等連携事業

2005年度 富山県大学連携協議会公開講座 「深層水利用の可能性」


2005年度 富山県大学連携協議会公開講座
平成17年11月5日
とやま市民交流館
第3回 海の力 1限目

講師 富山県立大学
教授 葭田 隆治氏

富山湾深層水

 海の深さが200mを超えると、プランクトンや海藻などの光合成生物はいなくなる。私どもは300m以深の深層から取り出してくる海水を日本海固有水と規定しているが、現在、富山県でそれを取水しているのは滑川市と入善町で、ここから取ったものを富山湾深層水、あるいは海洋深層水と呼んでいる。 富山湾深層水の特徴は、夏場でも2℃と非常に水温が低いこと、水圧がかかる関係で栄養塩が豊富なことで、さらに病原菌やPCB、ダイオキシンなどの環境ホルモンが検出されないという特徴もある。深層水が冷たいのは、宗谷海峡や間宮海峡の辺りで冬の間海面が季節風で冷やされることと、流氷の大多数が真水となって海水から抜けることで海水の塩濃度が高くなり、対馬暖流の下に潜り込んでくるからだ。さらに、日本海には日本海溝があるので、北の間宮海峡のほうから流れてくる水がそこにたまってしまい、表層水と混ざらない。対馬暖流は10~100mの厚さしかなく、海水は温度差が生じると簡単に混ざらないし、鉛直混合といって縦に混ざることはない。つまり、300m以深の深層水は、対馬暖流には全く影響されないということだ。 ただし、水産試験場で硝酸体窒素のモニタリングを実施したところ、出し平ダムの排砂によりその含量が非常に高くなるときがあることが分かった。私たちが野菜を食べると、そこに含まれる硝酸が胃の中に入って亜硝酸(NO2)になり、魚の焦げた部分にできる二級アミンという物質と胃袋の中で結びつくとニトロソアミンという強力な胃ガンの変異原生物質になる。硝酸体窒素は農業上は極めて重要な窒素源であるが、健康面からは必ずしもそうとはいえないものなのである。

深層水を使った商品開発

 大学の法人化以来、私どもの研究室にも多くの商品開発依頼が来るようになった。私どもでは、深層水のよい部分に着目し、1社1品目に限定して、深層水や深層水からできた塩を直接使った商品の開発と、深層水を電気分解して作った機能水を使った商品開発を考えることにした。

次亜水生成機

 水を電気分解すると、酸性水とアルカリ水ができる。酸性水に含まれる次亜塩素酸という物質は、水道水に入っている次亜塩素酸ナトリウムより殺菌力が10~20倍ぐらい強い。現在、病院等で多用されているバンコマイシンという抗生物質は、土壌から取り出した放線菌から作られたもので、生物由来であることから、すぐ耐性菌ができ、院内感染が起こる危険がある。ところが、次亜塩素酸を含む酸性水で消毒すると、微生物の遺伝子機能を破壊してしまうので耐性菌はできない。この特長を生かして、紫外線消毒ができない胃カメラの管の中の殺菌などに使える可能性がある。また、口腔外科(歯医者)でも、今まで殺菌に使っていた水銀の代わりに、酸性水を使う動きがある。 私どもの特許製品である次亜水生成機は、水を微酸性にし、塩素濃度を20ppmにするもので、大腸菌O157やサルモネラ菌などは、この次亜水で1分間処理するだけでゼロになってしまう。これは食品工場の衛生管理、手指の消毒、種子の消毒、農業方面、食品、医療の方面に利用できる。


 

アルカリ水生成機

 一方のアルカリ水は、還元力がある水で、健康によいといわれている。アルカリ水を飲むと、活性酸素消去能が強くなる。活性酸素というのは、空気中に含まれる酸素のうち2~3%を占めるもので、体内の免疫に関与して強い殺菌効果を持っているものだが、過剰になると染色体を傷つけてしまい、それが原因で成人病やガンになったりする。また、年を取るに従い分解されにくくなって、体内に蓄積してくる。今、話題のポリフェノールは、過剰になった活性酸素を消去する補助剤である。 私どもが開発した家庭用の「アクアライザー」というアルカリ水生成機から出てくる水は、酸化還元電位が-147mvという完全な還元水である。また、富山化学工業と作った「深海遊夢」というアルカリ水をお茶やコーヒー、ウイスキー、焼酎などの水割りなどに使うと、なぜか分からないが、悪い焼酎やウイスキーが上等なものに早変わりする。


 

