大学等連携事業

2005年度 富山大学 「日本海学」


 

担当教員
(コーディネーター)
森岡 裕
松井 隆幸
授業概要
(目的・ねらい)
 富山県は、県の主要施策の1つとして日本海学の普及・推進を図っています。これは環日本海地域を共生の場ととらえ、日本海をとりまく地域・人々の交流、文化、自然環境等を中心に日本海周辺の諸問題を総合的に研究するものです。そこで今回、総合科目特殊講義として日本海学を開講し、本学が立地する日本海周辺地域の諸問題を考える機会を提供するとともに、地域とのつながりを再考する契機を与えることを目的としています。

 

  月日 スピーカー 演題  
1. 10月11日 松井、森岡 イントロダクション  
2. 10月18日 李 瑞雪 現代中国の
流通システムと
物流産業
→ 概要
3. 10月25日
4. 11月1日 川田 邦夫 循環する水と
環日本海の雪氷
→ 概要
5. 11月8日
6. 11月15日 今村 弘子 中国と北東アジア → 概要
7. 11月22日 松井 隆幸 経済からみた
「日本海側」地域
→ 概要
8. 11月29日 柳井 雅也(東北学院大学) 富山県企業による
北東アジアへの進出と
その未来
→ 概要
9. 12月6日 小島 覚(元東京女子大学) 環日本海地域の
自然環境とその変遷
→ 概要
講義詳細
10. 12月13日 鶫 謙一(ウエールズ大学) ごみが結ぶ
環日本海の国と市民
→ 概要
11. 12月20日 奥田 一宏(富山テレビ) 報道の中の
日本海・環日本海地域 
その価値と将来
→ 概要
講義詳細
12. 1月10日 林 夏生 日本海地域における
国際文化交流の
現状と課題
→ 概要
13. 1月17日
14. 1月24日 森岡 裕 環日本海地域の
エネルギー問題
→ 概要
15. 1月31日 期末テスト    

 

 

講義概要
 
李 瑞雪  「現代中国の流通システムと物流産業」

  この授業は、現代中国の流通システムと物流産業に関する概論的講義である。現代中国の流通システムと物流産業の構造的な特徴を紹介することを主たる目的とする。
  第一回目では近代的な小売組織と伝統的な「集市」が共存競演する中国流通システムの概況を説明しながら、その形成要因を分析してみる。第二回目では中国物流産業の生成・発展の過程と、民間物流企業の技術学習メカニズムを検討する。また、日中間の国際物流の発展状況と今後の展望についても言及する。

 
川田 邦夫  「循環する水と環日本海の雪氷」

  1万年以上前には日本の高山地帯にも氷河があって、氷河地形を残している。海面から蒸発した水蒸気は上空で雪となり、地球の寒冷期には降雪の蓄積が氷河を形成した。氷河はやがて融けて海水に戻る。地球の気候に左右される水循環が海水面を上下させ、日本海の海流を変え、環日本海域の雪氷を支配する。日本の降雪機構と特徴、水資源として貴重な山岳地の積雪と温暖化による動向、立山の積雪から見える環境問題等についても探る。

 
今村 弘子  「中国と北東アジア」

  「世界の工場」「世界の市場」といわれている中国は今後どのような発展を遂げようとしているのであろうか。さらに中国の発展は日本をはじめとする北東アジア地域にどのような影響を与えるのであろうか。中国の経済発展の歪とともに今後の動向を考える。

 
松井 隆幸  「経済からみた「日本海側」地域」

  日本の中の日本海側地域が、経済学の観点から見てどのような意味を持つのかがテーマです。日本海側地域は、経済的諸指標で見てどの程度の比重を持つのか、相互の地域連関はどうなっているのか、対岸地域との経済的関係はどうなのか、等を分析していきます。その中での「北陸地域」あるいは「富山県」の位置づけも分析対象にします。

 
柳井 雅也  「富山県企業による北東アジアへの進出とその未来」

  主に富山県で事業活動を行い、なおかつ北東アジア(ここでは主に中国)に進出している企業を対象に、その実態と課題を探っていくことを目的とする。特に、富山県企業にとって関わりの深い上海、東北地域を対比的に取り上げながら検討を行っていく。ここで得られた知見を踏まえながら、今後の北東アジアにおける経済交流の発展について、韓国、ロシアも含めてどのように国際連携を進めていけばいいかについて考えていきたい。

 
小島 覚  「環日本海地域の自然環境とその変遷」  → 講義詳細

  環日本海地域は、北半球の中緯度地方にあり、基本的には温帯性気候のもとにある。
だが歴史的・地理的条件は複雑で、それを反映して生物多様性は高い。本講義では、環日本海地域の自然環境を気候的特性および生態系的特性から論考するとともに、特に北陸地方に焦点を当て、新生代第四紀における氷期から後氷期にかけての自然環境の変遷を植生の点から考察するとともに、人間活動に伴う温室効果ガスの増加による将来の気候温暖化のもとで、北陸地方の自然はどう変化するか予測する。

 
鶫 謙一  「ごみが結ぶ環日本海の国と市民」

  キーコンセプト:「ごみは厄介ものか、縁結びか」
  日本海沿岸に漂着するごみからその社会学的、生態学的アプローチを展開します。ごみとは何か、その起源による区分、沿岸地域及び海流への影響、そして現在までの対策と今後求められる対策を考えます。政府は2001年ごみ減量化を目指し、基本法と個別リサイクル法を立法しました。しかし、国境をまたぐ海洋ごみについては国、自治体、市民そして国連機関が解決のためのラウンドテーブルにつく必要があります。

 
奥田 一宏  「報道の中の日本海・環日本海地域 その価値と将来」  → 講義詳細
     
  報道において日本海に関する関心が高まってきている。
私が所属する富山テレビの35年間の歴史の中で、「日本海」を取り上げたものは1195件、その半数以上がこの10年間に取材したものである。全国紙でも同様な傾向が見られ、「太平洋」との比較でも「日本海」のシェアが大きくなって来ている。こうした新聞記事や放送の増加は何を意味しているかについて考える。
 
林 夏生  「日本海地域における国際文化交流の現状と課題」

  日本と近隣諸国は、ヒト・モノ・カネ・情報の国際交流によって緊密に結びついており、特に近年では映画やアニメ番組などの大衆文化を介した交流が活況を呈している。だが一方で、歴史認識問題や領土問題を理由に交流事業が中止される例も見受けられつつある。そこでこの授業では、「韓流」ブームや日本大衆文化開放と竹島問題・靖国問題で激しく揺れる日韓間の交流の現実を例に、日本海地域における国際文化交 流の現状と課題を考えることとする。

 
森岡 裕  「環日本海地域のエネルギー問題」

  環日本海地域は経済発展を続ける中国を中心に、エネルギー需要が急増している地域である。他方潜在的に大きな供給力を有する地域としてロシア極東が存在し、北東アジア地域へのエネルギー輸出を当該地域発展の鍵としてとらえている。そこで今回の講義では、環日本海地域でのエネルギー協力の可能性と必要性について考える。