ゲンゲのコラーゲン利用したサプリメント

 ほかにも、現在すでに43品目が商品化されているので、そのうちの幾つかをご紹介しよう。まずは、ゲンゲのコラーゲンを利用したサプリメントである。これには深層水は使われていないが、富山漁業協同組合と共同開発したもので、コラーゲンという名前がつく商品は多いが、実はコラーゲンはタンパクなので大分子量を持っており、皮膚からは入らない。コラーゲンは、ウシ型、ヒト型、サケ型の三つに分かれるが、ゲンゲは魚でありながらヒト型のコラーゲンに組成がよく似ているので、ゲンゲを食べると体内でヒトの組成に似たアミノ酸に分解し、人間の皮膚の再合成にすぐ利用できるのだ。


 

味噌

 また、玄米で麹を作った味噌も作ってみた。使っている大豆は無農薬栽培である。玄米とアルカリ水を使っているところがミソで、活性酸素消去能が市販3社の味噌では約50%程度なのに対し、私どもの味噌は88.5%である。


 

漬物

 では、アルカリ水で漬物を漬けるとどうなるか。普通、大根や白菜の漬物は、二晩漬けるとほとんど色があせるが、塩を加えたアルカリ水で漬けると非常に色が鮮やかになる。


 

白エビ

 また、白エビは富山湾独特のもので、海の真珠といわれるほど高価な食べ物であるが、これが重要なのは白エビの活性酸素に対する抗酸化活性が甘エビに比べて4.6倍高いからだ。ちなみに、地球上のエビの中でいちばん活性酸素消去能が高いのはオキアミである。今、アミはつくだ煮で売られているが、それと合わせてぜひ白エビを食べていただきたい。白エビの粉末を2%練り込んだ魚肉ソーセージは、金沢始発のJRにのみ乗せているが、非常に売れている。また、白エビを焼いて乾燥させ味付けをしたものを1合の銚子の中に3本ほど入れるとエビ酒ができる。農林水産省主催のアグリフェアで東京の皆さんにふるまったところ非常に好評だったことに気をよくして、今、これと富山の「天高く」というお米、「深海遊夢」を三点セットにして売り出している。これも富山県立大学との共同開発商品である。


 

化粧品

 次は、石英斑岩を超微粉にして深層水と混合した石けん、クリーム、ローション、ジェルなどの化粧品である。石英斑岩は石なので、水と混ぜ合わせても比重の違いから必ず2層に分かれてしまうのだが、水の代わりに深層水を使うとゲル化して分離しないのだ。アトピーでかゆくなるのは、紫外線に当たると一気にO2-やOHラジカルなどの活性酸素ができるからだが、この石けんとクリームを組み合わせると症状が非常に和らぐ。また、カカトの角質化も、シート型含水ゲル貼付剤とクリームを使うと、保湿力が回復して3日ですべすべになる。


 

ビール

 それから、私の大好きなビールである。海洋深層水を使った「めざめる」というビールを、高岡の「いきいき地ビール」と共同開発した。海洋深層水を0.8~1%ビールの醸造水に加えたことにより、ビール酵母の立ち上がりが約10倍早くなった。なぜかは今のところ分からないのだが、大阪の地ビールコンテストで銅メダル、ドイツの地ビールコンテストで銀メダルをもらっている。また、「波奏(わかな)」というアルコール度8%のフルーティーなビールは、女性をターゲットにしたものである。


 

農業への利用

 農業への利用としては、ブドウやリンゴに深層水をかけ、カルシウム・マグネシウムを加えると、色づきがよくなり、糖度も上がってくる。これは塩ストレスといって、植物が活性酸素を作って寿命を短くしようとするからだ。小松菜も深層水をかけることで増収につながる。また、濃縮水は除草剤にも使える。大豆畑は収穫期になると農薬を使えないため、雑草を手で刈らなくてはいけないのだが、深層水の濃縮水をかけて草を枯らしてしまうのだ。

 ほかにも、試験段階のものとしては、二条大麦でなく、富山県で栽培している六条大麦を使ったビールづくりがある。また、農業試験場では、海洋深層水を使った種もみの消毒をしている。さらに、畜産試験場では受精卵に海洋深層水を加えると非常に成長が早くなるという研究をしている。

 イスラエルのワイズマン科学研究所では、すでに15年前には35%の食塩濃度をもつ死海の水を資源として使っていた。これからは富山でも海洋深層水を資源として位置づけ、使っていくことを考えていかなければいけない。